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王子動物園タンタン思い出の「淡河の竹」 新しい使い道、みいつけた! 

全国で放棄竹林が問題になっています。もともとは「たけのこ」栽培のためなどに植えられた竹が、管理がされずに、放置されている場所ががどんどん増加。土砂災害の原因になることもあるので問題視されています。

そんななかで、神戸市北区の淡河町に住む武野辰雄さんは、竹の新しい使い方をいろいろと模索しています。

2019年にはじめたこの事業は「淡河バンブープロジェクト」と名付けられ、「おいしく楽しく」を合言葉に竹林の整備活動をしています。

放っておくと役に立たない竹から、タケノコからメンマをつくったり、竹細工を制作したり、農業に使う肥料につくったりするなど、

そんな挑戦を続けている武野さんにお話を聞きました。

淡河町は、 3月末にその生涯を閉じた王子動物園のパンダ「タンタン」が食べる竹を採取していた地域です。 選り好みが激しくグルメなタンタンを満足させていた竹ですから、その竹から作るメンマはきっと美味しいはず!

竹の新たな利用方法

―― タケノコ(竹)からどうやって「メンマ」をつくっているのですか?

合言葉のなかにある「おいしく」を具体化したのがメンマ作りです。3月から5月はタケノコの収穫時期ですが、刈り取らずに放っておくとすぐに育って、高さが120センチぐらいに成長します。

これを刈り取って長さ約5センチずつに切り分けます。そして茹で上げてあと、塩漬けにして発酵させます。というのは、竹は乳酸菌などを多く含んでいるため、自然発酵するのです。

こんどは空気にさらして乾燥させ、食べやすい大きさにカットすれば、ラーメンに入れるようなメンマが完成します。最近では、メンマを使ったメンマカレーを開発して販売しているんですよ。

―― 竹細工では実際にどのような商品に加工しているのですか?
最初に取組んだ竹細工づくりはこのプロジェクトの原点といえます。経験豊かで匠の技を持つ竹細工の職人を講師に迎えて、バンブープロジェクトに参加した人たちに作り方を教えてもらっています。

竹細工の技術を多くの人が身に付け、次世代に継承していくことがねらいです。竹かごや電球の傘などいろんなモノを制作しています。

きっかけは広島のメンマサミット

 ―― なぜバンブープロジェクトを立ち上げようと思ったのですか?
生まれ育った淡河では、若い人たちが仕事のある東京や大阪に出て行ってしまうので、何かしたいと思っていたことが原点です。

ある日、たまたまウェブで、広島でメンマサミットが開催されるという記事を見つけたんです。一見すると謎のイベントですが、どうやらメンマサミットというのは、メンマだけでなく、竹について広く議論されている場だったのです。淡河では放置竹林が問題になっていたので、開催は4日後に控えていましたが、これは行くしかないと決断しました。

そこでは、メンマを製造している方から話を聞きました。なんと、日本で流通しているメンマの99%が中国産ということを知りました。その人はメンマをつくりたくて、生産しているわけでなく、放置竹林を何とかしようと考えると、メンマづくりにたどり着いたとか…

あくまで竹林をきれいに整備したいという思いでの活動だったのです。すごくいい活動だと感じ、淡河町でもできないかと思いました。

―― なぜ里山を何とかしたいと考えたのですか?
私が子供のころに遊んでいた山はもっと明るかったです。秘密基地を作ったり、かけっこしていたはずの場所が、今は大人でも怖いと感じるほど草木が茂り、荒廃しています。

こうなるとイノシシやアライグマといった害獣が住みつきます。農業やってるとイノシシに田畑を荒らされます。昔は山の奥にいたはずのイノシシが、里山が荒れたからで、人が住むところまでやって来たというのが現実なのです。

―― 竹林の整備活動で一番苦労しているのは、何ですか?
現在のところバンブープロジェクトには58人が参加しています。しかも、北区に住んでいない人たちが7割を占めています。三宮だったり、西宮、芦屋、明石からも来てくれています。

都会から参加する人たちに、どうして参加しているのかを尋ねると、「ここにくると時間の流れがゆっくりしていて、ほっとする」と言ってくれます。心と体のリフレッシュができるというのもよく聞きます。

ただ、この日に竹林整備の活動をするとSNSで呼びかけても、参加者はいつも10人ぐらい。ですが、竹林での活動は、高さ10メートルほどの竹を伐採して、トラックが停まっている場所まで運ぶ。そのあと1メートルくらいに切って、トラックに載せます。けっこうな肉体労働なのです。

なので、ほんとは20人は集まってほしいと思っていて、今後は一般のボランティアも参加できるようにしてみようと思っています。

里山・淡河に残る本当の魅力

―― 淡河町のいいところを一言で教えてください。
不便だけど人と人のつながりを感じられる日常、そして都市エリアとの適切な距離感。例えばバス路線も通っていますが、昼間は1時間に一本程度と便数がかなり少ないです。ただ、その不便さを楽しめる人に向いている地域かなと思います。

ただ、いい意味での「田舎」です。家に帰ると玄関の軒先に近所の人が野菜をおすそ分けで置いてくれます。そんなのがまだ残っているエリアです。三宮から車で30分ぐらいの距離で、田舎の古きよき文化が残っている。そんなところですね。

―― 新たな活動拠点で開設されると聞きました。どんな施設ですか?
新しい活動拠点として「シェアスペース結~ムスヒ~」ができました。メンマなどの加工食品、竹細工の商品を販売しています。2階には畳敷き部屋があり、いけばな教室も始まりました。食と自然に関するさまざまな活動がここで行われるので、今後の展開にご期待ください!

<この記事を書いた人>
aioi /北神区役所地域協働課
自称フォトグラファー。今回の記事に掲載している写真も全て自分で撮影した。プライベートでは甥っ子をモデルに写真の腕を磨いている。
結婚するまでは、ボーナスのたびに新しいレンズを買ってしまうという、カメラ好きが陥る「レンズ沼」にハマっていたようだが、最近は自制心も働いてきた模様。

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