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神戸市長が若手職員にまち歩きの心得を伝授 「野良猫になれ!」の真意

神戸市役所の若手職員、がんばってます。

去年の10月から始まったプロジェクト「地域課題の調査チーム」の成果報告会が、3月13日に開催されました。

「地域の課題調査チーム」とは、地域協働局が係長級以下の職員を対象に有志を募集したプロジェクトです。

非公開の会だったんですが、とても興味深いことが多かったので、公開できる範囲でレポートしますね。広報戦略部ライターのゴウがお伝えします。


18チームがフィールドワーク

神戸市役所は2023年度から、役所の組織として「地域協働局」を新設しました。「局」は市役所で一番大きい単位で、局→部→課となります。

その「局」を新たに作ったんですから、今まで以上に(市全体ではない)「地域」にも力を入れよう!ということですよね。

今回のプロジェクトも、その取り組みの一つ。地域を実際に歩いて住む人の声を聴いて、「地域を見る力」を職員に身につけてもらいたい狙いがあります。

担当によっては「ずっと内勤で市民に会うことがほとんどない……」という業務もありますもんね。

1チームは3~5人で編成され、18チームが集まりました。

区役所の職員が集まって仕事の延長のような形で参加するチームもあれば、普段はまったく違う担当だけれど、同期や知り合いを誘って応募したチームも。

それぞれのチームが調査する小学校区を選び、以下の18地域が調査対象となりました。電車の駅から、少し距離のあるエリアが多い印象です。

灘の浜(灘区)、なぎさ(中央区)、和田岬(兵庫区)、北五葉大沢箕谷花山星和台(北区)、妙法寺・横尾高倉台(須磨区)、名倉(長田区)、つつじが丘狩口台・神陵台(垂水区)、東町太山寺神出岩岡小寺(西区)

調査に神戸データラウンジを活用

各地域のことを事前に調べるにあたり、職員が使ったのが「神戸データラウンジ」というデータベースです。

神戸データラウンジ、初めて聞く単語です。

自治体は住民基本台帳や税金など、個人の大切なデータを持っています。でもその業務にしかデータを使わないため(大事!)、これまでは何か政策を立てるときに基準とするデータは外部から入手したり、分析も外部に依頼したりしていました。

「それを自前にできるようになろう!」と導入したのが、神戸データラウンジです。

税金など元となるデータを抽出して個人が特定されないように加工し、職員が閲覧・データ分析できるようにした仕組みです。

職員が閲覧できる神戸データラウンジのデモ画面

これらのデータのうち、国勢調査の人口統計や就業状態、移動状態などは神戸市だけでなく全国のデータを一般向けにも公開しています。

▼こちらからご覧いただけます。

この取り組みが評価され、2022年にはData StaRtAwardで総務大臣賞を受賞しました。

ちょっと、これめっちゃすごくないですか? これを日常的に使うことで、ごく普通の事務職員もデータを扱うリテラシーが大きく上がるということですよね。

地域で見つけた課題やアイデアは?

では、報告会ではどんな事例があったのでしょうか。
たとえば、和田岬エリア。

データ分析をしたところ、滞在人口が多いのは「平日の昼間」で、ノエビアスタジアムで試合がある日を除き、土日も人口が少ないことがわかりました。

「スタジアムやこべっこランドという主要施設があるのに、その目的が終わったらすぐ帰ってしまう。周辺の滞在時間が短い」

実際に地域の人たちに聴いても「もっとたくさんの人に来てほしい」との声が多く、これが和田岬エリアの課題だと設定しました。

発表スライドより

そこで、このチームが提案したのは「スタジアムのある街、和田岬」構想。

今よりもっと、スタジアムやスポーツと地域を一体化させた地域づくりをしてはどうか?というアイデアです。

あくまでアイデアなので、決定事項ではありません

ほかにも、駅からは離れているもののスーパーや公園などが充実している団地群には、シェアモビリティを導入して回遊性を上げ「15分タウン」(15分圏内で生活に必要なものが揃うまち)としてPRしては?という提案もありました。

発表された提案のうち、良さそうなものは今後、施策として実現する可能性があるということです。

まち歩きは野良猫のように?

これらの報告を聞いていた久元喜造市長。久元市長って、日ごろからかなり「まち歩き」をしています。

意外かもしれませんがけっこう庶民派で、Instagramをやっていたときは、町中華や定食屋でのランチの写真がよく見られましたよね。

そんな久元市長は、調査チームに参加した職員にこんなメッセージを送りました。

「地域で見たこと、感じたことを抽象化して『ここはこんな地域だ』とせずに、個々の具体的な事実のままに受け止めること」

「まちを歩くときは、高齢化や人口減少など役所で議論している課題を全部忘れて、市の職員であることを忘れて、もっと言えば人間であることも忘れて、野良猫のような視点になってみることが大事」

なるほど!それだけミクロな視点を持って地域に「入り込んでいく」ということなんですね。

参加した職員も、発表の中で「人口が減っているからもっと寂れているのかと思ったが、実際に行ってみると住みやすそうだと感じました」と言っていて、データや机上の議論からは見えない“肌感覚”をつかんだようでした。

こんなふうに、まちに飛び出す職員がたくさんいる事実に、一市民として頼もしいなと思えました。

みんな、これからの神戸をよろしくね!
……と、先輩風を吹かせてみたアラフォーのゴウでした(笑)。

〈この記事を書いた人〉
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。旅とバーとパンダが好き。

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