六甲アイランドの美術館で絵本の原画展 神戸の老舗出版社が特別協力
六甲アイランドにある小磯記念美術館。
老朽化した部分の改修で3カ月あまり休館していましたが、工事を終えて先週からリニューアルオープンしました!
夏休みを控えて、楽しい特別展が始まりましたよ~。「絵本の旅――グリム、世界の昔話、ゆかりの作家と神戸の出版文化」です。
開会前日の7月12日におこなわれたオープニング式典で、久元喜造市長は「子どもの頃は、よく動物が登場する絵本を読んでいた」と思い出を語りました。
60年以上経っても鮮明に覚えているほど、絵本って記憶に残るものですよね。
今回は、33人の作家による絵本原画と関連資料が220点(!)も展示されています。どんな絵本があるのでしょう? 広報戦略部ライターのゴウがお伝えします。
バラエティに富んだ絵本原画たち
まずは、神戸在住のスズキコージさん。パワフルな筆致と色で神戸の風景を描いた『コーベッコー』を見ると、元気が湧いていきます。
ご本人も来られていました。右側は、同じく作品『七人のシメオン』が展示されている大畑いくのさんです。
永田萠さん絵・杉本深由起さん作の『やくそくするね。』は、阪神・淡路大震災を題材にした絵本です(「ね」は小文字)。
この絵本が発刊されたのは2002年。会場に来ていた作者の杉本さんは「震災から数年は書けなかった」とおっしゃっていました。
永田萠さんの優しい絵が、悲しくも温かみを感じさせますね。ルミナリエの絵は、胸の奥がギュッとなります。
『アリのメアリ』は、なんと切り絵なんです!絵本ではわかりづらい紙の重なりやふくらみを、ぜひ間近で見てくださいね。
神社でかくれんぼをする『もういいかい』の作者は、作品の世界観を自身がよりイメージするために、神社のジオラマまで製作!
私が好きだなと思ったのは、スウェーデン・サーメのむかしばなし『巨人の花よめ』です。登場人物の衣装が、背景になった北欧の暗い森にパッと明かりをともしてくれるようです。
心にズシンと重いものを残したのは『アネモネ戦争』。これだけは原画でなく、説明文をシェアさせてください。みなさんはどう感じましたか?
いろんなテーマ、いろんな切り口の絵本が目白押しです。
一般に、絵本は子ども向けというイメージがありますが、大人こそ、作品の根底にある深いものを感じられるのでは?という本もたくさんありました。
展示作品の絵本は、すべてミュージアムショップで購入できますよ!
気になった絵の絵本を見て、やっぱり展示室に戻ってもう一度原画を間近で見て……と行ったり来たりしていました(笑)。
筆づかいや絵の具の盛り上がりなど、原画からでしか感じられない「力」を受け取ってくださいね。
実は全部、神戸発なんです
今回の展覧会に出品された絵本は、すべてひとつの出版社から発刊されています。その出版社とは、神戸市兵庫区にあるBL(ビーエル)出版株式会社です。
たいへん失礼ながら私、ライターなのにBL出版のことを初めて知りました。出版社って東京に集中していると思い込んでいたので……。
しかも興味深いのは、今回の出展作品のうち、約7割が2010年以降に発行された最近の絵本なんです。2020年以降のものもたくさん。
だから作家さんも現役で活躍中の方ばかりで、絵のタッチなども現代の感覚にフィットするものが多かったように思います。
大人が子どもの頃に親しんだ「なつかしい絵本」を見るのではなく、新しい作品に出会える展覧会なんですね。
このBL出版、かつての社名は「ブックローン」でした。一定の年代以上の方は、そちらの名前のほうがピンと来るかもしれません。知育絵本の「チャイクロ」を発行している会社です。
グループ会社には西神中央や名谷などにある喜久屋書店があり、なんとジュンク堂も、同じグループだったとのこと!(今は別のグループです)
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神戸には本や出版のジャンルでも歴史があって、今も良質な絵本が発信され続けていることを知れて、誇らしい気持ちになりました。
小磯良平作品とアトリエもぜひ
「絵本の旅」展の入館料で、小磯良平の作品も見られますよ。
そして、おなじみのアトリエも健在。ミントグリーンの鴨居や窓枠と、陽が降り注ぐ大きな窓が大好きなんです。
実は、小磯記念美術館が絵本の展示を開催するのは初めてなんだそうです。
「小磯記念美術館に来たことのない方が、『絵本の旅展』をきっかけに小磯良平の作品に親しんでくれたら」と担当学芸員は話していました。
特別展「絵本の旅――グリム、世界の昔話、ゆかりの作家と神戸の出版文化」は、9月23日(月祝)まで開催中です。
▼詳しくはこちら(バナーをクリック)
暑~い夏休み、クールスポットとしての利用も兼ねて、絵本の世界に浸りにきてくださいね!
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