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お役所仕事はもうやめた! 契約のデジタル化で見えた意外な利点

神戸市だけでなく、日本のありとあらゆる自治体では、商品を買ったり、工事をしたりするときに「紙」の契約書を2通作成して、それぞれに自治体と契約の相手方とが「ハンコ」を何カ所も押すというのが基本でした。

Amazonでモノを買えて、ネットでレンタカーを借りて、海外航空券が簡単に購入できる時代になりました。ですが、神戸市でインターネットでの発注は禁止。規定によって「やむを得ない事情がある」ときに限られているのです。

電子政府とか、デジタル市役所と言いながら、恐るべき後進性です。さすがにマズいですね!

ということで、神戸市ではちょうど1年前、契約事務をデジタル化しようと大きく舵を切りました。それで何が見えてきたのかを、お伝えしようと思います。

これまでの契約手続は?

契約を締結する- これが役所だとどんな手続きになるのかをまず説明します。

① 工事や物品購入といった契約の内容が書かれた同じ契約書を二つ作成します。それにお互いのハンコを押します。2つ作るのは、1つだと保管している側が変造するおそれがあるからです。

② 契約書は1枚とは限りません。複数枚になったら袋とじ(製本)という技術が登場します。袋とじは契約書の改ざんや偽造ができないように、紙や製本テープで複数枚になった契約書を綴じて、貼りつけた部分に重なるようにハンコ(契約書の最後のハンコと同じ)を押します。

③ こうやって作成した契約書ですが、まだ神戸市側のハンコしか押されていません。なので、相手方に郵送して、ハンコを押してもらって返送してもらわなければなりません。郵送料や時間もかかります。

私もこれが当たり前だと思って長年の間、契約書を作ってきていました。

契約のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは

ところが、この当たり前が、電子契約を導入すると激変しました。電子契約では、データに置き換わります。そして契約書に押していたハンコ電子署名に置き換わるのです。

こういわれてもピンとこないと思うので、電子契約の仕方を少し詳しく紹介しますね。

まず、契約データをインターネットにアップロードする。これで契約書を印刷してそれを郵送していた作業から解放されます。なお、神戸市との契約だと、神戸市側がデータをアップロードするので、相手の方はデータを点検するだけです。

次に、アップロードされた契約データをお互いが承認する「電子署名」という手続きが行われます。承認はパソコンやスマホからできます。誰がどの端末でいつ署名したかの記録が残るので不正や改ざんからも守られます。

電子契約のイメージ

導入して見えてきた本当のメリット

これをはじめてから1年が経ったので、神戸市と電子契約をした企業の方はどのように感じているのかを聞いてみました。

A社:
じつは契約書に使う会社の代表印は東京の本社にあるので、契約のたびに本社に送って押印してもらい、また返送してもらっていた。それを市役所に返していた。その時間がほぼゼロになり、手間もなくなった。

B社:
 契約書は会社の書庫に保管しているので、契約を変更するときなどは、書庫まで契約書を取りに行く必要があった。それがデータになったので、自分の席で契約変更ができるようになった。

C社:
契約書を締結するときには高額な印紙代がかかる。電子契約にすることで印紙代が不要になった。

うん?最後の印紙代!?って、どういうこと。

この印紙代というのは、印紙税を支払うために「収入印紙」を購入する代金のことです。印紙税は、契約書や領収書など経済取引で作成される文書に課せられる税金です。ところが、電子契約では文書がないので印紙を貼る必要がないのです。

また、神戸市との契約で契約書を二つ作ったとき、片方の契約書にしか印紙を貼る必要がありません。というのは、自治体は印紙税法上で非課税とされているので、契約の相手方だけが負担になっていました。

印紙税の額は、契約の種類と金額で決まります。普通の人でもときどき目にする領収書に貼られた印紙は200円ですね。ところが庁舎などの建設工事で契約が10億円を超えると印紙代がなんと40万円になります。私の給料よりも多いのです。この負担がなくなるというのは、企業にとってとてもうれしいですね。

これから電子契約をさらに加速

神戸市では、昨年6月から「SMBCクラウドサイン」という電子契約のサービスを導入しました。

今年から、神戸市側が電子契約にするのか否かを決めるのではなく、相手方となる事業者が希望すれば電子契約ができるようになっています。ただし、電子契約ができない契約が法律や内部ルールで定められていて利用できないモノもあります。

どうやって導入すればいいのかが分からないという方は、遠慮なくお問い合わせくださいね。

<この記事を書いた人>
元村優介/企画調整局デジタル戦略部
これまではバリバリの文系で人生を歩んできたが、まさかの人事異動で「デジタル戦略部」で働くことになった。なので、配属直後は「宇宙語」に聞こえたIT用語と格闘していたが、いまはだいぶ宇宙語を話せるようになった模様。ただ、スマートウォッチに手を出さないという謎のポリシーも持っている。

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