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神戸市の中学校給食、大改革が始まっている!~冷たいおかず脱却プロジェクト

いよいよ2023年度が始まりました! 神戸市が2月に発表した新年度の当初予算案には、「中学校給食の全員喫食制を推進」の文字があります。
(*喫食=楽しく食べること。予算発表の会見資料の25ページが該当部分です)

こんにちは、広報戦略部ライターのゴウです。神戸で生まれ育った私は、学校給食といえば「小学校のみ、中学校はお弁当持参」という認識で時が止まっていました。しかし、

・中学校給食を取り入れている自治体のほうが全国で多いこと
・(これまで、主に家庭でお弁当を作っていた)女性の社会進出

などの要因から、神戸市も少し前から中学校給食に取り組み始めたことは知っていました。

でも実を言うと、神戸市の中学校給食と聞いて最初に浮かんだのは「冷たいんでしょ?」でした。小学校と違って冷たいおかずが提供されているらしい、と聞いたような気がして、あまりポジティブな印象がありませんでした。

ところが、中学生のお子さんがいる広報戦略部の同僚は「うちの子どもは機嫌よく食べてますよ~」と言うんです。それほんまに? 市職員のポジショントークちゃうの?

気になったので、神戸市の中学校給食が今どうなっているのか、教育委員会に取材してきました。

取材に応じてくれたのは、教育委員会事務局 健康教育課長の川西聡子さんと、指導主事(栄養教諭)の前澤章起さんです。

川西さん(左)と、前澤さん(右)

先に結論を言うと、神戸市の中学校給食は、絶賛・大改革中!でした。
「少しでも温かくておいしい給食を」と奮闘する取り組みや工夫の数々を、順を追ってお話ししますね。

2014年から中学校給食開始

神戸市の中学校給食が始まったのは、2014年11月です。市内82校のうち、まず33校でスタートしました。

早期に導入しやすい方法として、民間事業者の調理施設で作った給食を各学校に配送してもらう「デリバリー・ランチボックス方式」を採用しました。

全校導入が実現したのは、2017年の2月。現在は、4つの民間事業者へ委託しています。

〈事業者一覧や献立など、神戸市中学校給食の概要を説明したページ〉

現在は、給食を利用するかどうかを1カ月ごとに選択できます。開始当初から徐々に利用割合は増え、2022年度は約48%と、半数近い生徒が給食を利用しています。

1食は、ご飯とおかずの2つのランチボックス、牛乳で構成されています(中学校給食では主食はすべてご飯で、パンの日はありません)。

ランチボックスは、全校で同じものが使われています。ポップでかわいい!今日は何色が当たるかな~と楽しみですね。

なぜ、おかずが冷たいのか

冒頭で広報戦略部の同僚のお子さんが「機嫌よく食べている」とお伝えしました。その職員がお子さんに給食をどう思うか聞いたところ、

●良いと思う点
・季節ならではのメニューが出てくる(桜餅など) 
・無理に全部食べなくてもいい(残しても弁当のふたを閉めれば分からない)

●改善してほしい点
・食べる時間が短い
・おかずが冷たい

とのことです。 

忖度なし! やっぱり「おかずが冷たい」が出てきました。2019年度におこなったアンケートでも、生徒の60.8%、保護者の75.5%が温かい給食を希望しています。

ではなぜ、おかずが冷たいんでしょう?

それは国の衛生管理基準で、「ご飯は65℃以上、おかずは10℃以下」で温度管理することが決められているからなんです。やはり食中毒防止などへの対応なんですね。

私(アラフォー)が小学生のころは、生野菜も給食に出ていたような記憶がうっすらあります。しかし病原性大腸菌O-157の食中毒が問題になって以降、基準が厳しくなって、今は加熱調理したおかずしか給食には提供されないそう。

教室での喫食風景

ご飯は65℃以上で保管するのでホカホカのものが供されるのですが、おかずは衛生管理基準上、10℃以下で保管せざるを得ないのです。

うーん、ルールなら仕方ないのか……。

温かい給食を目指して大改革

このままランチボックスの給食を続けるの? かといって、今から中学校に給食室を作るのは現実的ではないようだし……。温かい給食は実現できるのでしょうか?

「おかずを温かくしてほしい」という生徒や保護者からのニーズを受け、教育委員会は2021年の9月に、すべての中学生が温かい給食を食べることを目指した基本方針を決定しました。

すべての生徒と先生に必要な食数は約3万7000食。学校に給食室を作らずに、どうやって全員に温かい給食を提供するのか聞いたところ、これから給食センターを2か所整備するとのことです!

それだけでは全員分には足りないので「民間調理施設からの配送」と補完的に小学校から給食を運ぶ「親子調理方式」を併用するそうです。
まさに一大プロジェクトですね!

(*親子調理方式……小学校の給食室で中学校の分も調理して運ぶこと)

市がこれから計画を進めていくのは、以下の2か所です。

①(仮称)神戸市第一学校給食センター
場所:垂水区狩口台 
調理能力:1日あたり 最大9000食程度
配送エリア:おもに須磨区、垂水区
供用開始予定:2025年1月

②(仮称)神戸市第二学校給食センター
場所:西区見津が丘
調理能力:1日あたり 最大1万1000食程度
配送エリア:灘・中央・兵庫・北・長田区のうち1万1000食分
供用開始予定:2025年度中
 
上に当てはまらないエリアは民間が対応するということですね。
もちろん、民間委託分も今のランチボックス方式ではなく、センター調理分と同じで温かい給食を食缶で保管・運搬する食缶方式に切り替えますので、安心してください。

つまり2025年度中をめどに、生徒全員が小学校給食と同じように、毎日温かい給食が食べられるようになるんですね!

「温かいおかず」のために、少しでも

全員が温かい給食が食べられるようになるには、まだ少し時間がかかります。そこで教育委員会は過渡期である現在も「温かいおかずを少しでも」と、可能な範囲で工夫をこらしています。たとえば……

レトルト食品:月に2~3回
カレーやシチューなどのレトルトをごはんと一緒に温かく保管し、食べるときに容器に移します。もちろん、ごはんにかけて食べてもOK!

保温食缶の活用:おおむね月に1回
おかずのうち主菜を、保温食缶を使って温かいまま配送して提供。先生の情報によると、食缶の日は、生徒もとても楽しみにしているそう。

汁物:月に2回程度
10月~3月はみそ汁やスープなどの温かい汁物を、月2回程度、提供しています。

これらを組み合わせて、週に1回は何らかの形で温かいおかずを提供できるように工夫しているそうです。

献立や給食費が気になる!

いろんな取り組みをしている神戸市の中学校給食ですが、どんなところが魅力なんでしょう?

1食に詰まった栄養面での充実

生徒たちに喜んでもらおうと、前澤さんが中心となって日々の献立を考えています。

学校給食摂取基準で、生徒1人1食あたりのカロリーや栄養価が決まっています。季節のものやお楽しみ料理、生徒たちに食べてもらいたい食材を使用した料理など3~4品を組み合わせ、1カ月平均で基準を満たすようにしているそう。

生徒たちに必要な栄養や、予算の縛りのなかで季節のメニューも意識するとは……栄養士さんの頭の中って、どうなってるんですか⁉

食育も心がけて…
学校給食って、季節に応じた献立が出てくるのも楽しみですよね。先ほどの広報戦略部職員のお子さんも、給食の良いところとして「季節のメニューが出てくること」を挙げていました。

たとえば、5月には端午の節句に合わせて柏餅が出ます。

給食費の半額助成

気になる給食費は、1食あたり340円。2020年度からは全世帯に半額を助成しており、実際の保護者負担額は170円です。

栄養満点でこの価格ってちょっとありがたすぎません? 私が中学生に戻りたいくらいです(笑)!!

それにしても、最近はいろんなものの値上げが激しいですよね。スーパーの食品も1~2割アップは当たり前、倍近い価格になっているものもありますよね。

そんな中「値上げせずにがんばってます!」と川西課長。値上げ分は市の予算で補填し、保護者のみなさんから追加徴収をせずに済んでいるとのこと。助かるー(涙)! 

取材を終えて

取材を通して、月並みですが「今までやっていなかったことをゼロから導入するのって、めちゃくちゃ大変だな」と感じました。当たり前ですが、急に給食センターを建てられるわけじゃないので、一つずつ段階を踏んでいくんですよね。

「1日も早く、温かく栄養バランスのとれた安全でおいしい給食を届けたい!という気持ちで私たちも日々頑張っていますので、給食に興味を持ってもらえるとうれしいです」という川西課長の言葉から、子どもたちへの熱い思いを感じました。

この記事を読んだ中学生や保護者の方で、今まではお弁当派だった方がいらっしゃったら、新学期が始まったらぜひ一度、給食を申し込んでみてくださいね!

<この記事を書いた人>
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。
旅とバーとパンダが好き。

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