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憧れるけど入りにくい…BARでの振る舞い方、お伝えします

バー(BAR)が好きです。そう、お酒を飲むバーのことです。

神戸市公式noteは、記事の末尾に「この記事を書いた人」という書き手のプロフィールを掲載します。わたくし広報戦略部ライター・ゴウの欄に「バーが好き」と書いてあることを、お気づきの方はいらっしゃるでしょうか。

私が感じるバーの魅力とは……

カウンター席はもちろん調度品や花に至るまで、店内はまるで美術館。

バーテンダーの美しい所作。

色とりどりのカクテル。

ああ、この空間に身を浸すことそのものが、私にとっての至福の時間……。

「たしかに、バーで飲めたら大人って感じで憧れる。けど、いくら魅力を語られたって、そもそも店に入りにくいんやー!!」

そんな、みなさんの心の声が聞こえてきました。

安心してください。神戸市公式noteが、ただ私の趣味を語るだけの記事を出すわけないじゃないですか(笑)。

この記事では、なぜ「バーに入りにくい」と思ってしまうのか、バーに入店したらどんなふうに振る舞えばいいのかを動画を交えてお伝えし、みなさんの不安や疑問を解消します。

神戸が誇る文化の一つであるバーを、みなさんがもっと楽しめるように……!

*この記事では、ネクタイやベスト(ジャケット)を着用したバーテンダーがシェーカーを使うような「オーセンティックバー」を扱います


ガチで「初バー」の職員が体験

はじめは、取材者である私が「初めてバーに入る客」の役になって、入店から注文までのロールプレイング動画を撮ろうと考えました。

でも、もうバーに慣れてしまった私がやると「演技」になってリアルさが出ないな。

そう思って広報戦略部からバー初心者を募ると、3人が手を挙げてくれました。彼女らに、予備知識をつけないまま「バー初体験」をしてもらいます。

左から、千田さん、青木さん、中島さん

時間単位の有給休暇を取り、飲食代も自己負担のガチ体験です。

バーに行きたい理由・入りにくい理由

3人に、バーに行ってみたいと思った理由を聞いてみました。

  • ドラマを見ているとオシャレな人が行っているイメージがあり、「素敵な大人」の仲間に入りたい

  • ふだんはガヤガヤした居酒屋でビールばかりなので、落ち着いた空間で大人な飲み方を身に着けたい

  • お酒に詳しくなりたい。カクテル言葉や、おすすめの割り方などを知って飲み方を工夫したい

逆に、入りにくいと思う理由は……?

  • 居酒屋や立ち飲み屋は外から中の雰囲気がわかるので1人でも入れるが、バーは扉が重厚で、中の様子がわからない

  • お酒に詳しくないからモタモタしてしまい、周りのお客さんに迷惑になるんじゃないかと思ってしまう

  • メニューがない店が多いから、どう注文したらいいかわからない

  • 氷の音が聞こえるくらい静かなイメージで、こんなところで初心者丸出しだと、目をつけられてしまうんじゃないか

めちゃくちゃわかります……! 私もまさにそうでした。

要するに、外から中の様子がわからない、お酒の種類や振る舞い方を知らないなど、「わからない」「知らない」ことが壁になっているようです。

知らないものに不安や恐れを抱くのは自然なこと。じゃあ「わからない」を解消したら、バーの扉も開けやすくなるのでは……?

いざ、入店!(動画あり)

バーはメニューを置いていない店も少なくないため、「何をどう注文したらいいかわからない」がハードルになりがち。

というわけで、バー初体験の3人がドキドキしながら扉を開け、着席して注文するまでの様子を動画でお届けします。

ご協力いただいたのは、三宮・生田神社近くにあるBar Andante(バーアンダンテ)さんです。

オーナーバーテンダーの赤井献治さん

ふつう取材で入店動画を撮るとき、レポーターは先にお店に挨拶をしてから撮影を始めます。

でも「本当に初めてバーに入る様子」を読者のみなさんにお届けしたかったので、挨拶をしたのはカメラマンと私だけ。3人には後から来てもらい、店内から電話で合図をして入店してもらいました。

さて、ドキドキ入店の様子は……?

お店なのにドアをノックしちゃう緊張っぷり! 初めてのバーに入って店内を見渡してしまうのも、めっちゃわかる~。

でも注文の仕方は、まるでお手本のようで驚きました。

バーテンダーから「いかがいたしましょうか」と聞かれたとき、「初めてなんですけど、何を頼んでいいかわからなくて」と答えた中島さん。そう、これが大事なんです。

「バーは、お酒のことをある程度知らないと行けない(行ったら恥をかく)場所」と思われがちですが、実は全然そんなことありません。

今回お世話になったマスター・赤井さんはもちろん、他のバーテンダーも口を揃えて「わからないことは何でも聞いてください」と言います。

というのも、お客さんとの会話から好みを聞き出して、バーテンダーがぴったりのお酒をカスタマイズしてくれるから。甘口が好きか辛口(ドライ)が好きか。アルコールの強さ、炭酸の有無など……。

「アルコールは弱めで、シャインマスカットを使って」という今回のオーダーは、こんなカクテルになりました。

見た目から気分が上がりますね!

こちらの2人、奥の千田さん(ふだん居酒屋でビール派)はビールを注文。意外かもしれませんが、ビールを用意しているバーも少なくないんですよ。

手前の青木さんが「甘めのサワーを」とお願いすると、パッションフルーツのリキュールを使った美しいカクテルが。

ウイスキーの銘柄を指定したり、カクテルの名前でオーダーしたりする「お酒に詳しいお客さん」もいる一方で、曖昧なイメージで注文できるのもバーの醍醐味

たとえば私は、5月には「若葉のイメージで緑色のものを」みたいな感じで注文します。漠然としたオーダーがこんなふうに形になるんだ!という楽しみがあります。

お花屋さんで花束を注文するのと、ちょっと似ているかもしれません。

バーでの振る舞いは「普通」でOK

バー アンダンテは、バーの裾野を広げようと初心者も楽しめるお店づくりを心掛けています。

公式サイトでは「ドレスコードはありますか?」「お酒が飲めませんが行ってもいいですか?」などのFAQページを作ったり、Instagramでは自店やお酒だけでなく、神戸のおいしいレストランを紹介したりしています。

その甲斐あってか、「バーが初めて」という大学生や20代の来店も多いんだそう。時には、カウンター全員が若者!ということもあるのだとか。

バー初心者の若い人が来たとき、どんな感じなんですか?

「女性は普通に『初めてなんです』くらいなんですけど、男性のほうが緊張してモジモジしがちですね。3人で来てるのに、一言もしゃべらないとか(笑)」

かわいい……! そうそう、「バーでは静かにしないといけないんじゃないか」というのも、実は誤解なんです。

「パブリックな場での振る舞いと同じだと思えばいいですよ。たとえば、電車の中で走り回ったり大声を出したりはしないけど、普通に話すくらいはするでしょう?」

なるほど、そう言われるとわかりやすいですね。私自身、バーに通い始めたばかりの頃は「思ってるより、みんな普通にしゃべるんだな」と感じたものです。

あと、気になるのはやっぱりお会計。

アンダンテのようなバーの場合、ドリンク代とは別にチャージ料(席代)やサービス料が発生する場合が多いです。店によりますが、おおむね

  • チャージ料は500~1000円ほど

  • ドリンクは1杯1000~1500円ほど(ウイスキーやブランデー、季節の果物を使うドリンクはもう少し高価なものも)

くらいです。

動画の中島さんの場合、シャインマスカットのカクテルの他にもう1杯、パイナップルのトロピカル系カクテルを注文して3900円でした。

■チャージ 500円
■シャインマスカットカクテル 1700円
■パイナップルカクテル 1400円
上記の合計金額 3600円×サービス料10%=3960円
→100円未満切り捨てで3900円

*季節のフルーツは仕入れ値によって価格が変動します

ドリンク2杯とチャーム(おつまみ)でこの金額は高いと感じる人もいるかもしれません。私も最初はそうでした。ただ、バーを知れば知るほど、

  • 店内の美しいお花や調度品

  • お客さんのニーズを瞬時に見抜いてぴったりのお酒を出すバーテンダーの技術料

  • バーテンダーとの会話も楽しみの一つなので、そのカウンセリング料

も含まれていると考えれば、妥当だなと感じるようになりました。頻繁には行けませんが、月に1~2回の「とっておき」です。

チャームと呼ばれるおつまみは、チャージ料に含まれるお店が多いです

赤井マスター、他にアドバイスはありますか……?

「行ってみたいお店があって、会計やお酒が飲めないなど気になることがあれば、先に電話で聞いてみたらいいですよ」

そもそもバーテンダーという言葉は「Bar+Tender」に由来します。Tenderは「優しさ」という意味なので「バーの優しさ」なんですよね。

私自身、アルコールは強くないしお酒の種類にも詳しくありません。それでもバーが好きなのは、どの店に行ってもバーテンダーが、その場を楽しめるように優しく導いてくれる「案内人」でいてくれるからじゃないかな、と感じています。

年齢とともにさらに弱くなってきて、ノンアルコールカクテルを頼むこともあります。バーテンダーが調節してくれるのでアルコールが弱くても(飲めなくても)楽しめることも、バーの魅力だと思います。

バー初体験を終えて、率直な感想

初めてのバー体験を終えた3人に、率直な感想を聞いてみました。

  • 行ってよかった、新しい世界が開けた。扉の向こうの様子がわからず不安だったけれど、逆にそれが楽しみになると知った

  • ドアを開けた瞬間、雰囲気に圧倒されて場違いじゃないかと思った。やっぱり最初のハードルは高い……

  • 好みを伝えると作ってくれるので、お酒に詳しくなくても行っていいし、むしろそのほうが、新しいお酒を知れて楽しみが倍では?と思った

  • 素直に「メニューありますか?」と尋ねていいんだと知った。イメージを伝えればその人に合った1杯を作ってくれるし、BARってこわくないかも!

  • 普通に話すのは問題ないと聞き、バーテンダーもしゃべってくれるので、変に心配しなくていいんだと気が楽になった

  • バーテンダーの所作が美しい。指先まで研ぎ澄まされた動きに癒やされる

  • やっぱりお値段が……。カクテルを作る労力や時間を聞くと納得だけど、量を飲む私の主戦場は、やはり大衆居酒屋だなと。でも「自分へのご褒美」のときの選択肢ができた

  • バーテンダーはお酒をつくる人だと思っていたけれど、全てのおもてなしのプロで、特別な時間を演出してくれる存在なんだな

ハードルを感じつつも、初回にしてバーの魅力をしっかり感じ取ってもらえたこと、とってもうれしいです。

神戸のバーテンダーが大会でワンツー独占!

冒頭で「バーは神戸の文化の一つ」と言いましたが、神戸には本当にたくさんのバーがあり、バーテンダーが仲間&ライバルとして切磋琢磨しているんです。

そして去年11月、サントリーが開催したカクテル大会にて、神戸のバーテンダーが優勝(日本一)と準優勝を獲得!ワンツー独占は神戸バー業界で初めての快挙です。

【右】優勝した森﨑和哉さん、【左】準優勝の生田理実さん

日本一を獲得した、SAVOY hommage(サヴォイ オマージュ)の森﨑和哉さんの「てふてふ」は大葉がアクセントになって、濃いピンク色の見た目からは想像もつかない意外な味わい。

準優勝、BAR SLOPPY JOE(バー スロッピージョー)の生田理実さんの「Classic Rose(クラシックローズ)」は、ベースとなるウイスキーが効いたパンチのある味わいが昔ながらのクラシックカクテルを彷彿させつつ、とてもフルーティー。

(*生田さんの勤務日は不定期ですので、お店にお問い合わせください)

2つのカクテルの色は似ていますが、味はまったく違うんですよ。

【左】てふてふ、【右】Classic Rose

こんなふうに、全国的に見てもハイレベルな神戸のバーシーン、ぜひ楽しんでいただきたいです。

初心者の強い味方「KOBE BAR MAP」

この記事を読んで「今年はバーデビューしてみようかな……」と思った方に、強い味方があります。

つい先日、KOBE BAR MAP2025 が発行されたのです!

神戸駅周辺エリアよりも東側にあるバー194店舗が、地図&写真で一覧できるガイドブックです。チャージ料も書いているので心強い!

もともとこのバーマップは、三陽物産という酒類商社が取り扱いウイスキーのPRを兼ねて作成したもの。PRのためとはいえ、こんなガイドブック作っちゃうなんて、神戸バーへの愛が強すぎませんか……! 今回はこのバーマップと神戸観光局がタッグを組んだ形です。

A5サイズで持ち運びもラクラク。以下の場所で入手できます。もちろん無料

  • 神戸市総合インフォメーションセンター(JR三ノ宮駅東口を出て南側すぐ、ポートライナー三宮駅の階下)

  • 北野観光案内所

  • 新神戸駅観光案内所

  • BAR MAP掲載店 など

冊子型だけでなく、デジタル版でもご覧いただけます。

そして、1月24日~2月2日まで開催される神戸ルミナリエでは、有料エリアを観覧した方や会場で募金をした方に渡されるThank youカードを持参すれば、提携店舗で「ちょっとお得なサービス」を受けられます。

参加店にはバーも複数あるので、バーマップをお供に活用してみてくださいね! 参加店舗は、以下のデジタルマップからご確認ください。

また神戸観光局のナイトタイムエコノミー専用サイト「コウベdeナイト」でも、バーマップの店番号に対応した地図を見ることができますよ。

最近、ふしぎに思うことがあります。

私は「バー」とカタカナで書くんですね。バーテンダーはじめバーで知り合った人たちも、カタカナで書く人のほうが多いように感じます。

逆に、バーに行く習慣がない人のほうが「BAR」「Bar」とアルファベットで書くんですよ。

たとえば、メールで「ゴウさん、一度BARに連れて行ってよ」みたいな。スマホのキーボードを平仮名からアルファベットに変えるの面倒くさいのに、わざわざ変えてくれたん(笑)!

バーに行かない人にとってはキーボード設定を変えるほど、格式ばったイメージやハードルの高さがあるのかなあ……。

たしかに、ハードルの高さはゼロではありません。行き慣れた店でも、扉を開けるときには少しだけ、背筋がピンと伸びる感じがします。

でも、あらゆることが「フラットに」「ゆるく」なっている現代だからこそ、そうした「背筋がピン」もいいものだよな……と思うんです。

だって扉の先には、ちょっとした緊張感を越えた人だけが味わえる、ゆったりした寛ぎとホスピタリティが待っているのですから。

さあ、扉を開けてみましょう

<この記事を書いた人>
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。
旅とバーとパンダが好き。

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*お酒は適量をゆっくり楽しみ、飲んだ日は運転を控えましょう