変わる神戸駅 蒸気機関車「D51」をライトアップ
JR神戸駅の線路海側に、蒸気機関車「D51型(愛称:デゴイチ)」がどーんと鎮座しているのをご存じですか?
このデゴイチが今日(10月28日)から毎日、夜間にライトアップされることになったんです! その背景や神戸駅の歴史を、広報戦略部ライターのゴウがお届けします。
神戸にSLがある理由
考えてみれば、私は蒸気機関車に乗ったことがありません。それもそのはず、蒸気機関車は1975(昭和50)年に営業運行を終了しています。
いま神戸駅にあるデゴイチは1943(昭和18)年製。営業終了の昭和50年まで、北海道で活躍した車両です。
運行終了後、神戸ライオンズクラブや地元住民によって「蒸気機関車をぜひ神戸に」という声が上がり、1978(昭和53)年、神戸に設置されました。
*蒸気機関車のことを「SL」といいますが、「Steam(蒸気)Locomotive(機関車)」の略なんだそうです。そのままやん(笑)!
神戸駅の歴史
神戸っ子には身近な神戸駅ですが、実は日本の鉄道の歴史において、重要な役割を果たしてきた駅なんです。
2022年のことしは、1872(明治5)年に「新橋~横浜」間で日本初の鉄道が開業してから150年です。開業日の10月14日に、特集番組や記念イベントを見かけた方も多かったのではないでしょうか。
そのわずか2年後、日本で2番目の鉄道として開通したのが、1874(明治7)年の「大阪~神戸」間で、神戸駅はその終着駅だったんです。
レンガ造りの現在の駅舎は1930(昭和5)年製の3代目ですが(それでも90歳越え!)、明治ひとケタの時代からこの場所が「鉄道の駅」だったと思うと、震えますね……!
今も、東から続くJRの「東海道本線」と西へ続く「山陽本線」の分岐点で、重要な駅であることに変わりありません。
駅前にSLがあることは知っていましたが、「なぜ神戸に?」と唐突感をぬぐえなかった私。神戸駅の歴史を知ると、その理由がストンと腑に落ちました。
神戸駅、どんなふうに変わるの?
これほど由緒ある神戸駅ですが、現在の駅前には、どこかさみしい雰囲気が漂っていることは否めません。
神戸駅のすぐ北側には、楠木正成を祀る「湊川神社」があります。地元では「楠公さん」と親しまれる歴史ある神社と、レトロなレンガ造りの駅舎が一直線につながっているんですが……
ううう……もったいないこと、この上ないですよね。
他にも「動線がわかりにくい」「慢性的に駐輪場が不足し、駅前が自転車であふれている」など、課題がたくさんあります。
そこで「神戸の名前を冠する駅にふさわしい空間にしよう」と、駅前再整備をおこなうことになりました。
まずは、駅前広場から地域のシンボルである湊川神社を軸にした景観をつくります。
神戸駅は、その山側は神社や文化ホールという歴史・文化エリア、海側はハーバーランド、東に足を伸ばすと元町・三宮エリア、西に行けば新開地や喜楽館などのディープエリアと、東西南北でエリアの性格がぜんぜん違うんです。
駅周辺を1つの「劇場」と見立て、駅前広場がそれぞれの舞台への「ホワイエ(ロビー)」となるようなコンセプトで、現在のレンガ造りの駅舎を生かしながら、まちづくりを進めます。
再整備は、以下のスケジュールを予定しています。
2023~2025年度 地下タワー式駐輪場の設計・工事
2026~2028年度 バスターミナル・タクシーロータリーの整備
2029~2030年度 広場の整備
駅舎が100歳を迎える2030年に、整備完了を見込んでいます。
今回のデゴイチのライトアップは、「これから神戸駅が変わっていきますよ」ということを、皆さんに知っていただく合図の意味も込められています。まるで機関車の“汽笛”ですね。
デゴイチ点灯式に参加した久元喜造市長は、去年の年末、暗くなってからここを通ると、たくさんの人が記念撮影をしたり、機関車にじっと見入ったりする光景に出くわしたそうです。
「こんなにたくさんの方が訪れるなら、明るく照らしてデゴイチのより良い姿を見てもらったほうがいいのでは」との発案から、今回のライトアップが実現しました。
機関車の車体には照明を一切つけず、下からの光がやさしくデゴイチを照らします。暗くなれば点灯し、明るくなれば消灯する自動式です。
これからずっと、今よりもっと愛される神戸駅のシンボルになってくれそうですね。