見出し画像

市街地から200メートルの秘境 「福寿院夢野大師」につながる山道保全を!

15年前まで「西神戸有料道路」と呼ばれていた、兵庫区夢野と名谷・鈴蘭台方面を結んでいる道路があります。

車で夢野から北上すると、途中右手に鵯越墓園の入口(南門)があるので、お墓参りで馴染みの人も多いと思います。神戸市バスや阪急バスなどの7つの系統が走っていて、交通量が多い幹線道路です。

市街地の間近にある山寺

そんな道路から、直線距離でわずか200メートルほど東に「福寿院夢野大師」という小さなお寺があります。

車では行けません。しかも、そこにつながる山道は、距離は短いのに、高低差というか起伏が激しく、この山道の入口を見つけるのが、とっても難しいのです。

山道入口がわかりにくい?!

この記事を書くために私は先週、現地に行ってみました。この辺りから山に入れるだろうと思い、ファミリーマート滝山町店の前で、グーグルマップで調べてみたのが、こちらです。

明らかに、そっちに行ったらあかんやろ!という、遠回りするコースを案内してくるので、注意が必要です。

で、見つけた山道の入口がこちら。

道路の反対側からフェンスに沿って上っていき、トンネルの上でこの道路を横切って、東に進むのが正解でした。

入口さえ判れば、福寿院まで200メートルもありません。これは楽勝と思ったのですが、実際はそうではなかったのです。

距離200mで、100m登って80m降る

そもそも、山道がちゃんと管理できいていないので歩きにくい。それに加えて標高差が私の想像を越えていました。

調べてみると、さっきのファミマが標高116メートルで、寺院があるのが128メートル。ですが、その間に最高215メートルの稜線があります。なので、ほぼ100メートルをのぼって、80メートルをくだる計算になります。

ただ、道が曲がりくねっているので、さすがに勾配45度の坂道はありません。ですが、子どものときから運動神経ゼロだった私には過酷すぎました。

神戸と思えない神秘と没入の空間

ところが驚くべきは、山道に足を踏み入れた瞬間、そこに広がるのは別世界でした。

つい2分ほど前は、ビュンビュンと車が走る都会の喧騒を感じる市街地にいたはず。

そこから少し移動するだけで、太陽の光さえ届かない、うっそうとした樹木に囲まれ、聞こえるのは小鳥のさえずりだけという、神秘空間が存在しました。

いうなれば、ジブリ映画の「千と千尋の神隠し」の世界です。

道中にあった「展望広場」という標柱に誘われるまま歩いていくと、こんどは明るい太陽光がふりそそぐ場所にたどり着きました。ただ、広場といっても面積は30平米ほどで狭いです。

ひよどり展望公園の展望広場から三宮方向の絶景

高野山、真言宗の信仰の地

そこからしばらく歩くと、目指していた「福寿院夢野大師」に到着。樹海の中にポツンとたたずむ寺院です。

華やかさは、全くありません。住職が暮らす家屋だけが、現実の世とのつながりを感じます。

境内にあるたくさんの供養塔が、何かこの寺院に伝わる歴史を語っているような気がしました。

そんな「神戸 福寿院」をインターネットで調べてみました。ところが、ネット上にほとんど情報がありません。

「福寿院」自体はよくあるネーミングです。Wikipediaで検索すると、全国各地にある10カ所の「福寿院」の説明があります。でも、この神戸の福寿院のことはまったく掲載されていません

もしかすると、この地を知っている人がほとんどいないという証拠なのでしょうか。

という理由はあります。この寺院が建立されたのは、明治から大正にかけての1910年頃といわれています。なので、寺院としてとても長い歴史を持っている訳ではありません。

その頃の神戸はどんな街だった?

ですが、ここが建立されたころの神戸はどんな街だったのでしょうか。

ちょうどその頃は、明治の開港で欧米とのゲートウェイになった神戸が、劇的な経済発展をとげていた時代です。

1890年代に10万人台であった神戸市の人口は、1920年に60万人を超えます。神戸港のおかげで、港湾・物流や製造業を中心に働く場ができ、中国・四国・九州からたくさんの人たちが、神戸に移住してきました。

そんな頃につくられた「福寿院夢野大師」は、神戸に引っ越してきたニューカマーたちの信仰の場だったのかもしれません。

クラウドファンディング/ふるさと納税 募集中!

じつはこの「福寿院」にたどり着く山道の大半は、神戸市が管理する公園です。個人的にはもうちょっと、でこぼこした急坂道を歩きやすくしてほしいと思いました。

山道からは絶景が見渡せる場所もあり、立派なハイキング道になる潜在力はあります。単なる観光スポットでなく、知る人ぞ知る場所になってほしいと思いました。

そんななか、神戸市はこの山道を整備・管理するための資金を集めるために、クラウドファンディングをはじめました。しかも、この寄付はふるさと納税になるので、住民税の減免が受けられ、寄付金額によっては自己負担が2000円で済みます。

クラファンをするか、いちど現地を行ってみるというのは、いかがでしょうか。この山道の隠れファンになってしまった私は、ひそかにクラファンをするとを決めました!

<この記事を書いた人>
多名部 重則/広報戦略部長兼広報官、Forbes JAPAN Official Columnist
米国シリコンバレーの投資ファンド「500 Startups」との起業家育成を軸にしたイノベーション施策を2015年に立ち上げた。2020年から映像クリエイター・デザイナー・ライターなどを副業人材を登用して市の広報業務の変革に挑んでいる。博士(情報学)。
じつは、妻も公務員で西区にある桜が丘中学校の教頭先生をしている。公開前のnoteの記事を読むよう言われて、いやいやコメントしているとか。

多名部 重則 Forbes JAPAN 執筆記事

<関連記事>

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!