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映像専門家が神戸市役所で働くワケ クリエイティブディレクターの告白

「神戸市のクリエイティブディレクターです」と名刺を差し出すと、「え!市役所にそんな職種があるの?」と驚かれます。

私が神戸市役所でこの仕事をはじめてから、もうすぐ3年。どんな仕事に取り組んできたのか、その一部をお伝えしたいと思いました。


ディレクターですが、つくります!

現在、市長室広報戦略部と呼ばれる40人ほどがいる部署に、7名のクリエイティブディレクター(映像クリエイター2名、グラフィックデザイナー2名、コピーライター1名、ライター2名)が在籍しています。普通の市の職員さんたちと机を並べています。

その一員である私の仕事は、映像制作のスキルを活かして、神戸市が進めるさまざまな施策やプロジェクトを市民にわかりやすく、そして魅力的に届けることです。

クリエイティブディレクターと広告業界でいうときは、管理職のような立場を指して、現場でカメラを持って撮影するような実務にはほとんど関わりません。

しかし、われわれは違います。

オオキンケイギク駆除作業を動画撮影する筆者

オオキンケイギク駆除啓発

こちらは、私が着任してすぐ依頼を受けて制作した「オオキンケイギグの駆除にご協力を!」です。鉄道駅のデジタルサイネージで流されました。

制作期間は約半日。オファーを受けたその日に、環境局と広報戦略部の職員と車で現地へ向かい、撮影から編集まで一気に進めました。このような案件は稀ですが、報道機関レベルのスピードで仕上げることもあります。

KOBE203X|歩きたくなる未来

一方で、映像制作の専門事業者に発注し、広報戦略部のメンバーと相談しながら、それぞれの役割を分担し、じっくりと時間をかけるプロジェクトも。

未来の神戸・三宮の姿を描いたショートムービー「KOBE 203X|歩きたくなる未来」では、SONY PCLさんと制作したもので、バーチャルプロダクションなど最新の手法が取り入れられています。

私は神戸市のクリエイティブディレクターとして、プロポーザルの審査から企画提案の打ち合わせ、キャスティング、撮影、MA、完成試写などに立ち会い、構成や演出を監修しました。

神戸登山プロジェクト TV-CM

企画・構成した映像がそのままテレビCMとして採用されたケースもありました。新プロジェクトのティザー(予告)として制作した「神戸登山プロジェクト始動」です。読売テレビのCMとして1か月に約60回放送されています。

テレビCM版では、ナレーションを神戸出身のダンサー・俳優である森山未來さんにお願いできたことで、グッとクオリティが高まりました。

映像専門アドバイザーの役割

子育て応援PR動画

子育て支援に力を入れている神戸市は、2022年に子育て応援サイト「こどもっとKOBE」を開設し、基本ステイトメントを発表。

こちらはそのタイミングで制作したPR映像です。神戸出身の俳優、北川景子さんにナレーションをお願いしたバージョン(1年間YouTubeで公開し現在は終了)では、多くの反響をいただきました。

さらに、具体的なサービス内容をインタビューをベースに1分で伝えるシリーズ動画も制作しています。こちらはその最新作「こべっこウェルカム定期便」です。

きょう発表されたのですが、じつは神戸市は、2024年版の「共働き子育てしやすい街ランキング」(日経BP調べ)で、全国一位をいただきました!

順位が全てではありませんが、嬉しいです!

国際会議での施策紹介映像

変わって、こちらの映像は、2024年10月に南米・コロンビア共和国のカリで開催された国連生物多様性条約締約国会議(COP16)の会場で、神戸の取り組みを広く紹介するために制作したものです。環境局と相談しながら進めました。

急に内容も雰囲気もガラリと変わっています。

専門事業者のお目付け役

広報戦略部という部署は、神戸市役所が制作する全てのクリエイティブの司令塔の役割を担っています。なので、私自身にさまざまな所管からの相談が持ち込まれ、そのおかげで神戸市全体の多岐にわたる業務やプロジェクトを知るようになりました。

各部署の担当職員と直接コミュニケーションをとることで、それぞれの業務の背景や課題を整理し理解することも、クリエイティブディレクターの大切な職務なのです。

一方で、クリエイティブ表現が重要とされるブランディングキャンペーンやイベントを代理店や専門業者に発注するとき、予算規模が数百万円から数千万円のときは、プロポーザル(企画競争入札)が行われます。

そんなときに審査員を任されます。審査に関わった案件で採用された企画が、その後順調に展開しているのを見かけると嬉しくなります。

週3日勤務、副業OKです

この条件を聞くと驚かれるかもしれませんが、これが私のクリエイティブディレクターとしての働き方。この柔軟なワークスタイルが、クリエイティブな発想を刺激し、課題解決に向けた企画やコンテンツを生み出す原動力になっています。

「これ、一生自慢できる仕事かも」と思うくらい、やりがいも面白さもたっぷりの職務です。

私の任期は来年3月なので、わずかになりましたが、信頼できるメンバーと力を合わせて、神戸の魅力をしっかりと伝えていきたいと思います。

<この記事を書いた人>
佐々木 啓仁/広報戦略部クリエイティブディレクター・映像クリエイター
都内の制作会社でTV-CMなど映像関連の仕事に携わり2009年に独立。2022年より神戸市役所のクリエイティブディレクターとして、多岐にわたる課題に取り組んでいる。神戸にきて地酒にハマり、休日はうまい肴を求めてデパ地下を渡り歩いているらしい。

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