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アフリカの成長パワーは日本に利益をもたらすのか?現地事情通が白熱討論

いまから8年前のこと。アフリカにある「ルワンダ共和国」という国をはじめて訪問しました。

アフリカ大陸の中でも、ルワンダがあるサハラ砂漠の南側は「サブサハラ」と呼ばれ、今でも深刻な貧困のなかにあります。日本の商社やメーカーの社員は赴任や出張せよと指示があっても尻込みをしがちです。

広報戦略部の多名部です。じつは私もそんなふうに感じていました。

ルワンダへ行く直前は、空港で飛行機を降りると滑走路の横をゾウとかキリンが歩いているんじゃないか、マラリアや黄熱病とかは大丈夫なのか、と不安がいっぱいでした。マラリアとかは蚊に刺されなければいいので、蚊取り線香を一缶丸ごとスーツケースに入れていったほどです。

ところが行ってみると、衝撃でした!!

首都キガリでは、美しい街並みとごみ一つ落ちていない歩道が目に飛び込み、夜10時過ぎでも女性一人でスマホをいじりながら歩いています。ハンバーガーやピザから中華や日本料理まで、スタバはないですが同じようなコーヒーショップがありました。蚊取り線香は一度も使うことがなかったです。

はっきり言って、東南アジアの大都市と一緒です!

でも、車で30分ほど都市部から離れると別世界が広がります。電気や水道も通っていない村。赤茶けた土で覆われたでこぼこの道路に、はだしの子どもたちが走っています。

が、一番驚いたのは、そんな村でインターネットが使えることです。スマホをさわっている人もいました。というのは、国中に光ファイバー網が幹線道路に沿って張り巡らされているからです。

そして、これが光ファイバー…..
日本ではありえない「雑な」やり方に、日本では失われた「勢い」のようなものを感じました。

ルワンダは「ICT立国」を旗印に、IT・デジタル産業に力を入れ、アフリカの奇跡の国として世界の注目を集めています。

2016年にルワンダとの交流を開始

それに目をつけた神戸市は、この国との交流をはじめました。2016年に現地を訪れた久元喜造市長がキガリ市と連携に合意。

それを皮切りに、神戸の企業をルワンダに案内したり、ルワンダのIT企業を神戸に迎えたりしました。大学生や高校生がルワンダに行って起業を体験するツアーもやりました。

起業体験ツアーでは中学校で突撃授業

同国ポール・カガメ大統領が2018年に来日すると久元市長との会談が実現。ICT省との覚書も結びました。国と対等な関係にあるのは国だけという国際ルールの中で、自治体では異例ともいえる政府レベルとの珍しい関係が誕生しました。

そして、私自身が寄稿しているForbes JAPANの記事のように、いくつかのビジネスがはじまりました。ですが、まだまだ十分な成果とは言いにくいです。

そんななかで、私がルワンダを最後に訪れた2020年3月で神戸市と同国との行き来が途絶えてしまいます。新型コロナのパンデミックのせいです。

神戸アフリカフォーラムの開催

あれから3年。

コロナ禍が一段落した今、成長するアフリカに、私たちがどうかかわるのが良いのかを考えようと今日、現地の事情にくわしい人たち10名が、意見を出しあいました。

会場は三宮にある「アンカ―神戸」

アフリカのグローバル人材を神戸に

「日本がこの30年間伸び悩むなかで、優秀な若者は海外に活躍の場を選んでいる。そこで、アフリカでグローバルに活動しようとする人材を神戸に呼び込んではどうか。平成生まれの若者は守りに徹しがち。神戸でそういう人たちから攻めを学べれば、そのあとの行動も変化するはず」

と話したのは、自身も平成生まれだという株式会社ダブルフェザーパートナーズ代表の武藤康平さん。アフリカ各国で有望なスタートアップ(ITを活用した新興企業)への投資を行いながら、日本企業とつなぐことでアフリカとの関係をつくろうとしています。

ダブルフェザーパートナーズ 武藤康平さん

司会者から久元市長に「アフリカと神戸がウインウインの関係(自分も勝ち相手も勝つという円満な関係)になるのは、何が必要か」という質問が。

「アフリカではたくさんのスタートアップが生まれている。神戸を実験場にしてもらってはどうかと考えている。イノベーションを相互加速できる。神戸市では「アーバンイノベーション神戸」という市とスタートアップが共同開発や実証実験をする事業を進めている。これをアフリカ企業との間で展開する方法がある」

二人の考えは、アフリカの成長力にどう向き合えばいいのかという難題に、何かしら答えを見出そうとしているのではないでしょうか。

お互いの違いの理解が成功への近道

全く違う切り口での話もありました。Berwanda代表の松原理恵さんは、ルワンダでアパレルブランドを立ち上げて、現地で洋服を仕立てています。今後ルワンダに移住を予定しているとか。

「スカートを仕立てるときに、なぜか裏地を余分に使ってひだのように加工する。なぜと聞くと、アフリカの女性は体形がけっこう変わるので、あとでサイズを変えて長く使っていけるという。日本では考えられない」

Berwanda 松原理恵さん

株式会社アシックスのCプロジェクト部長 竹村周平さんも同じような事例を紹介。

「選手が使用する競技用のシューズをつくるときに、履いて不具合を感じてもはっきり言ってくれない文化の国がある。企業秘密なのでそれ以上は言えないのですが(笑)」

アシックス 竹村周平さん

たしかに、何をするのにもこの相互に理解するというのは、キーワードです。

アフリカにかかわるメリットとは?

ほかにもたくさんの意見が出たのですが、残念ながら、この記事で全てを紹介しきれません。

ただ、みなさん同じ思いだったのは、2050年に世界人口の1/4を占めるというアフリカの成長パワーは無視できないこと。さらにきょう話がでた、日本人の平均年齢が48歳であるのに、アフリカの人たちのそれはなんと19歳。この現実を直視することだったと思います。

ルワンダで血液製剤を病院に運ぶドローン

アフリカを舞台に、神戸市がどんな打ち手を繰り出すのかを、これからもレポートしていきたいと思います。お楽しみに!!

<この記事を書いた人>
多名部 重則/広報戦略部長兼広報官、Forbes JAPAN Official Columnist
1997年神戸市採用。米国シリコンバレーの投資ファンド「500 Startups」との起業家育成を軸にしたイノベーション施策を2015年に立ち上げた。同じころアフリカ・ルワンダとの交流事業を推進。2020年からデザイナー・映像クリエイター・ライターなど副業人材を登用して市の広報業務の変革に挑んでいる。博士(情報学)。

多名部 重則 Forbes JAPAN 執筆記事

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