見出し画像

無料で見られる!? パブリックアート散策のススメ【神戸編】

今年7月、5つ目となる「BE KOBE」のモニュメントがアジュール舞子に設置されました。明石海峡大橋をバックにした写真が撮れるので、いつも賑わっています。

アジュール舞子のBE KOBEモニュメント

BE KOBEモニュメントのように、美術館やギャラリーではなく、誰もが立ち入れる公共空間に置かれた美術作品のことを「パブリックアート」といいます。今回は、神戸の街でのパブリックアートの楽しみ方をご紹介します!

そもそもパブリックアートって何?

直訳すると ”公共の芸術” です。

いきなり街中に現れる「裸のブロンズ像」「よくわからない無機質な立体」…などなど、アート作品を目にしたことがあるかと思います。普段は景色に溶け込んでおり、あえて意識して見る機会も少ないかと思いますが、もちろんこれらもパブリックアートです。公園や広場などに設置されているケースが多く、大半は無料で鑑賞できます。

少しカタい話になりますが、これらのパブリックアートは、その地域のシンボルになって、地域の交流や経済を活性化させる役割も持っています。

そしてその歴史は意外と古く、20世紀半ばくらいから、アメリカやフランスなどで行政主導での設置が本格化し、その後、国内でも多くの自治体が取り入れてきました。

神戸市も、戦災からの復興していく街づくりを進めるなかで、パブリックアートを積極的にまちづくりの一部に導入してきました。

三宮にあるフラワーロードは「花と彫刻の道」ですし、湊川神社西側には「みどりと彫刻のみち」があります。そして、置かれている彫刻は、神戸須磨離宮公園現代彫刻展の受賞作品が核となっています。

神戸の街中にアート作品が多いのは、こういう理由がありました!

灘区・ミュージアムロードを歩こう

また、新旧多くのパブリックアートを見られるのが、灘区の「ミュージアムロード」です。

もともと、摩耶山からHAT神戸にかけてのエリアには、芸術・文化・スポーツ施設がたくさんあったので、「灘文化軸」と呼ばれるように、その特色を活かした街づくりが進められてきました。

兵庫県立美術館から王子動物園までの南北1.2kmほどの道は、「ミュージアムロード」と呼ばれ、地域の人たちに親しまれています。

私も歩いてみましたが、次はいったいどんな作品が現れるんだろう?とワクワクしながら散策しました。メインストリートを歩くだけで、さながら美術館の常設展示を鑑賞している気分になれます。

「PEASE CRACKER」(椿昇・2014)

この近くでは、​​​​​JR灘駅の南北にある駅前広場のリニューアル工事が進んでいます。ここに新たなパブリックアートも設置される予定です。どう駅前が彩られるのか楽しみですね!

パブリックにアートはある!

新たに作品を設置するだけが、パブリックアートではありません。アートを通じて街に潜む新しい魅力を再発見しようという「KOBE Re: Public ART PROJECT」(KORPA)が、今年3月まで行われていました。

このイベントでは、「アーティスト・イン・レジデンス」をいう考えをもとにしています。アーティスト・イン・レジデンスというのは、美術や演劇などの分野の芸術家が、日常の空間から離れた場所に一定期間滞在し、新たな環境で創作活動を行うものです。

神戸の各地に総勢23組のアーティストが滞在し、自由にリサーチ活動を行って発見した神戸の魅力を発信しました。

神戸からインスピレーションを受けた作品の展示、再発見した場所でのパフォーマンス公演、令和版「新・神戸百景」の策定……。その発信方法は多岐に渡ります。

新たに作品を設置せずとも、昔から神戸にあった全ての「モノ・コト・バショ」が、それ自体がアートになる可能性を秘めています。

「パブリック」に「アート」はすでにある

というキャッチコピーが、ずばりこのイベントをあらわしています。私も会期中に各会場を歩き周りましたが、「え、神戸にこんなすてきな場所があったの?!」と、まさに「Re:」パブリックな体験の連続でした。

とくに気に入ったのは、特設会場として使用された「旧・住友倉庫」です。長年スパイスなどの貨物倉庫として使用されたので、その独特の匂い、さらに建物の構造が圧巻で、まさに何も装飾せずとも「アート」な建築物でした。老朽化で取り壊されてしまうのが惜しいです!

KORPA特設会場(旧・住友倉庫)

神戸の街で新しい感覚で散策を!

今回のパブリックアートの記事を書くための勉強に使った『パブリックアート入門〜タダで観られるけど、タダならぬアートの世界〜』(浦島茂世・2023・イースト新書Q)では、パブリックアートは空間の価値を高める狙いがある一方で、情報過多の現代では日常風景の一部になってしまっていることも多いと書かれていました。

まさにその通りで、例えば冒頭に書いた「BE KOBE」は、とても分かりやすいパブリックアートです。

ところが改めて考えてみると、通勤に使っている道にポツンと作品が置かれているのに気づいたりもします。せっかくのパブリックアートを、いつもの風景としてチラ見するだけではもったいないと思いました!

普段歩いている街中にどんな作品があるか、意識して散策してみてはいかがでしょうか?

そんなふうにしていると、なんてことない普通の建物ですら、「ここって、別に何かの作品では無いけど、改めて見るとアートでは?」と、自分だけの神戸の魅力を再発見できるかもしれません。

<この記事を書いた人>
たわー/人事委員会事務局任用課
普段は神戸市職員の採用試験を担当しており、今回は庁内副業制度を活用して記事を執筆。東京に行くたびに、隙を見て立川・六本木・丸の内などパブリックアートの名所を歩き回っている。お気に入りの作品は、横浜ビジネスパーク内に設置されている「犬も歩けば…」(薮内佐斗司/1990)。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!