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何がどうなったらSDGsなのか?受賞者から見えるヒント

SDGs。
このアルファベット4文字が「Sustainable Development Goals=2030年までに世界が達成すべき持続可能な開発目標」であることは、いまやほとんどの方がご存じでしょう。

でも、17個の目標が何と何だったかなんて正直覚えていないし、自分(自分の住んでいる地域)はできているか?と問われたら「それはちょっと……」という方も多いはず。

そう。当たり前のことほど難しいのです(キリッ)!!


今年が2回目、神戸SDGs表彰

ということで神戸市は、SDGsをがんばって進めている人たちを表彰することにしました。その名も「神戸SDGs表彰」。

2022年度に創設された賞で、今回が2回目です。

SDGs達成に向けてふさわしい取り組みをしている個人や団体を表彰することで、当事者にはモチベーションをより一層上げてもらい、周りの人には参考にしてほしい目的があります。

SDGsができてる人たちって、どんな人たちなんでしょう? 12月22日におこなわれた表彰式に、広報戦略部のゴウがお邪魔してきました!

SDGsなんて言葉のずっと前から

【大賞】NPO法人 Peace&Nature(ピース&ネイチャー)

イラン出身のバハラム・イナンルさんが代表を務める団体です。

バハラム・イナンルさん

代表が外国出身だから国際交流の団体なのかと思いきや、北区の大沢町をベースに休耕地再生や里山保全、無農薬農産物の栽培などをおこなう団体なんです。

(ピース&ネイチャー提供)

もともとは、イナンルさんのお子さんがアレルギー体質だったことから「安全な食べ物を自分たちの手で」と2003年に始めた活動だったんだそうです。

イナンルさんの奥様は、日本人の忍さん。国際結婚当事者のコミュニティの中で、同じくお子さんがアレルギー持ちだというドイツ人のウルズラさんも一緒に始めたんだとか。

それがいまや38ヵ国、約450人のメンバーが集まるコミュニティに。

(ピース&ネイチャー提供)

単なる農作業にとどまらず「自然から学び、課題解決に向けた取り組みのできるリーダーを育てる」というコンセプトで、近隣の大学や企業ともたくさんのパートナーシップを結んでいます(法人メンバーは39社!)。

このパートナーシップや20年も活動が続いていることが、とくに評価されました。

【奨励賞】獅子ヶ池を美しくする会

会長の竹内秀和さん

長田区の山側にある大きなため池、獅子ヶ池(ししがいけ)。阪神・淡路大震災後、池には産業廃棄物が不法投棄されるようになりました。

そこで2007年から、そのゴミを除いて池を甦らせただけでなく、池の周りに木を植えたりして憩いの場を整備をしたのが当団体です。

(提供:獅子ヶ池を美しくする会)

道にポイ捨てされたゴミを見つけたら「良くないなぁ…」と思っても、それを拾い上げる人って、そんなに多くないんじゃないでしょうか。

私は正直、できていません。つい「だって私が捨てたわけじゃないし」と自分の心に言い訳をしてしまう。

そんな中、不当に汚された池とその周りを美しくし、しかもその作業に近隣の学校も巻き込んで地域のコミュニケーション形成にも寄与しているところが評価されました。

【奨励賞】フォワードハウジングソリューションズ株式会社

代表の井上賢治さん

フォワードハウジングソリューションズは、住宅性能の評価や、耐震や省エネ、断熱工法の設計などをおこなう会社。

こうした「省エネ住宅」を建てると、施主(お客さん)が補助金を受けられたりローンで優遇されたりするので、これからの時代に求められる分野です。

今回の評価ポイントは、非常に高性能の断熱工法のノウハウを、工務店などに無償で(!)公開していること。

断熱工法の講習会(提供:フォワードハウジングソリューションズ)

でも、無償で公開しちゃって大丈夫?会社はどうやって儲けてるの?
という素朴な疑問を社長の井上さんに聞いてみると……

「ノウハウの提供は無料です。工務店がその工法を使う仕事を取れたときに『うちで設計・サポートさせてくださいね』という仕組みにしているんです」

なるほど! ビジネスって仕組みづくりが本当に大事なんだなぁ。

【功労賞】株式会社 神戸牛牧場

代表の池内洋三さん

神戸牛牧場は、西区櫨谷(はせたに)町にある牧場です。1968(昭和43)年創業、育てている牛は約4500頭と、関西でも最大規模の老舗牧場なんだそう。

(提供:神戸牛牧場)

そのままだと産業廃棄物になってしまう牛の糞尿を、堆肥にする取り組みをおこなっています。しかも、ここ10年、20年の話ではなく創業当時から!!すごい「先見の明」だ……。

その堆肥を神戸市内外の農家や市民農園が、土づくりのために活用しているのだとか。廃棄物まで地産地消できているのですね。

堆肥をつくっている様子(提供:神戸牛牧場)

そんな牧場で愛情こめて育てられた牛さんのお肉は、「六甲のめぐみ」「マルシェ六甲」「マチマルシェ御影」の3つの直営店&オンラインで買うことができますよ。

SDGsという目標が国連で採択されたのは2015年ですが、そんな言葉が生まれるずっと前から、みなさんはSDGsを続けてきたんだな……ということが伝わってきました。

私がいいなと思ったのが、受賞4団体のうち2つが、利益を追求する株式会社であること。

SDGs的な「地球にいいこと」「みんなにいいこと」って、資本主義経済における「成長」「儲かる」とは逆行することが多いので、二の次にされがちです。

だからこそ株式会社が表彰されることで、「成長」しながら「地球にいいこと」につなげられるんだ!と思う会社が増えればいいなと感じました。

自然につながり始めるみなさん

表彰式で久元喜造市長は

「SDGsは多くの人が口にするが、本当に実行するには強い意志が必要だと思います。多くの市民や事業者の方が、みなさんの活動を大いに参考にしてSDGsの取り組みに参画してくれればと願っています」

と、みなさんにお祝いと労いの言葉を送りました。

表彰式が終わったあと、とくに交流会があったわけでもないのですが、受賞4団体のみなさんが自然と言葉を交わし、互いの取り組みを紹介しあう姿が見られました。

そこに社交辞令っぽさはなくて、本当に他の団体から学ぼうという感じが伝わってくるんです。

SDGsという言葉は壮大な目標のように感じてしまいますが、そのヒントは自分の「ちょっとだけ外側」に関心を持ち、それも「自分ごと」として考えることなのかもしれないな……。

みなさんの活動内容や外部へのスタンスを見て、そう感じた表彰式でした。2024年は「自分ごとの枠を広げる」を意識して生活してみようかな。

(バナー写真:ピース&ネイチャー提供)

〈この記事を書いた人〉
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。
旅とバーとパンダが好き。

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