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高校生の海外留学、本当に意味あるの? 神戸龍谷はリガに派遣

姉妹都市だと、遠く離れた海外でも、人と人とがつながりやすくなります。そういった交流で、お互いに歴史や文化、そして考え方を理解するのがとても大事です。

と、昔から教科書的には言われます…

が、本当でしょうか?今はインターネットで調べると、知らないことがすぐ分かる時代です。

そこで、この記事では高校生の海外研修に焦点を当てて、海外とつながる意味をお伝えしたいと思います。

夏休みになると関西空港や成田空港で、海外に短期留学に行く高校生をよく見かけます。お金と時間を掛けて1-2週間の留学をするのは、はたして意味があるのでしょうか?

リガの学校とお互いに行き来している、神戸龍谷高校の事例を深掘りしてみました。


交換留学がはじまった理由 

ラトビアのリガには、日本語の授業をしている中高一貫の公立学校「リガ文化学校」があります。2017年に神戸龍谷高校との間で、年間2-3人の生徒を1週間ほど相互に派遣する研修を始めました。
 
神戸とリガが姉妹都市となって50年。記念事業で私がリガを訪問しているときに、神戸龍谷高校の2名の生徒がリガに滞在していたので、お話を聞くことができました。

 神戸の姉妹都市のなかでもシアトルやブリスベンに研修や留学といわれると違和感はありません。なぜ同校はリガを選んだのでしょうか。プログラムを担当している宮本先生に聞きました。 

神戸龍谷高校はこれまで、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど英語圏の学校に生徒たちを留学させていました。でも本当の意味で、グローバルな視座を身に着けるには、英語圏以外の学校とも交流の機会が必要だと思ったのです。そして、神戸市の姉妹都市であったリガに注目しました。

よくよく調べてみると、ラトビアの人たちは公用語はラトビア語ですが、英語も話せます。なので、意見交換がしやすいのです。しかも、日本と違ってロシアやソ連など大国に支配され続けた歴史を持つリガは、平和や人権、さらにSDGsといった題材が、神戸の生徒にとって、きっと役に立つと考えたそうです。
 
こうして、リガを選んだ同校は、神戸市役所の国際部に相談。神戸市長の親書をリガ市長代理に渡したのが交流の端緒になりました。

一杯のスープから日本を学ぶ

今回、派遣されたのは谷上 煇さん、金岡 葵さんです。ラトビアが支配さ続けた歴史、平和を勝ち取るための葛藤、それゆえ自国の文化をとても大切にしていることを事前に学習した上で、リガの地に降り立ちました。

で、リガは実際、神戸の女子高生の目にどう映ったのでしょうか。リガのことをしっかり勉強したはずの彼女たちを驚かせたのは、「ビーツのスープ」の話です。ビーツはヨーロッパ原産の根菜で、色は赤っぽく、味は少し甘みがあります。
 
彼女たちが、リガ到着から一週間ほどして、在ラトビア日本大使館を訪問しました。そのとき大使館で働いている料理人から「ビーツを使ったピンクのスープは、ラトビアの人はラトビア料理だというけれど、リトアニアの人はリトアニア料理だという。あまりはっきりとした境目がない」と聞かされて、びっくりしたらしいのです。

というのは彼女たちは、ラトビアには「日本料理」のように、「ラトビア料理」があると考えていました。ところが、ラトビア料理はバルト海周辺の料理と相互に影響しあっていて、区別がむずかしかったのです。
 
日本料理と韓国料理、中国料理はだいぶ違います。四方を海に囲まれ、独自の文化をはぐくみやすい日本と、さまざまな文化がまじりあっているラトビアの違いが、一皿のスープから垣間見た瞬間です。でもこれこそ、現地に行って、お話を聞かないとわからないことですね。

リガの高校生から平和を学ぶ?

昨年秋、リガ文化学校の生徒が1週間の日程で神戸龍谷高校を訪れました。ちょうど特別授業を見学する機会があったのでご紹介します。「平和」を題材にした授業でした。
 
まずは、神戸側の生徒たちはリガの生徒からラトビアの歴史の説明を受けます。教科書や本で読むのとは、また違ったリアリティや熱量を感じるのでしょうか、真剣に聞き入る姿が記憶に残っています。
 
そのあとグループディスカッションでは、大人でも答えが分らない難しいことを議論するのです。
 
例えば、戦争をしているA国とB国。両国ともそろそろ戦争は止めたい。ところが、A国はB国が事実上支配している領土返還を求めています。B国はこの領土を失うと水資源が確保できなくなります。

といった状況が与えられ、どのような対立やジレンマがあり、解決策を見いだせるのかを話し合うものでした。

日本とラトビアはお互い、民主主義の国です。それでも、それぞれの歴史や地政学上の条件の違いから、領土や平和構築に対する視点や危機感が異なるのです。日本人にとって、刺激になると感じました。

そんな人たちと、若いうちから交流し、答えのない問いに、向き合うことができるのは、かけがえのない経験だと思います。
 
私自身も高校生のときに、海外に短期留学をしました。そしていま神戸市役所で姉妹都市交流の仕事をしています。そんなふうに考えると、もしかすると人生を変える機会になるのかもです!

<この記事を書いた人>
こひつじ /市長室国際課
国際課職員。自身も高校時代、コスタリカやフィリピンに短期留学をしていたため、神戸龍谷高校の生徒達にはシンパシーを感じたとか。趣味はお菓子作りで、いつでもカフェをオープンできるよう、食品衛生責任者の資格をとった。ラトビアのおすすめスイーツは、チーズクリームが入ったシュークリームと、はちみつケーキ。

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