神戸市地下鉄の駅を丸洗い 営業終了後の夜間作業に潜入!
静まりかえる深夜。神戸の地下鉄では、毎日のように駅の「大掃除」をしています。昨年6月から今月までの10カ月を要する事業です。
ちょうど47年前の今日、1977年(昭和52年)3月13日に神戸市営地下鉄は開業しました。
当初は新長田駅から名谷駅まで、たった4駅の路線。その後、延伸を重ねて、神戸の西や北エリアにある住宅地と、三宮など市街地をつなぐ大動脈に成長。2001年に開業した海岸線と2020年に市営化した北神線を加えると、全27駅で毎日30万人近い利用があります。
大掃除が必要になったワケ
もちろん駅では、毎日のようにホームや階段の汚れを掃除機やモップで取り除いたり、エスカレーターの手すりを拭いたりと、清掃がなされています。
ところが、開業から47年も経つと、駅の壁や床、天井に、いつもの掃除では落としきれない汚れがたまってきました。
すると、高校生のときに使っていた駅を30年ぶりに訪れた人から、昔はもっと明るい駅だったのに、なんだか暗くなったと、、
そんな鋭いご指摘が、数々、、、
痛いところを突かれました!
そこで、いつもの清掃のレベルを大きく飛び越えた「大掃除」をやろうと舵を切ったワケです。
営業終了後しかできない作業
ところが、大掃除をするにはハードルがあります。お客さんがいる時間帯にまさか壁を水洗いできません。まして、ホームでも線路の向こう側の壁だと、電車を止めなければなりません。
ということは、地下鉄の営業運転が終わってから始発までの作業になります。
じつは、鉄道を走らせるには、そんな作業がかなりあります。終電が出ると駅のシャッターは降りるのですが、それから始まる仕事があるのです。
例えば、レールとそれを支えるまくらぎ、その下の土台である道床(どうしょう)に付着した油やほこり、鉄粉などを定期的に道床洗浄車と呼ばれる特殊な車両で洗っています。
最終列車が車両基地に入庫すると、運転指令所の係員から電力指令所に送電停止を指示。各変電所からき電線(架線)への電力供給を遮断してから、作業が始まります。
ディーゼルエンジンで動く軌道モーターカー、それに牽引された道床洗浄車が走行しながら、高圧の水でレールやまくらぎを洗っていきます。
ほかにも、トンネル内のひび割れの点検や信号設備の更新工事など、夜間しかできない作業はかなり多いのです。
ただ、電車の安全運行に直結するものがほとんどです。なので、今回のような大掃除は安全にあまり影響がないので、ずっと手つかずでした。
こびりついた汚れとの闘い
駅全体が暗くなったのは、壁や床、天井が黒ずんでいるからです。なんとか 明るくしようと、照明を蛍光灯から明るいLEDに変えたのですが、壁や天井が汚れていれば、効果もイマイチ…
深夜、0時36分。作業着に身を包んだ人たちが一斉に動き出します。作業ができるのは、朝5時の始発までのわずか4時間。
こびりついた汚れを落とすのには、薬剤で汚れを浮かび上がらせて、水で一気に流してしまう作戦がとられます。
この日は、階段壁面がターゲット。足場となる脚立にのぼり、ブラシで丁寧に薬剤を塗っていきます。
ただ、汚れや壁の材質に合わせたベストの薬剤を使わなければなりません。薬剤にもいろいろと種類があり、組み合わせを間違えると、時間がかかるだけ。
そんな薬剤選びにある工夫が、、
じつは、お客さんがいるときに、こっそりどの薬剤が効くのかをテストしたりします。壁や天井の材質が傷まないかの点検にもなるのです。
このリハーサルのおかげで、夜の限られた時間を効率的に使えるのでした。
薬剤塗布のあとは、階段や床であれば、水で流します。黒い水が、一気にどどっと流れます。
汚れが落ちていなければ、薬剤を塗り直して、水で流す作業を繰り返します。ゴシゴシこすると、床や壁の塗装自体を損傷させるおそれがあり、水を使うのだそうです。
一番豪快な作業が行われるのは、ホームから線路を挟んだ向かいの壁の洗浄です。ここは普段の清掃ではほぼ手つかず。
まずは、線路に降りて脚立を並べて、薬剤を塗ります。
そのあと、100度の熱湯を200キロの水圧で噴射します。家庭用の高圧洗浄機の2倍を超える威力。気持ちいいほど汚れが取れました。
水滴をきれいに拭き取ると、開業時に戻ったとまでは言いませんが、壁面はすっかり輝きを取り戻しました。隔世の気分です。
地味なプロジェクトですが、駅を使う人たちに、「ひょっとして、明るくなった?!」と感じてもらえると、うれしいです。
これからも神戸の人たちの足を守り続ける地下鉄。いまよりももっと親しまれるようにしていきたいと思っています!
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