世界一ドローンフレンドリーな街でした! ラトビアのリガ訪問記
神戸の姉妹都市であるラトビア共和国のリガ。バルト三国のほかの都市と同じく、石畳の街並み、かわいらしい手工芸品、豊かな自然…が特徴です。
一方で、リガはラトビアの首都として、最先端の技術が集まっている都市でもあります。神戸とリガの姉妹都市50周年事業で現地を訪れたときに、リガの産業の「今」を見ることができたので、お伝えしようと思います。
リガはドローン開発で世界一を達成
じつは、リガは「世界一ドローンフレンドリー」な都市といわれています。
英国フィナンシャルタイム紙の海外投資関連を扱うfDi intelligenceが2021年に発表した「ドローン開発」分野のランキングで、リガは世界一になっています。ルワンダのキガリ、南アフリカのケープタウンと並んで首位でした。
世界一になった決め手は二つあります。一つは、特別な法整備がなされていて、ドローンを開発する企業が初期段階での実証実験がやりやすいことです。もう一つは、世界ではじめて国境をまたいだモバイル電波を使ったドローン飛行が隣のリトアニアとの間で実現したことです。
リガにはドローンを開発する企業がいくつも立地しているのですが、今回はこのうちのアトラス社を訪問しました。
同社では、年間3000台のドローンを製造していて、調査や防災のために使われる機体が多いという話でした。4Kカメラや赤外線カメラを搭載できたり、移動物体を自動で追跡したりできます。
ただここまでは、よくありそうです。
そこで「何がすごいの?」と、CEOのIvan Tolchinskyさんにストレートに聞いてみました。
「たくさんあるよ」と茶目っ気たっぷりに話をはじめます。
まず、下請けを使わずにすべての製造工程が自社内で完結。なので、セキュリティも万全。顧客からのいろんな注文に柔軟に対応できます。
そして驚いたのが、ドローン同士をつなぐ技術を持っているという話です。ドローン間が電波で結ばれているので、例えば3台のドローンを同時に操縦することで、広い範囲のデータを同時にとることができるのです。
あと、陸上のリレー競技のように、あるドローンの仕事を別のドローンが引き継ぐことができると説明がありました。「第一走者」のドローンの充電がなくなりそうになったら、「第二走者」のドローンが自動で発進して「第一走者」の任務を引き継ぐ。「第一走者」は基地に戻ってバッテリーを交換して次の発進に備えるという感じです。
実際に、デモも見せていただきました!
神戸でもドローンの活用に向けた実験が行われていますが、どうやらリガから学べることが多そうです。
ゼロカーボンで注目の水素を安く生産
続いて訪れたのは、ナコテクノロジーズ社。この会社は、ゼロカーボン時代に向けて注目が集まっている「水素」をつくるのに必要な触媒部品を作っています。
水素の製造方法として、電気で水を水素と酸素に分ける、水素の電気分解という方法があります。この分解には触媒が必要なのですが、触媒にはプラチナやイリジウムといった希少で高価な金属が使われるのです。
このコストを下げるために、いろいろな企業や研究機関が知恵を絞っています。そんななかで同社は、特殊なコーティングをすることで希少金属の使用を40分の1に減らせる手法を編み出し、商用化に成功しているのです。
ナコテクノロジーズのCCO、Raivis Nikitinsさんに、その将来性をお聞きしました。
同社が「水素」に特化した触媒のコーティングを始めたのは2020年ですが、事業は順調に伸びていて、2025年にはポーランドに新しい工場を作る計画で、生産能力が現在の20倍になるそうです。同社によるコーティングは薄くて密度が高く、ナノサイズの細かさが特徴で、どうやらライバルの技術より優れているようでした。
小さな国だからグローバルを目指す!
アトラス社は85名、ナコテクノロジーズ社は15名という小規模な会社です。
ですが、アトラス社は米国、英国、ノルウェー、オランダ、シンガポールなど15か国ほどの政府と取引があります。
ナコテクノロジーズ社もドイツの大手医療機器メーカーや韓国の大手自動車メーカーをはじめ、カナダや米国、日本の企業など、世界各国の企業が顧客だと話していました。
ラトビアは人口190万人程度の小さな国です。国内のマーケットは小さいので、EUや世界のマーケットで勝負をしないといけません。ラトビア共和国はロシアとのビジネスも盛んでしたが、ウクライナ侵攻を受け、国としてロシアとは取引をしない方針になっています。なので、なおさらグローバルマーケットを意識しているのだと感じました。
人口減少が進んでいる日本、神戸にとっての、ヒントが何か潜んでいるのでは?と思います。
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