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シアトルから神戸に来た2代目「先住民の彫刻柱」 黒い覆いを被るワケ

シアトルと神戸は1957年に姉妹都市となりました。

現在8つある神戸の姉妹都市のなかで、一番はじめに提携したのがシアトルです。逆にシアトルは、世界各地に20の姉妹都市があるのですが、じつはシアトルにとっても最初の姉妹都市は神戸なのです。

海上から見たシアトルの街並み

シアトルには1961年から神戸市の事務所があります。今も課長級の職員1名が3年交代で現地に赴任しています。

米国で日本の自治体の事務所はたったの3か所しかありません。ほかには、ワシントン州に兵庫県が、ニューヨークには横浜市が置いています。

神戸市のシアトルの事務所は昨年、神戸に米国マイクロソフト社のAI開発拠点が神戸に開設されたときにも、一役買ったそうです。


花時計のトーテムポールはどこに?

神戸・三宮のシンボルの一つである「花時計」は、2019年に旧居留地の東遊園地に移転しました。それまでは神戸市役所のすぐ北側に「花時計」があり、それを見下ろすようにトーテムポールがたっていたのです。

旧花時計トーテムポール

トーテムポールとは、アラスカからカナダとアメリカにかけた太平洋沿岸部に暮らしている先住民族が、家の前や墓地に建てる数メートルもある木製の彫刻柱のことです。

1961年にシアトル市から神戸市に、友好の証としてトーテムポールが贈られました。

当時、作者であった先住民族のジョセフ・ヒレアさんは神戸に来て、3か月間、屋外で最後の彫り作業を行ったと伝えられています。

屋外で彫刻するヒレア氏

ですが、設置から50年以上が経過しました。風雨にさらされたトーテムポールは腐食が進み、このまま立てておくのは危険と判断。今は六甲山にある森林植物園の園内で、静かに横たわっています。

トーテムポールは修復や保全をしません。やがて朽ち果て、土に返り、新しい森の命になる。これが先住民族たちの世界観なのです。

再び神戸にトーテムポールを!

じつはシアトルには、姉妹都市がきっかけとなり、熱烈なる神戸ファンになった人たちがたくさんいます。彼ら彼女らから何か新しい交流のシンボルを贈りたいという声が上がりました!

そんななか、地元彫刻家のクワルシゥス(通称名:ショーン・ピーターソン)さんに白羽の矢が立ちます。神戸に贈るトーテムポールをつくってほしいと。

彼は、シアトルの玄関口であるタコマ空港の彫像を手掛けるなど、現代のシアトルを代表するアーティストです。

地元彫刻家のクワルシゥスさん

2017年に彼は神戸を訪れました。そこで、今回のデザインとなる毛織物のブランケットを羽織る女性、その頭上に大きな鷲がとまっているという着想を得たようです。

そのあと彼が手に負傷をしたりしたので、デザイン画を披露できたのは、5年後の2022年。神戸とシアトルが姉妹都市となって65周年を記念したイベントでのことでした。

ストーリーポールと呼んでほしい

実をいうとこのイベントで、シアトルの人たちが、新しいモニュメントはトーテムポールではなく「ストーリーポール」と呼んでほしいと頼んできたのです。

どうして?と思ったのでワケを聞いてみました。

今回の作者であるクワルシゥスさんは、コースト・セイリッシュ民族の方です。そして60年前に花時計の後ろにあった作品をつくったジョセフ・ヒレアさんも同じ民族でした。

日本人から見るとアメリカ・カナダの太平洋側にある彫刻柱は全部「トーテムポール」と思いますが、正確にはコースト・セイリッシュ民族が建てているモノは「ストーリーポール」と呼ばれています。

ということは、花時計の横にあったのも、トーテムポールではなく、じつは「ストーリーポール」だったのです。ただ古く設置されたものは、今でもトーテムポールと呼ばれたりしています。

記念トークイベントを開催!

1月末にシアトルからの船便でストーリーポールが神戸に到着。3月末に三宮にある東遊園地で設置工事が行われました。

ですが、いま見に行ってもこちらの写真のように、黒い布で覆われています。これは先住民の伝統にのっとって、魂が抜けてしまわないようにしているから。4月22日の命を吹き込む式典でこのカバーは外されます。それまではストーリーポールの姿を見ることはできません。

神戸市の公式noteの記事に写真を載せたいので、一瞬でいいので覆いを外してほしいと頼んでも、許してもらえなかったほどです。でも逆に、魂が宿っていると考えると、とてもミステリアス。どうやらただの木製の彫刻柱ではないようです。

作品には「絆を讃えて」と命名。クワルシゥスさんが表現しようとしたのは「つながり」です。神戸とシアトルだけでなく、世界の人々がつながろうという思いを、この作品に込めました。

4月23日(火曜)18時から三宮にある中央区文化センターで、トークイベント「シアトル市からやってくるストーリーポールを知ろう!」を開きます。クワルシゥスさんから制作秘話が聞けるほか、先住民族の伝統的な歌と踊りもご覧いただけます。

申し込みはこちらサイトから。4月18日(木曜)が締切ですが、先着順。行こうと思った方は、早めにお申し込みください。

<この記事を書いた人>
こひつじ /市長室国際課
国際課に配属されて3年目、まさかのストーリーポールを東遊園地に設置する仕事を担当することに。シアトル側との交渉だけでなく、巨大な作品の海上輸送の手配、東遊園地に基礎を施しての設置工事までやるはめに。いずれも人生初の稀有な経験だが、将来にこれが役立つことは、おそらくもうない…

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