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居酒屋メニューの「鳥刺し」って、じっさいどぉなん?!

12月です。忘年会の季節なので、職場だけでなく、友達や家族で集まっての外食が増えますね。

この時期にドキドキして過ごすのが、保健所で働いている私たち。というのは、居酒屋やレストランで食事をしたあと、体調を崩す人たちが増えるからです。

そこで、宴会シーズンを台無しにしないために、「居酒屋で何を注文するべきか?」を、私たち保健所職員が議論しました。その議事録をこっそりお伝えしようと思います!


まず、とりあえずの一品

職員A:会議の進行は配属1年目の私が務めます。まずは「とりあえず一品枠」に何を選ぶか? 枝豆、トマト、ポテトサラダが候補です。

職員B:どれもシンプルで安心して食べられるね。個人的には枝豆が好きだけど、みなさんどうでしょうか?

写真:枝豆

職員C:私も枝豆に一票!

職員A:どれも大丈夫そうです…

次に「お刺身」は何がいい?

職員A:まぐろ、明石の鯛、鳥刺しが候補です。さっきよりだいぶ議論が必要と思いました。

職員B:問題は「 鳥刺し」ですね。カンピロバクターの食中毒リスクが高いですよ。潜伏期間が1-5日間、2-3日で発症する人が多いです。高熱・激しい下痢で苦しみます。しかも、全身麻痺になるギラン・バレー症候群につながる恐れも…

職員C:じつは 私も昔は食べていましたが、保健所に配属されていろいろ知ると、怖くて食べるのをやめました!

鮮度の良い「朝引き」だと安全?

職員A: 「鳥刺し」「鶏たたき」は、「朝引き」と鮮度をウリにしていたりします。新鮮だと安全ってことですか?

職員C:違いますね。カンピロバクターは鶏の腸管内にいる食中毒菌で、鶏肉処理の工程で鶏肉に付着します。現在の処理技術ではカンピロバクターを100%取り除くことはできません。お店に売られている鶏肉の70%にカンピロバクターがいるという調査結果もあります。なので、鮮度が良くても危険なのは同じです。

職員B:「新鮮だから安全」は、昔の「魚の刺身」と混同しているのだと思う。というのは、魚の刺身での食中毒は腸炎ビブリオが原因で、この菌は増殖スピードが速い。時間が経つほど危険でした。でも、2001年に食品衛生法令が一部改正され、明確な基準が定められました。今では食中毒が起きることはめったにないですね。

職員A:鳥刺しは新鮮でも危険…、でも、南九州地方の人たちは、「鳥刺し」が好きで、よく食べていると聞いたことがありますが…

カンピロバクターのせん滅は?

職員B:たしかに南九州地方は鶏肉を生で食べる習慣があり、県が独自に生食用の鶏肉の加工方法や食中毒菌の目標基準を決めています。それでも、カンピロバクター食中毒は起きています。

職員A:やっぱり100%除去することはできないんですね。

職員B:でも国では、養鶏場の段階からカンピロバクター汚染低減を研究しているんですよ。卵から孵ったばかりのひよこは、カンピロバクターを持っていないのに、飼育しているといつの間にか感染しているのです。おそらく、えさや飲み水などを介して急速に広がると考えられてます。そこで、養鶏場にカンピロバクターを入れない対策が研究中です。もしも鶏の腸管内にカンピロバクターがいなくなったら、将来的には、もしかして? もしかすると…

職員C:笑。

職員B:まあ、私も、鳥刺しは食べないかな。まぐろと明石の鯛のお刺身の二択で!

「お肉」は何を食べましょう?

職員A:では、「お肉枠」に移ります。ハンバーグ、角煮、焼鳥、つくねから選びたいと思います。ただ、どれも十分に加熱されていれば、安心だと思います。

職員C:そうですね。でも、焼鳥から、赤い血が染み出ていたら、勇気をもって焼き直しをお願いしましょう。あと、つくねはね、カンピロバクターが中まで練りこまれている状態だから中心までの加熱が必須ですよ!

では「冬の味覚」は?

職員C: はーい、次「冬の味覚枠」いきましょう。生牡蠣、牡蠣のバターソテー、焼きガニが候補ですね。どれも好きだー

職員B:牡蠣は、海水に含まれるノロウイルスを蓄積するから、生食は注意が必要だね。ノロウイルスも加熱で死滅するけど。

職員A:ノロウイルス食中毒の原因は、牡蠣よりも症状のない調理者からの汚染がほとんどと聞きましたが。

職員C:それそれ!不顕性感染って言うのですが、症状がないものだから、自分がノロウイルスを排出してると気づかなくって、食品を汚染して食中毒を起こしてしまうのです。だから給食室の調理員さんたちは、自主的な取り組みとして生牡蠣を食べるのを禁止しているところもあるんですよ。

職員B:生食用の牡蠣は菌の基準が法令で定められています。でも細菌じゃない、ノロウイルスのことは定められていないんだね。

宴会メニューの決定!

ということで、職員Aこと私は、ある居酒屋を次のメニューで予約しました。

・まず一品: 枝豆、ポテサラ
・お刺身 : まぐろ、明石の鯛
・お肉  : 焼鳥、つくね
・冬の味覚: 牡蠣のバターソテー、焼きガニ
・揚げ物 : 揚げ出し豆腐
・ごはん : 焼きおにぎり

フツ―の居酒屋メニュー、、、と思われるかもしれません。でも、これできっと安全と安心を手に入れることができます。参考にして頂ければ!

<この記事を書いた人>
ハイジ/健康局食品衛生課
転職で神戸市役所にやってきました。食品衛生課に配属されて1年目。食中毒予防“啓発”を担当しますが、“啓発”っていうのもね、、、との思いでnote記事に挑戦。長い文を書くのが苦手なので、議事風景にしてみました。

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