神戸市タワマン規制|三宮にタワマンはいらない! 神戸の都市経営戦略
神戸市は2020年7月、三宮を中心に、地区内において住宅等の新築を規制する「都心機能誘導地区」を設定しました。
これによって、都心にタワーマンションを建てることが困難に。この決断の裏側には、神戸市の考える都市経営戦略がありました。
全国的に人口減少が報じられている中、神戸市の人口も2011年をピークに減少しており、近く150万人を割り込むことが予測されています。
人口が減っているのであれば、タワーマンションを作って、人を呼び込めばいいんじゃないの?なぜタワマンを規制するの?とも思えるこの取り組み。神戸市の考える戦略について、広報戦略部のオオニチが紹介します。
都心機能誘導地区ってなに?
難しい言葉ですが、簡単に言うと、都心において商業施設やホテル、オフィスなどのいわゆる「都市機能」を呼びこむために、住宅等の新築を一定程度、規制するエリアです。
都心機能誘導地区は、2つに分けられます。
・1つ目が都心機能高度集積地区
三宮駅周辺において、商業・業務などの都市機能を重点的に誘導するために、新たな住宅等の建築を禁止
・2つ目が都心機能活性化地区
上の三宮駅周辺を除く「新神戸駅周辺~神戸駅周辺エリア」において、都市機能と居住機能のバランスをとるために、住宅等として使える床面積の上限を設定
要するに、三宮駅周辺では住宅等の新築を禁止し、その他のエリアではこれまでよりも厳しい規制をかけた、ということになります。
タワマン規制、実際どうなった?
2020年7月以降、都心機能誘導地区にタワーマンションは建てられていません(規制開始前に着工したものを除く)。
また、JR三ノ宮新駅ビルをはじめとする、商業施設・ホテル・オフィスなどの都市機能を備えた民間ビルが計画されてきており、成果が少しずつ見え始めています。
新しいホテルや商業施設……数年後に三宮を歩いている自分を想像すると、にやにやしてしまいますね。
一方で行政マンとしては、人口減少が進んでいる神戸市にとって、1000人単位の増加を期待できるタワーマンションの建設は人口減少の解決策としてすごく魅力に感じるのですが……。
なぜ神戸市は、人口減少対策の切り札ともなりうるタワーマンションの建設を制限したのでしょうか?
神戸市の考える都市経営戦略
その答えは、神戸市の考える都市経営戦略にありました。
これまで神戸の都心には、タワーマンションなどの大規模マンションが多く建設されてきました。人口が増えて一見いいことのようですが、その分、本来都心に求められる都市機能を立地させる余地が減ってしまい、「働く場」や「消費の場」などの創出・更新を阻害してしまう側面もあります。
また、極めて狭いエリアに人口が集中することによる、小学校の過密化や、災害時の避難場所・備蓄の確保などの課題も指摘されています。
とはいえ、定住人口ももちろん大切。そこで、都心の狭いエリアに人口を集中させるのではなく、神戸ならではの特徴を活かして、各地域にバランスよく人口を呼びこもうとしています。
まず、神戸には今まで築き上げた公共交通網があり、その沿線に市街地が形成されてきました。
2019年よりこれらの駅周辺のリノベーションを進めています。まち・くらしの質を高めることで、神戸に人を呼び込もうというわけです。すでに西神中央駅や名谷駅では、生まれ変わった姿が現れ始めています。
自分の住んでいる駅前がきれいになるのはうれしいですよね。個人的には特に西神中央駅の「なでしこ芸術文化センター」の夜景が好きで、もはや神々しい!!
また、六甲山を越えると農村地域が広がっていることも神戸の特徴です。
農村地域には、いわゆる里山環境を守るために新築や建物用途に制限がありますが、他都市から移住しやすくしたり、古民家カフェをつくれるようにしたりするなど、規制緩和を進めています。
さらに、里山での移住体験施設の整備、里山・農村に特化した「空き家おこし協力隊」による利用可能な空き家の発掘など、ソフトとハードを組み合わせた地域のにぎわい創出に取り組んでいるところです。
このように、都心には都市機能を充実させつつ、都心以外も魅力を高めて人口を誘引することで、まち全体でバランスをとって持続性を高める。これが神戸市の都市経営戦略です。
今回、タワーマンション規制を題材にしたところ、いま述べたような制度の裏側にある様々な施策が見えてきました。
制度開始から3年という時間はまちづくり視点ではまだまだ短く、それと同時に、これから長期的な視点をもって神戸市と関わっていきたいと改めて感じることができました。バラバラに見える取組みも実は繋がっていたりするんだなあ・・・。
読者のみなさんが数年後の三宮を見る時には、都心三宮だけでなく、郊外の駅前広場のにぎわいや、農村里山地域の豊かな自然も合わせて見てもらうとまた違った見え方がしておもしろいかもしれません。
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