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バルセロナにもスパコンが! 世界的EXPOで神戸との共同発表が実現

日本でスーパーコンピュータ(スパコン)がある街といえば、神戸のことです。

理化学研究所がポートアイランドで2012年に設置した「京(けい)」、そして現在稼働中の「富岳」は、ビックデータ解析などの分野で世界一を達成しています。

ポートアイランドにある「富岳」

ところが、バルセロナにもスパコンがあります。昨日、バルセロナで開かれている「スマートシティ」の世界的な展示会で、神戸とバルセロナのスパコンの共同発表が行われました! 今日はその状況をお伝えします。


スマートシティってなに?

そもそも、スマートシティとは何のことでしょうか?

今回バルセロナに来ている神戸市のスマートシティの担当者に、もし中学生に聞かれたらどう答える?と聞くと、「うーん、そう聞かれると一番困るんです」と…

すると彼の上司が、すかさず突っ込みます。「技術やデータを使って生活が便利になって無駄がなくなる社会」といつも説明しているけど。

ですが、そう言われても中学生には難しすぎるような…

そもそも、スマートシティのスマートとは「賢い」という意味で使われています。直訳すると「賢い都市」という意味ですね。

例えば、満員になったサッカースタジアムで試合が終わって、全員が同時に帰ろうとすると、出口にたどり着くまで時間がかかります。ですが、客席別に席を立つ時間を変えたり、イベントなどで一部の人を足止めすると、人の流れがスムーズになり、全体としてスタジアムを早く出られるのです。

これをやるには、過去の試合における人の動きのデータを取って「賢い案内」をしなければなりません。

他にも、スマホのアプリで、タクシーを呼べたり、バスのくる時間を調べたり、駅の改札を通れるというのも、スマートな(賢い)社会の一例といわれています。

そんな取組みを進めている政府や自治体、大企業からベンチャー企業の人たちが世界中からバルセロナに集結するのが、「Smart City Expo World Congress」です。

日本の展示パビリオン

11月7日から9日までの間に、2万5000人が140カ国から集まる予定で、コロナ前とくらべても過去最大の規模だそうです。

元カトリック教会の中にスパコンが!

バルセロナにもスパコンがあるのにまず驚きました!

で、実際に見に行きました。旧市街から5キロメートルほど離れた閑静な住宅街。そしてきょう一番驚いたのが、この写真の元教会の建物のなかにスパコンがあったことです。

19世紀に建てられて1960年代までカトリックの教会として使われてたようです。

建物の中に入ってみると、天井と壁はキリスト教のゴシック建築です。ところが床にはコンピュータがところ狭しと並んでいます。

どうやら、柱のない広い空間が必要ということで、この建物が選ばれたようです。

2017年に稼働したときはヨーロッパでもトップクラスの性能でしたがすでに年月が経ったので、現在、新しいスパコンの導入を進めているとのことです。

阪神・淡路大震災と世界への貢献

スマートシティエキスポでは、神戸市を代表してDX担当局長兼デジタル監の正木祐輔さんが話をしました。

阪神・淡路大震災のあと、国内外からのサポートなくして、神戸の復興はなかった。世界に貢献できる都市でありたい。医療産業都市、スパコンという最先端技術で、国内外への恩返しをしていると熱く語ります。

これは会場で見ていた人に突き刺さります。神戸の震災のイメージは、いまでも全世界の人たちの記憶に残っているのでしょう。

よくにている街は課題もにている

昨年からバルセロナと神戸のスパコンは、「デジタルツイン」と呼ばれる共同事業をはじめました。姉妹都市のことを英語では「ツインシティ」ということもあり、それからとった名前だそうです。

スマートシティエキスポの共同発表に登壇した理化学研究所・計算科学研究センターの伊藤伸泰さんは、この事業を進めるために、昨年からバルセロナを何度も訪問しています。

離散事象シミュレーション研究チームチームリーダー 伊藤伸泰

バルセロナと神戸の発表を見ていて気づきました。両者のやろうとしていることが、とてもにているのです。

都市で人や車がストレスなく移動できる方法、電気や水道といったインフラを無駄なく使うための手法など、両者の問題意識が一緒でした。

前述した、スタジアムの話は、サッカーのイニエスタ選手が在籍するチームがあるような同じ規模の都市ならではの問題です。

理化学研究所の伊藤さんによると、スパコンの計算速度は神戸のほうが上回っているが、バルセロナの人たちは結果をわかりやすくビジュアル化するのが得意らしいです。こうなると両者にメリットがありますね。

姉妹都市:神戸とバルセロナ

スマートエキスポのような展示会にパビリオンやブースを出すには出展料を支払わなければなりません。逆にいうと予算があれば、大きなパビリオンを出せます。

それにくらべると、今回のような発表会を開催するのはハードルがグッと上がります。場所はもちろんですが、時間が取り合いになるからです。

ところが、スマートシティエキスポ会場のど真ん中のメインステージで、神戸市とバルセロナ市の共同発表は行われました。しかも、2日目の午前という人がどんどんやって来る時間帯です。

座席は満席。立ち見を含めると、事前の見込みの80人を大きく上回る150人近い聴衆でした。

このステージを使うには、事前に企画書を主催者に提出して、審査で選ばれる必要があります。

でも冷静に考えると、この発表会は神戸市とバルセロナ市との共同事業。世界的な舞台でいい形の発表ができたのは、エキスポをホストしているバルセロナと組んだのが鍵を握っていました!

<この記事を書いた人>
多名部 重則/広報戦略部長兼広報官、Forbes JAPAN Official Columnist
米国シリコンバレーの投資ファンド「500 Startups」との起業家育成を軸にしたイノベーション施策を2015年に立ち上げた。2020年から映像クリエイター・デザイナー・ライターなどを副業人材を登用して市の広報業務の変革に挑んでいる。博士(情報学)。
じつは、妻も公務員で西区にある桜が丘中学校の教頭先生をしている。公開前のnoteの記事を読むよう言われて、いやいやコメントしているとか。

多名部 重則 Forbes JAPAN 執筆記事

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