アウトレットモールにコンテナ型「釣り堀」開業 金属加工業から畑違いへ!
「釣り堀」といえば、昔からあるのどかな水辺で、年配者たちが釣り糸を垂らしているようなイメージを抱く人も多いかもしれません。ところが昨年、神戸は垂水の海に、いろんな意味で“時代の先を行く”釣り堀が誕生しました。
それが「KAIKENの釣り堀」。コンテナを改装した水槽、見たことのないような数々の魚、釣ってその場でさばいて食べるという仕組み…これが何より子どもをメインターゲットにした教育施設であり、実は先端的な海洋研究の実験場というから驚きます。
さらに、この施設を生んだ「KAIKEN」が、金属加工を主業務とするメーカーによる事業だと知るとどうでしょう。もはや釣り堀への先入観がぐっちゃぐちゃになりません?
この中心にいるのが、本丸勝也さん。
今回は、エネルギッシュな神戸ビールの四宮由華さんが一番気になってる人! とご紹介いただいた、本丸さんに会ってきました。
どうしてメーカーが海洋分野に!?
―22年9月、垂水のマリンピア神戸に「KAIKENの釣り堀」をオープンされたことが話題です。そもそも「KAIKEN」って何でしょう?
「海洋水産技術研究所」と国の機関みたいな名前を付けてますけど、こちらはうちの会社「兵庫ベンダ工業」が21年に新設した研究所です。ものづくりを基本とした兵庫ベンダ工業で働く従業員が高齢になってきたときに、配置転換先のひとつとして考えたのが海洋分野だったんです。
―雇用面からの海洋分野なんですね。兵庫ベンダ工業のこれまでの事業と海洋は何か関係があるのですか。
これが直接的にはないんです(笑)。なので異分野からの参入ですね。兵庫ベンダ工業では主に金属加工で大型構造物を、たとえば、神戸海洋博物館の外観に使われている大きな白いフレームだとか、トンネルの型枠といったものを手がけています。間接的には海洋分野の関わりもあって、海底ケーブル管や水族館の仕事、それから「CINEMA-EYE」という映画・映像事業部では、海と暮らしをテーマにした『こちら海です』というサンテレビの番組を24年間制作していました。
―興味深いですね。たくさんお聞きしたいことありますけど、端的にどうして「釣り堀」だったんでしょう。
海洋に関わるといっても簡単なことではないので、KAIKENとして海の実験場をつくって、その結果を広くアウトプットして業界から注目してもらう必要があると考えました。その実験場を同時に教育要素のある釣り堀としてオープンさせたという流れになります。
―釣り堀として運用しつつ、実は実験場として機能させているんですね。
そうです。まず、生きた魚を集めるために全国の漁港や事業者さんの協力を得ながら、「活魚ネットワーク」の構築を進めています。また、その中では漁師さんたちが「雑魚」と呼んでいる未利用魚・低利用魚も活用しています。なので、うちの釣り堀は魚種がとても多いんです。ちなみに、未利用魚は最近では回転寿司チェーンなどでも扱われ始めていますが、世界的には獲れた魚の3分の1くらいがこれまで廃棄されていたと言われています。
全国初!?未利用魚を活用した釣り堀
―未利用魚を使った釣り堀というのも聞いたことなかったです。
全国初じゃないでしょうか。コンテナを改装した水槽に30魚種とか入っていて、スーパーではたぶん見たこともないような魚も混じってます。釣り堀としては、釣って、さばいて、食べるまでをセットで体験してもらうことで魚食の意識を高めているのと、水中カメラの映像で餌を食べる様子を見てもらったり、水中ドローンを動かしたりといったことも体験いただけます。
―釣り堀にして体験型教育施設というのはそういうことなんですね。
そう。そして、水中モニターやセンサーで、実はバックヤードで水質や魚の生育状況といったデータを24時間ずっと集め続けています。魚の行動追跡、成長状況把握、魚病の対策にも活かしていけたらと。だから、いろんな魚種を集めることも大事なんです。
―活魚ネットワークも、釣り堀も、研究環境を整えるためなんですね。
この事業を始めてから海のことが楽しすぎて、今は毎日、海のことばかりやってます。10トントラックの大型活魚運搬車も買ってしまったので、これを自分で運転して各地の漁港に魚をもらいにいくのがすごく気持ちいいんですよ(笑)。
チヌの海苔弁、魚講…あふれるアイデア!
―今、ご興味のあることはなんでしょうか。
今はとにかく海のことばかりで、たとえば、須磨の海は海苔の養殖が盛んですけど、チヌの被害がすごいんですね。テクノロジーを導入すれば、チヌを寄せつけないことも難しくないと考えていましたが、結局、そのチヌが明石など隣りの海に集まるのでは意味がない。そこで考え方を変えて、チヌを名物にできないかと。
―あまりチヌを食べるって印象ないですね。
なので、漁師さんも市場の値がつかなくて、あまり取らないんです。そこで、チヌフライを使ったのり弁当をつくって神戸名物にできないだろうかと考えています。
―チヌののり弁、広まりだしたら本丸さんの顔を思い出すようにします。
あとは月に1回、「魚講」と題した海洋や水産分野にまつわる講義をリアルとオンラインで開講しています。もともと「KOBE文教区」という、これもうちで勝手に神戸につくった仮想区で、産官学連携の学びの場を開いているのですが、その一環として「魚講」を始めました。こうしたことを通して、僕らも知見を深めてネットワークを広げていけたらと考えています。
次に紹介するのはライブハウスを運営する盟友!
―それでは、本丸勝也さんの気になるヒトをご紹介ください。
すぐに思いついたのがライブハウス「VARIT.」の南出渉さん。コロナ禍でライブハウスが大変なときに、神戸のライブハウスに配信技術を持たせるということを手伝ったりもしたのですが、そんな中で南出さんは突然、キャンプ場をつくりたい!って言い出して。いろいろ戦略を考えながらやっていく僕らと違って、南出さんは夢と情熱の塊みたいな人。思いつきで動くんだけど(笑)、その発想がまた面白くて。
―苦境のライブハウスがキャンプ場! 興味深いです。
ずっと神戸で活動されて、神戸への思いもきっと僕より持ってられるので、ぜひ話を聞いてみてください。
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本丸勝也さん南出渉さんへと渡されたバトン。
第5回は南出渉さんに気になる人をご紹介いただきます。どうぞお楽しみに!
※本記事でご紹介した「KAIKENの釣り堀」は休堀中となっているのでご留意ください。(再開に向けて準備中となっております)
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