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市が県から独立? 神戸も無関係じゃない「特別市」とは

ことし10月、神戸市の人口が150万人を割り込みました。

日本全体の人口が減少傾向にあるので仕方ない面はありますが、やっぱりちょっと寂しい気持ちは否めません。

これからの20年、30年で、都市のあり方は大きく変わっていくんだろうなぁ……。そう感じていたところ、「多様な大都市制度シンポジウム」なるものが開催されると聞き、神戸のこれからを考えようと行ってきました。

広報戦略部ライターのゴウがお届けします。


「政令指定都市」は通称だった?

いきなり、ちょっとしたトリビアを発見。

神戸市は、政令指定都市ですよね。この「政令指定都市」という呼び方、実は通称なんだそうです!

厳密にいうと、地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のことで、法律に「政令指定都市」という単語が出てくるわけじゃないんですって。

だから、一般には「政令指定都市」「政令市」と言われるものの、行政の中の人たちは「指定都市」と呼ぶそうです。

知らなかった~。せっかくなので、ここからは「指定都市」と表現しますね。

指定都市制度がはじまったのは、1956(昭和31)年。最初は横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市の5都市だけでした。

人口要件も最初は100万人でしたが、時代に合わせて70万人、50万人と変遷。都市数も増えて、現在は20都市あります。

指定都市は、独自に児童相談所を置いたり教員を採用したりと、分野によっては都道府県なみの権限を持ちます。

たまに兵庫県の統計を見ると「神戸市は除く」と書いていたりしますが、それは神戸市が指定都市で、独自の行政をおこなっているからなんですね。

この20都市は「指定都市市長会」というネットワークを作っていて、神戸市の久元喜造市長は現在、指定都市市長会の会長です。

新たな大都市のあり方「特別市」とは

シンポジウムではまず、久元市長が講演。
神戸市を含む大都市の歴史を振り返りながら、これから制度化をめざす「特別市」について説明しました。

ん? 特別市? 初めて聞いたワードですが……。
それもそのはず。まだ日本に「特別市」はないんですから。

ここで簡単に、日本の大都市の形態(あり方)を整理しましょう。

①指定都市制度

いわゆる「政令指定都市」で、上で説明した通りです。神戸市も含まれます。

②特別区設置制度

東京都の23区制がこれに当たります。
記憶に新しい「大阪都構想」は、この制度を利用しようとしたものです。大阪市と大阪府が一体になって「都」となるので、大阪市は消滅します。

この2つは、すでに制度として確立されています。

制度があるから、大阪は住民投票をしたんですね

③特別市制度

そして「特別市」は、まだ法制化されていません。
市が消滅する大阪都構想とは反対に、市が道府県から出ていく、つまり「独立する」という考え方です。なんか映画の世界みたい……。

指定都市市長会のHPより

指定都市制度の最大の課題は、「二重行政」です。県と市が同じようなことやってるよね、と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

②特別区設置制度のように「市が消滅して(道府県と一緒に)都になる」という選択肢があるのなら、同様に「市が道府県から独立する」という選択肢もあっていいんじゃない?

だから制度化して、そのうえで各自治体が状況に合わせて選べるようにしようよ!ということを、指定都市市長会はめざしているのです。

特別市のことを聞いたとき、最初は「大阪都構想とどう違うの?」と思いましたが、二重行政の解消という目的は同じでも、そのための手段が違うってことなんだ!

神戸市は「特別市」になりたいの?

特別市のことを知って「えっ、じゃあ神戸市は兵庫県から独立するの?」と焦った私。

安心してください。急に何かが変わったりはしません。

指定都市市長会としては、特別市制度の制度化をめざします。
でも制度化されたとしても、それを神戸市が活用するかどうかは別問題。

まずは制度化が先、といったところでしょうか。

ちなみに現時点で「特別市をめざす」と明言している指定都市もあるんですって。たとえば、神奈川県の横浜市です。

シンポジウムでは・・・

こんな「大都市制度」なんていう難しいテーマで、一般向けにシンポジウムをするのは初めてでしたが、客席は7割ほど埋まっていました。

パネルディスカッションのとき、広場づくりを専門とする山下裕子さんは「火曜日の午後にこのテーマでこれだけの人が集まること自体、神戸は大都市だと感じます」とコメント。

「でも、こういうホールだと知っている人しか来ない。興味のない人にも知ってもらうためには、放っておいても人が集まる『サンキタ広場』などでこういう催しをしては」

という意見には、たしかに!と唸りました。

会場からは「神戸は大都市といえるのでしょうか。どんな大都市をめざすのでしょうか?」と厳しい意見も飛び出し、都市の、そして神戸市のあり方は過渡期にさしかかっていることを感じます。

一人一人が、神戸のあり方を考える

特別市制度が実現すれば、神戸市も特別市をめざすかどうか、考えるときがくるかもしれません。

大阪都構想やスコットランド独立の投票を「すごい究極の選択や……」と思いながら見ていましたが、それが「自分ごと」になることもあり得ます。

都市って大きい存在ですが、一人一人の人間の集まりにすぎません。

どんな人生を送りたいかを考えるのと同じように、どんな神戸に住んでいたいんだろう?という問いを、頭の片隅に置いておきたいですね。

〈この記事を書いた人〉
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。
旅とバーとパンダが好き。

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