試してみたらスゴかった!神戸市役所でChatGPTの本格利用が決定
何を聞いてもスラスラと答えるChatGPT。もし、1年前に神戸市役所の業務で使うと言っても、誰も信じなかったと思います。
ですが、神戸市では2月1日から実際の仕事で使うと決めました。
ただ、ここにたどり着くまでに、昨年133人の職員があれこれと、ChatGPTがホントに使えるのかを試行錯誤したのです。
この記事では、そんなあれこれをご紹介します!
試行利用で一番注目されたのは?
昨年8月23日、ChatGPTを試してみた職員らによる発表会が、神戸市役所の某会議室で行われました。変な発表があるとカッコ悪いので、報道機関には非公開です。
さまざまな部局から9人が発表。ただ、SNSの投稿文やアンケート項目の作成など、誰でも思いつきそうな使い方がほとんどでした。
そんななか、参加した職員たちの目を釘付けにする発表がありました。
それは、新型コロナのワクチン接種をどう呼びかけるのかに、生成AIの力を借りようとするものでした。
当時は、コロナが第5類に引き下げられたので、それまでに比べて、ワクチンを打つ大事さがだんだんと人々の心から消えつつある段階でした。ところが、高齢者や基礎疾患を持つ人などには接種が有効。そんな呼びかけをどうやればいいのか、職員を悩ませていました。
発表した山本純子さんによると、まず、「ワクチン接種の対象者、10人の類型を書き出してほしい」と頼んだようです。というのは、山本さんの職場には、保健師など専門職がいます。なので、高齢者とか、持病を持っている人など典型的な人たちには、接種を呼びかけるべきとわかります。ですが思いもよらない、例えば高血圧で病院に行っていない若いフリーランスのような少数派の存在は思いつきません。
ChatGPTは、専門知識や長年の勘を持っていないので、単身女性とか、フリーランスの若者が普通にいると、淡々と書き出してきます。
これに保健師が想定した接種を呼びかけるべき人と重ね合わせることで、本当に呼びかけるべき人が、もれなくあぶりだされます。
次に、そこから類型ごとに、それぞれが通勤するとき、家にいたら何をしているのかを想定して、どう呼びかければいいのかを、ChatGPTに聞きます。
すると、SNSが有効な人、広報紙がよい人などが分類され、それぞれに何を訴えるべきかを答えてくれます。それを元に医療従事者などの話も聞けば、具体的な広報のやり方が見えてくると説明しました。
理路整然…
このような考え方は、一般の人に商品を売っている企業では「サービスデザイン」と呼ばれている考え方なのですが、市役所では新鮮でした。発表会のあと、彼女に「もっと詳しく教えて」と職員からチャットで多数の問い合わせがあったようです。
それどころか、この発表会を聞いていた久元喜造市長も関心を示したようで、後日山本さんから説明を受けたらしいです。
試行利用は延べ8500件
試行の期間は3か月。その間に133人の職員が計8500回以上、ChatGPTに質問を繰り返しました。じつに1人で一日1回以上の計算です。
そして、アンケートをとると、いろんな場面に使えそう!という職員が多数です。というのは、行政の職員は文章を書くことが多いし、新しいアイデアも求められます。生成AIは明らかにメリットがあると判断し、本格採用に踏み切ったワケです。
本格利用は何を変えるのか?
これまで神戸市では、マイクロソフトが提供するサービスを使った独自の環境でChatGPTを使っていました。ですが、今後は誰でも使える「Copilot(コパイロット:副操縦士)」というサイトを使うので、利用ハードルは一気に下がります。
あと画像生成も使うことにしました。この記事のトップにも使ったこちらの画像は「2050年の神戸市のイメージ画像を作成して」と指示したら出てきたものです。これがわずか数秒でできるというのは驚きですね。
こういった新たな機能も加わっていく生成AIで、神戸市が提供するサービスはどんどん変わっていくと思います。
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ただ、この記事のタイトル。ChatGPTに考えてもらった案は「試行利用で得られた驚きの成果とは?」でした。が、公式note編集長から野暮ったいと瞬時のダメ出し。で、「試してみたらスゴかった!」に修正されました。
かなり切れ味が増してます。どうやら、生成AIが人間を越えられない一線はあるようです!
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