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バルセロナでソムリエたちが日本酒と神戸ビーフを体験 その効果は?

昨晩、高級レストランで働いているソムリエたち約50人が集まって、日本酒の味わい方や料理との相性を説明を受けるイベントがありました。バルセロナにある日本の総領事公邸がその会場です。

そこに、姉妹都市30年ということで、特別に「神戸ビーフ」が、日本酒とあわせる料理として登場!

いや、でも、これってときどき自治体が海外でやっている、地元食材のPRをするための、ありふれたイベントと一緒なのでは… 

そう思っていました。

ところが、日本酒と神戸ビーフが、バルセロナでふつうに流通していて、簡単に手に入ると聞いて、お知らせしたくなりました!

つまり、今日来ていたソムリエたちが気に入れば、自分の店のメニューにする可能性=大と思ったからです。

地元食材をPRしても調達不可?

海外に地元食材を持参してPRイベントをしたとしても、現地で同じ食材が調達できなければ、料理に使ってもらうのは不可能です。

イベントにたくさんの人に来ても、「こんなのが日本にあるんだ。おいしいね」で、終了です。とくに、海産物や野菜にこのパターンは多いような気がして、ずっと意味があるのかなと疑問に思っていました。

日本酒はけっこう売っている

神戸から西宮にかけての「灘五郷」は日本酒の生産で、国内の4分の1を占めています。

じつは日本酒は、欧米だけでなく、世界各国でかなり流通しています。都市部ではふつうのスーパーマーケットで買えることも多いです。

日本酒の輸出量は20年前の5倍に増えています。神戸の酒造メーカーでも、白鶴や菊正宗など大手を中心に、海外をにらんだ販売戦略を進めてきました。

神戸酒心館の「福寿」というお酒は、日本人がノーベル賞を受賞すると、公式晩さん会で出されることで有名です。

難関は神戸ビーフ!

ところが、神戸ビーフはそうはいきません。海外の店頭やレストランでは、まずニセモノが多いです。

私も10年前にバルセロナから乗った船上で、「神戸ビーフミートボールのタリアテッレ」というメニューがあったので、注文してみると提供されたのがこれ。

巨大なミートボールに神戸ビーフを使うのは、お値段的にありえません。そこで、ウェイターに「神戸から来たんだけど…」と伝えると、「これはアメリカンコウベビーフだ」と、ありえない答えを言って去っていきました。

2015年にサンフランシスコで、神戸ビーフを振る舞うイベントをしたことがあります。ところが、現地では全く手に入らず、10キログラムのリブロースを空輸するのに苦労したのを覚えています。

ところが、今回は地元バルセロナの流通業者から仕入れた神戸ビーフを使っているのです!

©FRANCISCO ROMANO
©FRANCISCO ROMANO

これができるのは、神戸牛流通推進協議会(神戸市)から2017年に正式に認定を受けた精肉事業者がバルセロナにあるからです。スペインで2社だけ。しかも現在、30店以上のレストランに神戸ビーフを卸しているといいます。

こうなると食イベントの効果はてきめん。神戸ビーフと日本酒というマリアージュが、ひょっとするとスペインで広がるのではと思いました。

KOBE International Clubとは?

このイベントは、神戸市の委託事業でバルセロナにある「KOBE International Clubのバルセロナ支部」が開催しました。

いったい、それって何者でしょう?

2015年に久元喜造市長がサンフランシスコに訪問したときに、現地にある神戸大学のOB会組織と懇親会をしました。そのときに、神戸出身者やゆかりのある人がシリコンバレーに、かなりの人数が暮らし働いていることが判りました。

そこで、現地の人たちに神戸のことを伝えたり、逆に現地の耳より情報を神戸市に教えてもらう。言うなれば、海外版の「神戸の応援団」をつくろうとなりました。そしてできたのが「KOBE International Club」です。サンフランシスコはその第1号の支部となりました。

いまでは、世界各国で22の支部が活動しています。

バルセロナ支部では、4年前から日本酒のアピールに力を入れています。この12月にはマンガサロンで300人規模のイベントを開催予定。マンガサロンでやるのも3回目だそうです。

求められるのは本物の説明

きょう日本酒の説明をしたのは、ロジャー・オルトゥーニョさん。スペインを代表する「酒ソムリエ」として知られています。コメールハポネスという、スペインの人たちに日本の美食を紹介するサイトの創業者、ということはかなりの日本通です。

©FRANCISCO ROMANO

ロジャーさんは、神戸ビーフのリブロースやヒレ、トモサンカクといった部位別の特徴を説明。
さらに例えば、黒松剣菱に何が合うのか、同じ剣菱でも瑞祥(ずいしょう)にむいているのは何かまで説明していました。

ここまで専門性が高い日本酒イベントを見たのは、初めてです!

©FRANCISCO ROMANO

ロジャーさんの話を聞き入っていたソムリエたちは、神妙な面持ちでグラスを傾けていました。

イベントが終わってから、ソムリエ世界一に輝いたことがあるジョゼップ・ロカさんから、たまたま話を聞けました。

「日本酒には多様性がある。これだけ味わいに幅があると、肉の脂肪分によって組み合わせるべきお酒が変わってくる」

きょうの参加者によって、スペインで新しい日本酒の楽しみ方が広がっていくかも。そんな未来を感じた一日でした。

※トップ写真は©FRANCISCO ROMANOです。

<この記事を書いた人>
多名部 重則/広報戦略部長兼広報官、Forbes JAPAN Official Columnist
米国シリコンバレーの投資ファンド「500 Startups」との起業家育成を軸にしたイノベーション施策を2015年に立ち上げた。2020年から映像クリエイター・デザイナー・ライターなどを副業人材を登用して市の広報業務の変革に挑んでいる。博士(情報学)。
じつは、妻も公務員で西区にある桜が丘中学校の教頭先生をしている。公開前のnoteの記事を読むよう言われて、いやいやコメントしているとか。

多名部 重則 Forbes JAPAN 執筆記事

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