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神戸に集う!ダンスに捧げた青春 全日本高校・大学ダンスフェスティバルの醍醐味

毎年8月、阪神甲子園球場では全国から来た高校球児による熱戦がおこなわれます。ちょうどその頃、神戸の三宮からほど近い神戸文化ホールでは「ダンスの甲子園」と呼ばれる大規模なダンスの大会が開かれています。

その時期に、三宮の街なかを歩けば、近くのホテルで泊まっている高校球児を見かけることも多いのですが、キリっとした姿勢でお揃いのTシャツをまとった若者集団(女子が多め)も見かけます。

いったい何もの?と、思いますよね…

じつは彼ら彼女たちは、「全日本高校・大学ダンスフェスティバル(神戸)」に出場するために、全国各地からやってきた人たちなのです。

ダンスはヒトの心を伝える原点

で、ダンスといえば何を思い浮かべますか? かっこいいヒップホップやジャズダンス、2024年パリ五輪より正式種目になるブレイキン、ちょっとハードルが高そうな社交ダンスまで…ダンスには、いろんなジャンルがあります。
そういえば、小学校のときに運動会でフォークダンスを踊ったりしましたが、あれもダンスです。

「Entertainer」大阪体育大学ダンス部(参加発表部門)

ダンスは人類最古の文化の一つとされ、踊りをもっていない民族はないといわれています。ダンスの語源は「生命の欲求(desire of life)」で、人類は言葉すら持っていないころから、自らの思いや欲求を踊ることで表現してきました。

幼い子どもが喜んで跳びはねたり、足を踏み鳴らして悔しがったり、そういうのもダンスです。

狩猟民族は狩りで獲物がとれたら跳びはねて喜ぶような縦の動き、農耕民族は盆踊りのように土を踏みしめるような横の動きが多い、というのもどこかで聞いたことがあります。

「哀哭の蝶ー平和であれー」神戸野田高等学校ダンス部(高校 創作コンクール部門:特別賞)

どんな動きもダンスになるのですが、ダンスの起点で大事なのは「今・ここにいる・わたし自身」です。

目指せ!ダンスの甲子園

とはいえ、そんなダンスを極めていくとどうなるのか…

毎年夏に開かれる「全日本高校・大学ダンスフェスティバル(神戸)」が、それが披露される場なのです。この大会は1988年に始まりました。国内でダンスの全国大会がなかったので、甲子園のような大会をという熱い思いから生まれたといわれています。

でも名前がちょっと変ですよね。全国大会なのに最後が(神戸)となっているのは。もしかして、国体のように毎年場所が変わって、(札幌)とか(名古屋)のときもあるんじゃないかと思ってしまいます。

ところが、毎年神戸でやっているものが唯一無二の全国大会。どうやら、初回大会の開催を決めたときに、どうしても大会名に「神戸」を入れたかったようで、今でも「絶対にはずしたらアカン」と引き継がれているのです。

「正気と狂気の狭間で ーアンリ・ルソー「戦争」を見つめてー」天理大学創作ダンス部(大学 創作コンクール部門:文部科学大臣賞)

この大会には、ダンサーたちの想いやテーマを動きに変える「創作ダンス」を披露する「創作コンクール部門」、あらゆる種類のダンスを対象とした「参加発表部門」といった、2つの部門があります。

ダンスに捧げた大切な時間

初日に行われる開会式の雰囲気は独特です。

出場した各学校の代表者が舞台に上がると、学校名が順番にアナウンスされていきます。すると呼ばれた瞬間、客席に陣取っていた参加チームが一発芸のような、即興パフォーマンスを披露していくのです。

仲間と一緒に大切な青春のひとときをダンスにかけていることを理屈なしで感じられるときです。

そして、結果発表のとき

ダンスを見るのが初めてという方に

ただ、こんなふうに説明してしまうと、ちょっと近寄りがたいなと思ってしまうかもしれません。ですが、ご安心ください。

客席から見ると、暗闇を貫いてスポットライトが舞台で躍動するダンサーたちを照らし、あるときは静、あるときは動、そして破から急と変化する音楽にあわせて、踊りが続きます。

照明の色彩をかいくぐるように、表現したいテーマにあわせた衣装をまとった肉体が繰り出すパフォーマンス。

一糸乱れない演技している時間は、誰もが、まばたきすらするのも惜しいように感じられるものです。

「NEW BIRTH」芦屋学園高等学校ダンス部(参加発表部門)

大会がある8月10日前後といえば、日本ではいちばん暑い時期。ですが、そんな非日常を空調がきいたひんやりしたホールで味わえます。

この大会は、2013-14年に過去最大となる4000人を超える出場者と、約2万人の観客など関係者を集めました。ところが、2017年頃に曲がり角を迎えます。最初はわずかでしたが、参加者が減りはじめたのです。

それにコロナ禍が追い打ちをかけました…

2020年の大会は史上初の中止。ですが翌年、ダンスの灯を消してはいけないと、なんとか距離を保ちながらの開催をすることができました。

動きや音楽はどう決めている?

でも実際にどう動くのかを考えたり、曲を選んで編集したりするのはどうやっているのでしょうか。ひょっとすると、各学校のチームを指導している顧問の先生が決めているのではと思ったので、ある先生に聞いてみました。

「まず部員たちが、ダンスで表現したいもの、例えばウクライナとか歓喜といったテーマを複数持ち寄って、そこから選んでいきます。ときにはイメージを膨らませ、あるときはそぎ落としていきます。そうやって一つの作品が生まれます」

なるほど、作品には学生たちのリアルな「今」がつまっているといえますね。

「I~アルベルト・ジャコメッティの彫像にみる~」横浜国立大学モダンダンス部(大学コンクール部門:神戸市長賞)

そんな思いが感じられるダンスフェスティバル。今年は8月7日から10日まで行われます。

たしかにスマホやパソコン画面でもダンスを見ることはできます。ですが、やっぱりいいのは舞台の上での躍動を、同じ時間と空間で味わうこと。

今年の夏を、そんなふうにしてみませんか。

※トップ写真:「モラトリアム」福岡大学附属若葉学園高等学校ダンス部(高校 創作コンクール部門:文部科学大臣賞)

※ 舞台写真(全て):フォトスタジオ八木

<この記事を書いた人>
う/文化スポーツ局スポーツ企画課
市役所でダンスフェスティバルの担当をしているが、本当は小学校の先生。ふつうは憧れの先生に出会って自分も先生をなりたいと思うのだが、小学校にあがる前から先生になりたかったという変わり種。
ただ、今は自分の仕事であるダンスフェスティバルのことが頭から離れない。でもホンネをいうと、そろそろ子どもたちが恋しくなってきている。

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