地下鉄の駅トイレを全て「洋式」に 神戸市役所の和式伝説が終焉!
「神戸市民は、和式が好きなんですわ」
10年近く前、神戸市役所のとある幹部職員が、久元喜造市長にこのように話したそうです。
というのは、神戸市が管理している地下鉄の駅をはじめ、小中学校や公園、図書館、区役所などにはトイレが数多くあります。ところが、和式トイレにが多いことに疑問を感じた久元市長の問い掛けに、その幹部職員はこのように答えたのでした。
10年前とはいえ、さすがに利用者の気持ちとは、だいぶかけ離れていたのではないでしょうか?
全て洋式トイレにしていいのか?
そこで神戸市では、2016年から公共施設のトイレを洋式にする工事を進めています。
ところが、このまま全てのトイレを洋式にして、和式をゼロにしても良いのでしょうか。これには若干疑問があります。
そこで、2022年12月に神戸市に住んでいたり働いていたりする約6000人が登録している「ネットモニター」という仕組みで、アンケート調査を行いました。
アンケートでは、「公共施設(小中学校以外)のトイレを改修または新規設置する場合、和式トイレがあった方がいいと思いますかと聞きました。すると3413人から回答があり、「和式トイレがあった方がよい」と答えたのが20.8%、「すべて洋式トイレでよい」の答えが70.8%でした。
自由記入欄では、和式も残すべきという人からは「公共施設の場合、洋式だけでは衛生面が気になる」や「 便座を除菌できる消毒用のスプレーなどがあれば良いが、なければ便座に座るのに抵抗がある」など衛生面に不安があるという意見がいくつかありました。
神戸市営地下鉄トイレの歴史
そんななか、神戸市交通局ではすべての駅のトイレを洋式化することを決めました。衛生面のことも考えて、すべての便器にシャワー式の温水洗浄便座と便座クリーナーも設置します。
1977年に開業した神戸市営地下鉄の駅では、当初から洋式と和式の両タイプが設置されていました。
そして、これまでもトイレ改修工事でだんだんと和式はその数を減らしてきました。清掃がやりにくく、障害者や高齢者にとって使いにくいからです。
ですが、利用者には和式が良いという人もいたことから、男女トイレに一つずつ和式を残していました。
ただ最近は、洋式トイレがますます増え、神戸市内の学校などでも和式は姿を消しつつあります。外国人の利用も増えています。そこで、思い切って全て洋式にする決断をしたワケです。
明るくクリーンなトイレに!
鉄道の駅のトイレは汚くて苦手という人が多いと思います。そこで、三宮駅や名谷駅、西神中央駅といった乗降客が多い駅から、トイレの便器だけでなく、内装や壁、手洗い場、照明までを一新して、明るくクリーンなトイレに生まれ変わらせる計画が進んでいます。
壁面は駅らしくない木目調。照明は間接照明も組み合わせ、ダウンライトも使って、落ち着いた雰囲気にします。三宮駅では女性トイレの個室の広さも大幅にアップさせます。
すでに地下鉄海岸線の和田岬駅では、2023年2月のこべっこらんどのオープンにあわせて、トイレの改修工事をおこないました。
清掃も今まで以上に頑張ります!
一方で、トイレの改修工事をしても、そのあときれいな状態を維持しなければ、意味がありません。
ただ、三宮駅一駅だけみても、1日の利用者はおよそ12万人。トイレを使う人の数はもしかすると1万人以上かもしれません。なので、男女合わせてトイレが14基ある三宮駅では、じつは1日8回以上掃除しているのです。
駅のトイレから不快な匂いがするのは、飛び散った尿が床や壁について、やがてアンモニア臭を出すからです。便器の裏側や隅など掃除しにくいところが難敵。毎日の清掃では、便器を磨いて、便座の裏側も掃除します。
この7月からは、清掃にさらに力をいれていきます!
清掃回数を増やすのと、営業が終わった深夜に利用者がいないときにしかできない床面や壁面や便器全体を特殊な薬剤を使って徹底的にキレイにしていきます。
駅トイレから神戸をよくする
近年、海外からの観光客に日本のお土産として注目されているのが、シャワー式便座です。
トイレ自体も、外国とくらべると、清潔できれい、トイレットペーパーがいつもある、便座クリーナーが常備されていて、外国の方たちから絶賛されている「日本のトイレ」。日本人の細やかな心遣いと技術力の高さが、快適な空間を生み出し、今や観光の目玉の一つともいわれています。
神戸市交通局では、「駅から神戸をよくする」という大きな理想を掲げています。利用される人たちへの「おもてなし」の気持ちを忘れることなく、まずは駅のトイレ、このイメージを一新したいと思っています!
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