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お墓のあり方に変化? 鵯越の合葬墓にみる新たな選択肢

お盆の時期がやってきます。皆さんはお墓参りに行く予定はありますか?

最近になって「墓じまい」という言葉を聞くようになりました。お墓から遺骨を取り出して別の場所に移して、元のお墓を撤去することをいいます。家族や親戚がお墓から離れて住むことが増え、世話ができなくなくなった人が増えています。

そんななかで、神戸市は、新たなお墓の形式として「合葬墓(がっそうぼ)」を提供しています。これは、ほかの人のお骨と一緒におさめられる大きなお墓で、後継者を心配する必要がなくなります。

この記事では、「鵯越(ひよどりごえ)合葬墓」を取り上げて、お墓のあり方がどう変わっていくのかを考えたいと思います。

墓じまいを進める人が急増中

神戸市内に4つある市立墓園で、7年ほど前からお墓の撤去件数が新規貸付の件数を上回っています。死亡者数が増えているのに、お墓が減っているのです。これは、墓じまいが急速に進んでいる証拠です。

そこで、インターネットを使って、「現在持っているお墓を将来にわたって維持していこうと考えているか」というアンケートを行いました。

結果に驚きました!「お墓を守るつもり」と答えた人が2015年の60.7%から2022年の28.2%に半減しました。その代わり「わからない」と答えた人が40.3%と最多でした。

お墓は家族や社会とのつながり

お墓への考え方が変わってきた背景や理由を探るために、神戸市は有識者会議を開きました。お墓の研究者や地域の代表の立場の人などが集まって、お墓のあり方について話し合いました。

<有識者会議での意見>
寿命が延び、祖父母や子や孫が同居しないという傾向が、お墓を継承する意識の変化に影響を与えていると考えられる。
核家族化が進み、親が亡くなって50-60代になって初めて仏壇やお墓の世話をするという事例が増えている。
地域や家の慣習により行われてきた葬送を自ら考える時代に変化していると考えられる。
誰しもが安心できる場所に葬られる・納められることが大切であるが、家族がいない、金銭的な問題で墓地を持てない方も今後さらに出てくると考えられる。

お墓は単に遺骨をおさめる場所ではなく、家族や社会とのつながりを表すものです。しかし、そのつながりが希薄になってきた現状を私たちはどう受け止めればよいのでしょうか。

神戸市の鵯越合葬墓の特徴

年月が経ち供養する人がいないお墓は、「無縁墓」と呼ばれます。そうなると、墓石は汚れて雑草におおわれ荒れ果てた姿に。また、管理費を払ってくれる人がいなくなると撤去されることもあります。

はっきり言って、自分のお墓がそうなると思うと、あまりにも悲しすぎます。

この問題を無視できないと考えた神戸市は、2018年に「鵯越合葬墓」を開設しました。

鵯越合葬墓は、総面積200ヘクタールで西日本最大級の鵯越墓園にあります。明石海峡大橋や神戸の街並みが見渡せる絶景スポットに位置し、2万体の遺骨がおさめられます(2023年3月までに約1万700体を収納許可済)。

市立のほかの墓園と違って、65歳以上であれば生前の申込も可能です。毎年たくさん申し込みがあり、人気を集めています。

慰霊碑の前の献花台から参拝できます。

最初に定額の使用料を支払えば、そのあとは使用料が不要。どの宗教・宗派でも利用でき、合葬するとお骨を取り出せないのですが、神戸市が管理を続けるので、お墓の後継ぎを心配する必要はありません。

多様化するお墓のニーズへ対応

お墓が無縁化してしまう不安や、子や孫に負担をかけたくないという思いへの答えの一つが合葬墓ですが、そのほかにも新たな受け皿があります。神戸市の有識者会議では、新たに「期限付きの墓地」と「樹木葬型の合葬施設」の整備を検討するように提案されました。

期限付きの墓地

子や孫に負担をかけることなく、最初に使用期限を定めて、その期限がくると合葬施設へ遺骨を移し替える墓地です。期限まではこれまで通りにお参りでき無縁墓になってしまうリスクがありません。

樹木葬

墓石の代わりに樹木を墓標としたお墓。合同で遺骨を埋蔵する合葬方式との組み合わせもあります。自然へ回帰するという考え方から好まれています。

エンディングプラン・サポート事業

一方で有識者会議では、家族の有無や経済状況等にかかわらず葬られる機会を提供できるよう、頼れる身寄りがない人を支援する必要性も指摘されました。

自分の葬儀やお墓のことを生前に決めておき、それを行政が支援する仕組みを「エンディングプラン・サポート事業」と名付けて取り組んでいる自治体もあります。そこで、神戸市でも具体化を目指して検討を進めることにしました。

自分や家族が亡くなったらどうするかは、一人ひとりに関わる大切なテーマです。神戸市は、これからも多様化するお墓のニーズに合わせて、さまざまな施策を展開していきます。

<この記事を書いた人>
墓守(はかもり)/健康局斎園管理課
ことしの4月から現職場に配属。お墓といえば四角い墓石のイメージしかないなかで「市立墓園のあり方を検討する有識者会議」の運営に奮闘。墓じまいが進んでいて、樹木葬などの存在を初めて知って衝撃をうけたらしい。
毎日、お墓のことばかり考えているので、三宮のフラワーロードのスポンサー花壇が、樹木葬に見えてしまうのが悩み。今年は自らも墓参りに行く誓いを立てた模様。

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