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街なかアートフェス「Any Kobe」ってなに? 半日体験レポート

いま神戸の都心部、北野から旧居留地の約40の場所で、たくさんのアート作品が展示されています。

昨年はじまったこのイベントは、街なかアートフェス「Any Kobe」と呼ばれ、新進気鋭の作家の作品が見られます。手元に置いておきたい作品を見つけたら、購入することもできるのです。

広報戦略部の多名部重則といいます。

この「Any Kobe」に興味があったのですが、アートは完全に素人。そこで、今回の企画と運営に携わり、自らもアーティストとして出展している高田雄平さんに案内役をお願いして、半日で4つの拠点をまわりました。

まず驚いたのは、アート作品が単に展示されているだけでなかったことです。かなりの割合で作家の方が現地にいて、どのような作品なのかを説明してくれました。

私のように「アートに少し関心はあるが、そんなに詳しくない」という方に、「Any Kobe」の魅力をお伝えします!

ブーミン北野

芸人×アーティスト たいぞうさん

最初に訪れたのは、北野坂に面した「ブーミン北野」という建物の地下1階。そこで出会ったのは、吉本新喜劇や朝日放送の「クイズ!紳助くん」に出演していた、たいぞうさんでした。

芸人×アーティスト たいぞうさん

今は絵を描くのが仕事の8割くらいという彼が、「自分だけの教科書」という1枚の絵を指差し、何を表現しているのか語ってくれました。

「芸人の世界には教科書がないので、自分だけのやり方を見つけます。それがこのハートで、それを実現させるのがこの龍です。ただ、他の人には役立ちません。だから、自分だけの教科書というわけです」

自分だけの教科書 たいぞう

さらに彼は、「芸人をやってなかったら描けていません。自分だけの教科書も、(島田)紳助さんから聞いた話を絵にしています。体験したことをちりばめながら、今の考えを加えています」と、熱く語っていました。

深海へと進むシーラカンス

隣の空間では、暗く厳かな空気の中で、金属を使ったアートが展示されていました。神戸芸術工科大学の卒業生2名によるものでした。

案内役の高田さんが、この空間には見つけにくい作品がもう一つあるそうです。暗いために見えにくいのかと思っていると、天井付近の壁が一部切り取られ、そこにシーラカンスの作品が一体化していました。

蔦本大樹さんの作品

近くで見たいと思った私は、普段は使っていない階段を昇らせてもらいます。まるで深い海へと誘われていくようで、見る人の意識が時空を飛び越える作品だと感じました。

ローズガーデン

漫画家やイラストレーターの候補生

次に訪れた場所は、建築家の安藤忠雄さんが設計したローズガーデンです。ここでは25歳以下の若手作家たちの作品が展示されています。

まるでアニメや漫画に使われるような絵だなと思いながら眺めていると、京都芸術専門学校の先生が「コミックイラストを現代美術として発展させた作品です」と、教え子たちの作品を紹介してくれました。

「今の学生たちは、SNSで作品を発表するので10代の頃からファンがいて、ファンともに成長する世代です。中には2万人のフォロワーがいて、作家として生活ができる子も。上の作品を描いた『れんち』は、週刊少年サンデーの担当編集者が付いていて、学生でありながら漫画家デビューが確約されています」

アメフラシと猫

こちらに描かれているのは、磯釣りをする方はときどき目にする「アメフラシ」です。作家の灰野ゆうさんに話を聞きました。

灰野ゆうさんの作品

「捕まえて、飼育して、解剖するまでが一括りです」。アメフラシが大好きだという彼女の一言に驚きました。

「よく知っていないと描けない。じつはアメフラシは内臓が重いんですよ。それを知らないと」

…かなり独特のセンスですね。

次に出会ったのは山田貴裕さん。展示していた大きな猫の絵は、木材に油性マジックのマッキーで描いたもの。

山田貴裕さんの作品

この隣に、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」の少女を猫に置き換えた「フェルメール猫」という作品がありました。なんとこちらは、鉛筆を使った作品だそうです!

ホテル北野プラザ六甲荘

次に向かったのは、六甲荘というホテルです。玄関横にあるブライダルサロンが臨時の展示スペースになっていたり、廊下もいくつかの作品が掲げられていたりするのですが、大きな特徴は、屋外の庭園に4つの作品があることです。

少し奇妙なのは、そこに行くまでの導線。ホテル1階のレストランを横切って、非常口のような出入口から庭園に出ます。レストランの従業員に「アートを見に行きます」と断ってくださいね。

メイン会場/建栄ビル(MRSXビル)

公募作品の展示

最後に着いたのは、旧居留地の大丸から南西にある建栄ビル(MRSXビル)です。Any Kobeで一番たくさんの作品が展示されている会場です。

1階には、公募で受け付けた118作品から選ばれた58作品が展示。この中から入賞20作品、大賞1作品が選ばれます。

1階の一番奥のスペースには、昨年の入賞作品と大賞作品が並んでいます。

燃えかかった紙から女性を

このビルの2階の吹き抜けスペースには、7体の女性の像が置かれていました。

奥田誠一さんの作品

紙に火をつけて少しだけ燃えたところで消したものを素材にして女性像をつくっています。モチーフを女性、しかも若い女性にしたのは「これから生命を創っていけることに注目したから」だそうですが、燃えかかった紙をどのように消し止めているかは「企業秘密」だそうです。

Any Kobeの魅力

最後に、約半日をかけて私を案内してくださった高田雄平さんに話を聞きました。

案内して頂いた高田雄平さん

「この2年間、展示会場イベントに人が集まったり、来てもらったりするのが難しかった。特に、アーティストとして駆け出しのときであれば、厳しい時代だったと思います。このイベントでは、まず作品を見てもらい、そして自らの手元に置きたいと思った方には、さらに一段上の関係となる、作品を購入する。若手にとってこれは、大きな自信とチャンスをつかむ機会になります」

開催期間は、10月10日(月曜・祝日)まで。全ての会場を周遊できるチケットは3000円(前売2700円)です。

期間中にまだ週末が2回あり、週末にはトークイベントやサイン会などがおこなわれます。興味を持たれた方、ぜひ足を運んではいかがでしょうか。

全ての会場を巡るとかなりの距離を歩くことになりますが、異人館からの「山下り」をすれば、さほど負担ではありませんよ(笑)。

<この記事を書いた人>
多名部重則/広報戦略部長兼広報官、Forbes JAPAN オフィシャルコラムニスト、博士(情報学)
1997年神戸市採用。2015年にスタートアップ育成を軸にしたイノベーション施策を立ち上げる。米国シリコンバレーの投資ファンド「500 Startups」との起業家育成事業、スタートアップと市職員による新たなDXサービスの共同開発、UNOPS(国連プロジェクトサービス機関)のイノベーション拠点の誘致をリードした。2016年からアフリカ・ルワンダ共和国との連携・交流事業を推進。2020年、広報業務に「副業人材」40人を登用。2022年からは、デザイナー、動画クリエイター、ライターなどを職員として採用することで、市のデザイン業務のインハウス化に挑んでいる。

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