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神戸市役所が求める民間企業からの転職者とは?

昨年12月、久元喜造市長は「民間企業を経験した転職者の採用に力をいれていく」と発表しました。自治体の職員採用は、新卒が基本であったので、大きな方針の変更にあたります。

神戸市役所の採用では、大学を卒業して5年ほど民間企業で働いていた人でも、特別な準備がいる筆記試験を受ける必要がありました。27歳までを新卒扱いとしていたからです。それを今年から24歳までに引き下げました。

こうすることで25歳から年齢上限の39歳までが、民間からの転職を想定した採用枠になります。この枠だと、もともと筆記試験がないので、適性検査(SPI)と面接だけになるのです。

公務員特有の受験勉強が不要になり、民間企業で働いていた人が、転職するときのハードルがほぼなくなるというわけです。これに合わせて、転職者の採用枠を全体の半数にまで拡大しています。

渋谷で開催された採用説明会(2023年7月23日)

神戸市役所がほしい人物とは?

さらに、新しく「神戸の難問に挑む人、募集。」というキャッチコピーを決めました。

はじめてこの言葉を見たとき、私は驚きました。今まで神戸市では、このようなコピーで断言してなかったからです。

ただ、はっきり言うのは良いと思いますが、「神戸の難問に挑む人」の「難問」って、いったい何なのでしょう? 

じつは民間企業などの経験者向けに「社会人1dayインターンシップ」というイベントを1カ月に1回のペースで開催しています。そこに難問が何なのかを知るカギがあるのかもしれません。

社会人1dayインターンシップ

インターンシップというと、就職活動前の大学生が参加するものです。ですが、いま仕事を持っている人を対象に、神戸市役所での仕事を知ることができるイベントがこれです。参加できるのは10名限定で、毎回満席という人気ぶりです。

というのは、地方公務員の仕事って、ベールに包まれていますよね。分野でいうと、商業・観光・道路・河川・水道・環境・地域コミュニティ・高齢者・福祉・医療・子育て・・・など

業務内容でも、イベント企画、制度づくり、広報、経理、窓口対応・・・など、数え切れません。

そんな市役所で働く実態を、職員たちからナマの声を聞けるのが、このインターンシップです。

たしかに、公開されていない情報は、面接でも聞きにくいものです。

自分の給料がいくらになるのか、それが10年後にはいくらになりそう? さらに、フレックスや在宅勤務の制度が、それがとりやすい雰囲気なのかも、ずばり教えてくれます。

自治体が中途採用に求めるモノ

で、神戸市が求めている「神戸の難問に挑む人」の「難問」とは何なのでしょうか?

私は「前例がない、一筋縄では解決にたどり着けない問題」かな? と思いました。ただ、私の目の前にはそんな「難問」が現れたことはないです。

そこで、「え、難問、、解いたことあるよ」という先輩職員に教えてもらいました。それは、、

―― 垂水にある五色塚古墳。4世紀後半につくられた前方後円墳で、建造当時はヤマト王権の大王に匹敵する大きさだったのに、被葬者が何者であるのか分からないミステリアスな遺跡です。ここをパワースポットとして売り出せないかという構想が浮かんだのです。
ある日、東宝アニメーションに彼は提案。そのあと1年をかけて同社との共同事業で五色塚古墳を舞台にした奇想天外なSFファンタジーのアニメMV(ミュージックビデオ)を制作。YouTubeでは36万回再生、映画館のシネアド(本編映画前の映像)として上映されました。

当時のForbes JAPAN記事

その後、五色塚古墳を訪れる人の数は、コロナ前と比べても2倍になったらしいです。パワースポットとしての認知も進み、兵庫県外から訪問者も増えています。「古墳をパワースポットにせよ!」は、たしかに難問ですね!

他にも、荒れはてた持ち主不明の空き家をどうする、若者が就職したくなる仕事を増やしたい、といった難しい問題に自治体は直面しています。

しかも、どこの教科書を見ても答えが見つけられません。

そんなホントの姿を知ることができるのが、このインターンシップなのです。

地方公務員って、じっさいどぉなん?

このコピーを発表する前、インターンシップの参加者がよく聞いていたのは、「繁忙期の残業時間は?」「職員はどんな人が多い?職場はどんな雰囲気?」です。

たしかに気になるし、パンフレットには良いことばかり書いてあるので、本当の姿を知りたくなりますね。

終わった後に、参加者に感想を聞いてみると、「この場でしか知ることができない情報が得られた」「アットホームな雰囲気だったので気兼ねなく質問できた」と話していました。

ちなみに、次の「社会人1dayインターンシップ」は以下の予定で開催されます。

開催日:11月15日(水曜)18:30-20:30
プログラム
・神戸市、社会人経験者向け採用試験の概要説明
・給与・待遇のモデルケースの紹介
・経験者として採用された職員の実体験
・少人数での座談会

神戸市HP「社会人1dayインターンシップ」

神戸市で働く、地方公務員として働くのと、民間企業との最大の違いは、売上とか利益が目標でないことです。転職してきた人は、ここにとまどいもあるようです。

そんなことも質問できます。でも、職員によって答え方は違うので、それが判るだけでも、意味があるのかもしれません。

<この記事を書いた人>
麻生 真弓/行財政局職員研修所
今の職場では人材育成とインターンシップを担当して3年目。短時間勤務&楽しく育児中。

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