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高校生との対話で、神戸市長がショックを隠せなかった理由は?

御影公会堂にやってきました。

久しぶりだなぁ、何年ぶりだろう。六甲の山並みが石屋川とともになだらかに降りてきて、ちょうど「ここから地面が平らになりますよ」という地点に建つ公会堂は、まさに地域の代名詞。

この建物ができたのは1933(昭和8)年。神戸市と合併する前の旧御影町の公会堂として建てられました。

1945年の神戸大空襲で被害を受けましたが復旧工事をし、阪神・淡路大震災ではほとんど被害がなく、避難所としても使われます。2018年には国の登録有形文化財に指定されました。

そんな御影公会堂で何があったかというと……

御影高校1年生への、久元喜造市長の訪問授業です!

えっ。普通それ、御影高校でやるんちゃうの(だって“訪問”授業なんでしょ)?

おそらく誰もが抱くそんな疑問の答えとともに、きょう12月13日におこなわれた訪問授業のレポートを、広報戦略部ライターのゴウがお届けします。


地域に飛び出す御影高校

過去の記事でもお伝えしましたが、久元市長は若い人と話すことを大事にしているので、年に何度か市内の高校への訪問授業をしています。

どの高校に行くのかは、神戸市サイドから声をかけるのではなく、3月にあった高校生と市長の対話フォーラムに参加した高校のうち、リクエストをくれた高校の中から決めます。

今年度は4校の訪問を予定していて、御影高校は2校目です。

実は御影高校、かなり“熱い”高校なんです。2022年度から学習指導要領が改定されて普通科を含め全生徒を対象に探究型の授業が組み込まれましたが、御影高校はその前の2019年から積極的に探究授業に取り組んでいます。

だから教室を飛び出して、地域のいろんな人たちと関わる機会の多い生徒たち。

学習の一環として、北区淡河町のバンブープロジェクト(放置竹林の対策)に関わったり、通学定期券無料の広報モデルになってくれたりと、これまで何かと市政に参加してくれていました。

そんな御影高校ですから、市長の訪問授業をリクエスト。もうノリノリで、御影公会堂のホールなんて取ってくれちゃいました。

先生に聞いてみたところ、御影高校は公会堂のすぐ裏にあって学校の体育館よりも広いので、ゲストを迎えた講演では公会堂を使うことが多いのだそうです。重要文化財をふだん使いできるなんて、贅沢ですね~。

私は今回初めて知ったんですが、御影高校の文理探究科でnoteやってるんですね! なかには「スキ」が50以上の記事もあり、一高校としてはすごくないですか?

斬新なパネルディスカッション

前半は30分ほど、市長が御影を含めた東灘の歴史や神戸市の取り組みについてサクッと授業。

そしてお楽しみは、後半のパネルディスカッションです。

壇上には、代表として4人の生徒(男子1、女子3)が上がってくれました。パネルディスカッションって一般的に、観客席にいる人は登壇者の話を「聞くだけ」のケースがほとんどですよね。

それが、今回は全員参加型だったんです!私は初めて見るパターンでした。

1.初めに、あらかじめ決めたテーマについて壇上の4人が意見を述べます。

2.それを聞いたうえで、客席の生徒も自分の意見をフリップ代わりの白い紙に書いて掲げます。

3.2階まで生徒が埋まっていた客席には、レポーター役として1階・2階に1人ずつ配置された先生が、掲げられたフリップを見回して、おもしろそうな意見を書いた生徒を当てます。

レポーターとして会場を動き回る先生

壇上に上がった4人はともかく、いきなり当てられた子がしっかり発表していたことに感心しました!

4.こうして7~8人の意見を聞いたうえで、市長がそれについて回答します。

先生たちのファシリテーションがすばらしく、本当に感激しました。(学校以外も含めて)これまでに見たパネルディスカッションの中で、一番「みんなが参加している」感を味わったかもしれません。

「街灯増やしたのに…」市長の嘆き

そんなパネルディスカッションで、どんな意見が出たのか。1つ目のテーマは「自分の街の好きなところ・これから改善していくべきところ」です。

壇上の生徒のうち1人目から出た言葉が「街灯が少なくて夜道が暗い」でした。とくに、灘区の鶴甲(六甲ケーブルの近く)に住む生徒だったので「この間、大きなイノシシと遭遇して死ぬかと思って怖かった」とのこと。

その後、もう一人からも同様の意見があり「家の近くで変な人を見たことが何度かあるのでビクビクしながら帰っている」と。

わずか7~8人の意見を聞いただけで、未来ある若者が2人も自宅近くの夜道で怖い思いをしているなんて、由々しきこと……!

これを聞いた久元市長は「だいぶ増やしたんですけどね…」と、けっこう落ち込んでいました。

神戸市は2019年度から約2年かけて街灯の数を従来の1.5倍に増やし、すべてLED化しています。

増やしたことは事実ですし、実際に「明るくなった」との声も聞かれますが、市全域の住宅街にまですべて行き渡ったかというと……そうでない地域があることを、目の当たりにした市長です。

「役所の中から『増やしました!』と聞くのと、みなさんの生の声を聞くのとでは違うということですね。これは必ず予算をつけます」

おおっ!会場からは拍手が沸き上がりました。

理想と現実の折り合いも

2つ目のテーマ「若者がより住みやすい街にするために」では、

  • 自然が豊かな西区や北区の利便性を上げること

  • atoaができたウォーターフロントエリアのアクセスが悪くて行きにくい

  • 神戸に限ったことではないが、リモートワークがもっと進んだり、子連れで出勤できるようになったりするといい

などの意見が出ました。これについて久元市長は

  • 人口減少の時代に、公共交通の路線を新たに作るのは難しいこと

  • 現状の交通でも運転士など人手が足りない。リモートワークが進めば電車やバスに乗らない人がもっと増える(売り上げが確保しづらい)

  • ウォーターフロントエリアへは、「歩いて楽しいまち」をコンセプトに三宮再整備を進めているので、できれば歩いて行ってほしい。交通機関としては連節バス「ポートループ」がある

と理解を求めました。

こうした対話で「〇〇をもっと充実させてほしい」という希望は多く、とても大切な意見なのですが、現実的な状況から不可能なこともあります。

そうした折り合いのつけ方を高校生のみなさんに学んでもらえると嬉しいですし、説明を続けることが市としての責任ですよね。

広報としては、ポートループのPRももっと頑張らねば……!

訪問授業を終えて何人かの生徒に感想を聞いてみると、「自分たちの意見を市長に直接届けられて嬉しかった」「同級生が住んでいる色んな地域の話を聞けておもしろかった」との声がありました。

朝イチの訪問授業でしたが、眠たそうにしている生徒はおらず、みんな真剣に主体的に参加してくれていました。

今日の授業をきっかけに、市役所や市長の仕事をもっと身近に感じてくれるとうれしいです。みんな、いい冬休みを迎えてね!

〈おまけ・御影公会堂探訪〉
言うまでもありませんが、取材後のランチは地下の食堂でオムライスでした(当然ですよね)。

食堂の向かいには、御影の歴史と嘉納治五郎のコーナーがあるんですよ(公会堂ができたのは、白鶴酒造・嘉納家による寄付)。

重厚感あるレトロ建築の公会堂ですが、最上階の天井がガラス張りになって明るい光が差し込んでいるのがお気に入りポイントでした。

お近くの方は、お散歩がてら立ち寄ってみてくださいね!

<この記事を書いた人>
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。
旅とバーとパンダが好き。

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