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神戸は「ご当地インク」発祥の地 色の数でも全国トップ

神戸の色って、なにいろだと思う? と聞かれたら、あなたはどんな色を思い浮かべますか。

須磨の浜辺や神戸港からながめる海の青、初夏にはまぶしささえ感じる六甲山の緑、それとも港のシンボルであるポートタワーや神戸大橋の赤色でしょうか。

豊かな自然やおしゃれな街並み、おいしい食べ物、見どころや名物がたくさんあるので、人によって思い浮かべる色もきっとさまざまなのでしょうね。

そんななか、神戸の「色」を万年筆のインクという形であらわした商品が注目されています。それが、「Kobe INK(インク)物語」です。

街の色が万年筆のインクに

2007年からこの商品の販売をはじめたのは、神戸に本社があるナガサワ文具センター。明治15年の創業という老舗の文具専門店です。

Kobe INK物語では、神戸の風景や街並みをインクの色であらわしています。

例えば、「北野異人館レッド」、「有馬アンバー」、「須磨離宮ローズ」のように、神戸のスポットにちなんだ名前がついています。

しかも、発売から15年がたった今でも新しい色が毎年のように発表されているのです。

こんなふうに、街をインクの色で表現するやり方は、全国各地に広がりました。でも、神戸のインクは全国に先駆けてのものだったといわれているんですよ。

今や色の数なんと120色以上!全国の「ご当地インク」の中でも、圧倒的な数を誇っています。しかも、15年間も第一線で売れ続けているロングセラー商品なのです。

色見本から街を垣間見る

「神戸インク物語」の誕生

このインクが生まれるきっかけとなったのは、1995年におこった阪神・淡路大震災。週末には多くの人でにぎわう三宮センター街にお店を構えていたナガサワ文具センターも大きな被害を受けました。10年間は立て直しに必死だったようです。

その後、ようやく落ち着きを取り戻しつつあったとき、「復興でお世話になった方々に、きれいな色のインクで神戸からお礼の手紙を」と考えた方がいました。それがこのインクの生みの親である竹内直行さんです。

大震災のあとでも、いつも竹内さんの目をいやしてきた六甲山の深い緑が、一つ目のインクの色「六甲グリーン」を産みました。

Kobe INK物語の生みの親 竹内直行さん

ところが、iPhoneがこの世にデビューした年と重なります。まさにウェブ時代の幕が開いたころでした。万年筆のインク自体がデジタル化の波にさからう商品なので、発売されたころは売れ行きを心配する声もありました。

ですが、そんな声とは裏腹に、このインクは、文房具の愛好家や地元の人々に愛されながら、しっかりと育ちはじめたのです。

大ヒット商品「フェルメール・ブルー」

そして2012年、大きな転機が訪れました。神戸市立博物館で開催された美術展とコラボしたインク「フェルメール・ブルー」の発売です。

2003年の映画化で有名になった「真珠の耳飾りの少女」と呼ばれるオランダの画家、フェルメールの絵画。この絵にある少女が巻いている青いターバンの色から生まれた美しいインクが大人気となりました。初回販売された500個があっという間に売り切れたのです。

奥深いが鮮やかな「フェルメール・ブルー」

これをきっかけに、これまで万年筆インクに興味をもっていなかった人々にも「Kobe INK物語」の名前が知られるようになりました。

ガラスペン一本で「インク沼」へ

今では海外にも出荷される人気商品。ただ、人によってたのしみ方はいろいろです。

万年筆やガラスペンで文字を書くという本来の使い方から、書道で墨汁の代わりにしたり、絵の具のようにイラストを描く人もいます。

インクで描かれた神戸の風景

じつは、私がはじめてインクを買ったとき、さてどうやって使いこなそうかと悩んでいました。文字を書いたり、イラストを描く趣味もなかったので。

しばらくは机の上に飾っていました。ところが、ながめているだけでなにかゆったりとした、ちょっと贅沢な気分になってきたのです。

そんな私でしたが、今では「使う」と「集める」を満喫しています。インクの魅力にハマって抜け出せなくなるという「インク沼」、どっぷりはまってしまったようですね…

神戸のお気に入りを書いてみました

色のルーツを訪ねて街歩き

ところで「集める」となると、やはりかかせないのが「○○限定」。

いつも売られている定番色だけでなく、神戸で開催されるイベントでの限定品、さらに昨年秋に神戸港にできた水族館のような、人気スポットとコラボした特別色が好評です。

ほとんどの商品がオンラインで買えるにもかかわらず、いち早く手にしたいと現地をおとずれる熱心なファンもいるとか。

限定商品の数々

このインクを生んだ竹内さんは「神戸は色があふれる『多彩』な街。街のあちこちにストーリーがあり、それを掘りおこす起点になるのが『色』だと思っています。大好きな神戸を、このインクでもっと盛り上げていきたい」と熱く語っていました。

神戸が誇る「Kobe INK物語」。まずは気になる色をひとつ選んで、手に取ってみてはいかがでしょうか。

そして、その次には神戸の街に足を運んで、その色のルーツ(由来)を体感するというのもすてきですね。

神戸をいろどるたくさんの色が、きっとあなたをお待ちしています。

<この記事を書いた人>
みや/人事委員会事務局調査課
神戸市役所での庁内副業制度(自分が所属している部署以外の仕事をやる仕組み)で神戸市公式noteで記事を書く「ライター」を募ったところ、秒で手をあげた勇気ある職員の一人。だがふだんの仕事は、民間企業で働く人の給料をアンケートなどで調べて、それを市職員の給料に反映させるという地道なもの。
なので今回の記事は、インク沼にハマった彼女に「インクの精霊」が憑依して書かせた可能性が大。