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築造時は国内最大級 巨大古墳に誰が眠る? 五色塚古墳を電磁波探査

エジプトにあるギザのピラミッド。中国の始皇帝陵。はるか昔に権威をふるった権力者が葬られています。その巨大さが彼らの力の大きさをうかがい知れます。

日本にも、これらにならぶ巨大なお墓「古墳」が、数多く残されています。

国内最大クラスだった五色塚古墳

神戸市垂水区にある巨大な前方後円墳をご存じでしょうか? 「五色塚古墳」と呼ばれていて、大きさは194メートルで、これは兵庫県で最大の古墳です。

全国でいえば40番目ほど。そう言われると、あまり大きくなかったと思われます。ですが、この順位にはあとの時代に造られた大仙陵古墳(仁徳天皇陵)など、古墳が巨大化したときのモノが含まれています。

五色塚古墳が造られた4世紀後半のランキングが気になりますね。じつはその時代だと、200メートルほどのサイズの前方後円墳は、日本の中心地である奈良(ヤマト)と大阪にしかなかったのです。

その時代だと、五色塚古墳は全国で、なんと5本の指に入る大きさでした!

ヤマト王権に重要視された被葬者

そう考えると、こんどはなぜ、それほどのお墓が神戸の垂水につくられたのか疑問です。これを解くカギを握るのが、築かれた場所です。五色塚古墳は、明石海峡を見渡せる丘陵地の一番海側にあります。どうやら、海を望める場所が選ばれたようです。

その頃、奈良には後の天皇家につながるヤマト王権があって、九州や朝鮮半島の人々と交流を行っていました。朝鮮半島と奈良を行き来するには、船を使わなければなりません。この古墳は淡路島と神戸側が一番近くなっている場所にあります。行き交う船を望むことができ、海上の船からは古墳を望めたのだと思います。

五色塚古墳に葬られたのは、目の前に広がる明石海峡という大事な海路を掌握していた人物であったと考えられます。そのためにヤマト王権から、かなり重要視されていたのでしょう。

五色塚古墳の発掘調査

五色塚古墳は、1965年から10年間をかけて発掘調査と復元整備工事が行われました。全国で初めて古墳が造られた当時の姿に復元され、史跡公園として人々の憩いの場として親しまれています。

発掘調査では、大量の円筒形の埴輪が発見されました。この埴輪は、古くは地域の王(権力者)を葬るときの儀式に使われていた、壺とそれを支える土器の台とがこの時代流にデフォルメされたものです。これを整然と並べることで、古墳の荘厳さを見せようとしたと考えられます。五色塚古墳では2200本もの埴輪が並べられました。

また、古墳の表面には、葺石と呼ばれる握りこぶし大から大きいモノだと30センチほどの石で、覆われています。風雨で土が流れて古墳が崩れるのを防ぐとともに、見栄えをよくしようとしたものだと考えられています。

五色塚古墳の葺石にはトリビアがあります。石材を調べると、どうやら淡路島の東岸から運ばれてきた可能性が高いことが分かっています。しかも葺石の数はなんと223万個。推定重量は約2800トンという途方もない量です。

これを船で運んできたのです。まさに明石海峡をおさえていた人物のお墓としか言いようがありません。

レーダで地中の埋葬施設を調査

前方後円墳だと、丸い後円部の中心の地下に被葬者が安置されます。その棺は、石で囲った石室を造って安置するか、粘土を覆った状態で埋められます。この違いは、葬られた人物の生前の身分や位によって、分けられていたようです。

じつは五色塚古墳では、王を葬った場所については発掘調査が行われていないので、その構造はよくわかっていません。

五色塚古墳は、「国史跡」に指定されています。古墳のなかでも特に重要なものだからです。なので、簡単に発掘調査ができません。墳丘自体の大規模な調査は実施したのですが、埋葬施設の調査は手付かずでした。

そんななか、五色塚古墳に埋葬された人物像に何とかせまることはできないでしょうか。ですが、発掘調査というのは地中の構造を大きく変えてしまします。

現在の技術で最高の調査をしても、もしかすると100年後にはもっと科学技術が発展しているかもしれません。すると、同じ場所を調査しても判ることが今よりもっと多いはずです。なので、安易に発掘調査をするのは得策ではないのです。

逆にいうと、古墳を傷つけない調査であれば、今すぐにでもやりたいですよね。

それを実現するのが、地中レーダ探査です。レーダ探査は、電磁波を地中に送り、その反射波によって地中内部が、どんな構造になっているのか、空間があるのか、その空間はどんな形かを解析する方法です。

もしかすると、この探査で、五色塚古墳の中心部、被葬者が安置されている空間を探ることができるかもです。

いま、このレーダ探査を行うためのクラウドファンディングをしています。ふるさと納税制度の税優遇も受けられます。

五色塚古墳に葬られた王の姿に近づける、あるいは謎多きミステリアスな五色塚古墳を後世に伝え続けるために、ぜひご支援いただきたいと思います。

〈この記事を書いた人〉
小野寺/文化スポーツ局文化財課 学芸員
2018年神戸市役所入庁。主に市内の発掘調査を担当。
市内の歴史的価値を持つ遺跡や文化財の発掘調査を数多く手掛ける。
神戸が誇る史跡、五色塚古墳の整備事業にも携わっており、「巨大古墳に誰が眠っているのか…」とても気になっている。
歴史的な遺産を通じて、地域の歴史と文化の重要性を伝え、未来へ繋げていきたいと思っている。


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