美しいのに破壊的! オオキンケイギク掃討大作戦
コスモスによく似た花びらで濃い黄色い花を、5月から7月ごろに咲かせる植物があります。名前はオオキンケイギク。見た目はきれいな花なのですが、じつは日本の自然にとって大きな脅威となっている外来種なのです。
名前だけ見るとは、昔から日本にあった花のように思えますが、北アメリカが原産で、明治のはじめ頃に観賞用として輸入されました。
しかも、戦後に道路わきの斜面や河川の堤防を緑化するために全国各地で植えられました。冬になっても緑のままで、放っておいても枯れない強い生命力があったからです。
ところが、これが大きな間違いでした!
繁殖力が強いオオキンケイギクは、全国のあちらこちらで野生化して増え続けてしまったのです。
特定外来生物に指定された理由
遅ればせながら国は、2006年に、日本固有の生態系に悪い影響をおよぼす植物として、外来生物法の特定外来生物に指定しました。
外来植物でもきれいな花を咲かせるのなら、別に取り締まらなくてもいいのでは、と思うかもしれません。
ですが、そうではありません!
オオキンケイギクは恐るべき繁殖力を持っています。種だけでなく、根を横に伸ばすとそこから地上に茎が育って増えていきます。あっというまに、見渡せる風景すべてがオオキンケイギクになってしまうことも…
すると、昔から河川敷や田んぼのあぜ道に生えていたカンサイタンポポやノアザミなどの日本の固有の植物が、オオキンケイギクにとって代わられてしまうのです。そうなると、元々の植物に慣れ親しんでいた昆虫や、それを食べていた鳥などの生態系への影響がでかねません。
なので、特定外来生物に指定されました。今では、緑化工事に使うのはもってのほか、庭やプランターで栽培することも禁止されました。もし仮に、勝手に自宅の庭に生えていても、それを枯らす前にほかの場所に移動させることすら禁じられています。
美しく、したたかなる花
特定外来生物に指定された17年前、ニュースになったかもしれませんが、今となっては誰もオオキンケイギクのことを知りません。何も分からないまま、庭で育てている人もいます。
そこがこの花のしたたかなところ。
華麗でいろどりの良い花なので、自然に生えている植物と思って、自宅に持ち帰り、庭などに植えてしまう人が存在します。美しさを武器に、人間をうまく使って、分布を拡大させているのです。
神戸市が進める広報・啓発
これはマズイと考えた神戸市は、まず何より、オオキンケイギクの危険性をたくさんの人に届けようと、2年前から情報発信を強化しました。
街なかにある掲示板にポスターを貼り、駆除方法を解説する動画をつくって、JRや地下鉄の駅などでデジタル広告として放映しました。
それだけでなく、神戸市長田区の元苅藻島クリーンセンター(ごみ焼却場)の敷地内にある「外来生物展示センター」では、とおり一辺倒の説明では記憶に残りにくいので、オオキンケイギクの切り花、染めものなど、インパクトのある展示をしています。
ですが、神戸市がこれだけ啓発に力を入れても、全く知らないという方がまだ大多数です。
明石川での職員による駆除活動
そこで今日(6月28日)、神戸市職員のなかから希望者を募って、西区の明石川の河川敷で、オオキンケイギクの駆除作戦を実行しました。明後日の30日も行い 、2日間で各部局から職員約80人が参加予定です。
この活動は、近くにある玉津第一小学校(通称「玉一(たまいち)」)の児童や保護者らがつくった「玉一アクアリウム」という団体の活動と連携しています。この団体は、明石川で魚や植物の調査や外来種の防除などをしていて、オオキンケイギクの駆除も手掛けていました。
ところが、群生している面積が大きくて、とても手に負えないということを聞いたので、市職員を投入しての大作戦を敢行することになりました。たくさんの人に関心を持ってもらうための話題づくりになるはずです。
オオキンケイギク駆除のコツ
今後は、一般の方向けにオオキンケイギクの防除講習会を開催する予定です。皆さんの手を少しでもお借りできればと考えています。
オオキンケイギクは、根ごと抜き取ることがもっとも良い防除方法ですが、根がはるので作業がなかなか大変です。ただ、花が咲いている時期に花を摘み取るだけでも、種ができないので増えていくことが防げます。
もしどこかで、この花を見つけることがあれば、周りの人に危険な外来種だと教えてください。多くの人に知ってもらうことが、駆除につながります!
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