【市長初投稿!】下水から肥料を〜資源循環「こうべ再生リン」の取り組み
市長の久元喜造です。
9月から神戸市公式noteが開設され、市の職員が自ら神戸市の政策や事業を紹介することとしています。
私からも、ぜひみなさんに知ってもらいたい政策や私の考え方をこのnoteを通じて発信することにしました。
今回はその第1回目として、生活排水である下水から肥料の原料である「リン」を回収し、肥料として利用する「こうべ再生リン」の取り組みをご紹介します。
輸入だのみの肥料原料が高騰
農作物の成長に欠かせない栄養素は、「窒素」、「リン」、「カリウム」の3種類であり、これらは、肥料の三大要素ともいわれています。しかしながら、日本はこれら肥料の原料をほぼ全量輸入に頼っており、特に「リン」は中国からの輸入に頼っている状況にあります。昨年秋以降の中国による「リン」の輸出制限、その後のロシアによるウクライナ侵攻により、「リン」のみならず、肥料の原料が高騰し、わが国の農業に大きな打撃を与えています。例えば、お米は国内で100%作られています。ところが、肥料が手に入らなくなると、これは大きな問題です。
こうした状況もあり、下水処理を行う東灘処理場で出る汚泥から「リン」を回収し、肥料として活用する資源を循環させるプロジェクトが、国や他の自治体、肥料メーカーから注目を集め始めています。
下水処理の汚泥からリンを抽出
下水道には、私たちのし尿が生活排水として流れ込んでいます。し尿には私たちの食べたものに含まれる「リン」が入っていますので、その「リン」を肥料の原料として下水から取り出します。
下水処理は、「下水を海や川に放流できるレベルまできれいにする」ことです。その過程で、下水(汚水)に含まれていた固形物を沈殿・分解すると汚泥が発生します。この汚泥は、本来であれば焼却処分されてきました。
ところが、この下水処理の途中で発生した汚泥を特別な設備に入れて、マグネシウムを加えて化学反応を起こすことで、リン酸マグネシウムアンモニウムを取り出すことができるのです。これが肥料の原料として利用することに神戸市は成功したので、これを「こうべ再生リン」と呼ぶことにしました。
今後の展望
神戸市では「こうべ再生リン」を肥料メーカーに販売して、肥料メーカーが成分を調整し肥料にしています。キャベツやブロッコリー、スイートコーンといった神戸の野菜ブランド「こうべ旬菜」や、学校給食に出されているお米「きぬむすめ」の栽培に利用されています。
しかし、現在の「こうべ再生リン」の生産能力が130トンあるにも関わらず、現在利用されているのは、わずか25トン程度となっています。これがもっと利用されることになれば、循環型社会の実現、農業経営の安定化にもつながりますし、ひいては我が国の食料安全保障にも貢献できると考えます。
そこで今年7月以降、このような事業が全国展開できるよう国に支援をお願いしています。10月17日には、農林水産省と国土交通省が下水汚泥の肥料への利用拡大に向けた官民検討会を立ち上げたところです。
今後、この「こうべ再生リン」の取り組みを皆さんに知ってもらい、さらに利用してもらえるよう、12月中旬から一般家庭向けに「こうべSDGs肥料」としてホームセンターなどで販売することを予定しています。これからの「こうべ再生リン」の展開にぜひ、注目してください。