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神戸は「坂のまち」、歩くの大変な坂道は街の魅力の源泉か?!

先月、X(旧Twitter)で投稿された「どんな大都会でも背景に山を置いたらのどかになる」という合成写真が話題になっています。

なんと、この投稿は560万以上の表示回数を記録。「これは神戸だ」という多くの引用投稿をスマホで眺めながら、ほくそ笑んでいる私がいました…


坂道って、ないほうが良い?

市街地から六甲の山々が見えるのは、神戸ならではの魅力!!

ただ、山と街の距離が近いことから、必然的に神戸市内に多く存在するもの。それは「坂道」です。

坂の上から見下ろす、開けた景色。
綺麗だな、圧巻だな、と感じる人も多いはず。

でも、正直なところ、坂道がある生活ってしんどいときもありますよね。

こちらは灘区にある兵庫県立神戸高校前の通称「地獄坂」。高校生たちは毎朝、この坂道を登校します。朝から修行です…

ただ下校時だと、目の前にあるのは絶景!

神戸の坂道、景観は抜群なのに、このまま放っておくと「ただ面倒なもの」としか感じられないとしたら、もったいないことです……。

神戸が坂のまちになった理由

そもそも、神戸ってなぜこんなに坂が多いんでしょうか。地形と歴史の観点から、神戸の坂を探ってみたいと思います。

まずは地形の話から。

言うまでもなく、神戸は六甲山系や丹生(たんじょう)山系といったさまざまな山に囲まれています。

海外の方に神戸の街の印象を聞いてみると、「山に囲まれた大都市」という感想となるそう。

それもそのはず、例えば、六甲山系の南側は、海から山への距離がほど近く、例えば、海岸部のメリケンパークから展望台があるビーナスブリッジまでの距離は、わずか約2キロメートルです。

市街地がまるで「山」に抱き込まれているよう。

そんなとき、神戸の坂道にくわしい人が「この地形は地震と土砂崩れといった大地の動きによってできた」と話していたのを、ふと思い出しました。

今から100万年前からこの辺りで断層運動が起きました。東西からギュッと押されて、地表にできたしわのように高く盛り上がったのが六甲山地です。逆に沈み込んだのは大阪湾。これが「六甲変動」と呼ばれる地殻の動きです。

大阪湾はもともとは湖だったのですが、この変動で海とつながったらしいのです。

その六甲山地から流れ出る川が、土砂を運んで積もらせて扇状地をつくります。そこに神戸の街ができました。

当たり前なようですが、今はアスファルトで固められた坂道も、もとは大地の動きが作ったものなんですよね。

続いて歴史の観点です。

古くからこのあたりは国際貿易の拠点でした。1868年の明治開港をきっかけに、近代都市として整備されていき、神戸は貿易港としてめざましく発展していきます。

昭和になっても、人口の増加は止まりません。はじめは狭い扇状地だけに住んでいましたが、やがて不便を覚悟しながら斜面に住むようになり、ついに山麓部にまで住宅をつくりました。

坂のまちはどれくらい珍しい?

神戸みたいな坂のまち、どこにでもあるのでは?と、思いきや、じつは神戸クラスは、かなり珍しいようです。

VS 長崎

坂があるまちの代表格と言えば、長崎市。「オランダ坂」が有名です。

長崎の市街地を囲むように山が連なる「すり鉢状」と呼ばれる地形で、歩けば坂道にぶつかる、なんて言葉があるくらいです。

それに較べると神戸は、六甲山地の南にある市街地では、海から山に一方向に坂になっていますね。

VS 横浜

神戸と似ている横浜市。神戸と同じ港町で、じつは「坂が多い街」といわれているそうです。複雑な地形で起伏に富んでいるのと、名前が付いた坂が多いのが理由のようです。ただ、横浜市の最高峰は標高157メートルの大丸山(おおまるやま)。六甲山最高峰の931メートルとは比較になりません。

全国それぞれの街にそれぞれの魅力がありますが、神戸ほどの大都市で、これだけの山を抱える都市は、どうやらないようです。

VS 仙台&広島&福岡

ただこう書くと、白黒をはっきりさせたくなったので、数値でお示しします。

人口が100万人以上の海に面した都市でいうと、仙台、広島と福岡には、六甲山を超える標高の山があります。ところが、各市の最高峰の標高と市内海岸から直線距離を測るとこうなります。

仙台:最高峰 1500メートル、距離 38キロ
神戸:最高峰   931メートル、距離   7キロ
広島:最高峰 1050メートル、距離 14キロ
福岡:最高峰 1055メートル、距離 17キロ

圧倒的に坂が生まれやすい地形であることは、誰が見ても明らかではないでしょうか!(もはや自慢…)

「坂のまちサミット」を開催

ここまで色々な観点から坂を掘り下げてみましたが、まさに、坂道は「神戸らしさ」を構成する重要なパーツだと思います。

とはいえ、上るも下るも歩くには大変なのは間違いありません、でも、魔法でも使わない限り、坂を消すのは不可能です。

となれば、坂道にスポットライトを当てて、もっと暮らしやすく、魅力的にするには、何ができるのか?

そんな思いからはじまったのが「坂のまち神戸プロジェクト」なのです。

そこで坂の魅力を話し合う「坂のまちサミット」が、11月23-24日に神戸市中央区の海外移住と文化の交流センター(JR元町駅から北に徒歩約15分)で行われます。

先ほど話題にした長崎、横浜などからやってきた市職員や坂の専門家が集まって、坂のまちをどうしていく?ということを議論します。

坂道には気づかれていない魅力がある!そんなことを楽しく語る人たちの、ちょっと酔狂なお話も聞けるかもです。

冒頭のX投稿で触れたように、山が見える、坂があると、「のどか」を感じるのかもしれませんね。

最近は朝晩はすっかり肌寒くなりましたが、日中は過ごしやすい季節です。この週末に神戸の「坂」を感じてみませんか!

<この記事を書いた人>
はし/企画調整局政策課
今年4月から企画調整局政策課に配属になり、謎めいた「坂のまち神戸プロジェクト」を担当。まずは神戸市内の坂の視察に明け暮れた。島根県の平野育ちのため、神戸の坂を上るたびにヒイヒイ言っているが、足腰が鍛えられた結果、筋肉痛にはならなくなったらしい。
それから7カ月、プライベートで市内外の坂を見て回る坂好きに成長?し、先月は尾道の坂を堪能してきた模様。

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