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神戸市の図書館がスゴいのは知ってたけど、図書館司書はもっとスゴかった

神戸市にはなんと「12」の公共図書館があります。最近は「東灘図書館」「北神図書館」「三宮図書館(仮移転)」「西図書館」が移転・開館し、「名谷図書館」が新設されました。

でも、建物がオシャレになって、本の数が増えただけではありません。勉強したり遊んでみたり、ときにはリラックスする場所として、ますます自由に過ごせる場所になりました。神戸市は昔もいまもこれからも、ずっと「図書館のまち」なんです。

木材をふんだんに使った名谷図書館

そんな図書館のしくみを支えるのは、もちろん「ひと」。たとえば、図書館司書というおしごとです。でも、どんな人たちで、なにをしているのか分からないですよね。ぼくも図書館を「本を借りるだけ」でしか使っておらず、図書館司書の存在をあまり気にかけたことがなかったんです。

「え、そもそも図書館って本を借りるところでしょ。というか神戸市って、図書館に行かなくても本を借りられる便利なサービスあるやん」と思った方は、もう少し読み進めてみてください。

(ベンリな予約図書自動受取機はあるんですが…↓)

図書館司書にお話を聞くと、図書館に行くべき理由がたくさん見つかったのです。そのおしごとの幅広さとスゴさに驚いて、思わずお茶をこぼしそうになった広報戦略部の中村がレポートしますっ。

「茶色」って言うけど、実際のお茶の色って緑だよね。変じゃない?

ところで、ぼくがこぼしそうになったお茶は「緑」でした。ん、なんだかおかしいぞ。なんで茶色でもないものを「お茶」っていうんだ。検索してもイマイチ出てこない。こういうこと、だれに聞いていいのかなぁ。

司書「どうぞどうぞ。まずはお茶についての本を見てみましょう。『煎茶全書』によると、茶色は茶を煎じた色とのこと。江戸時代になるまで、日本で一般的に飲まれていたのは煮沸して作られた茶色のお茶で、これを使って染料としていたのが、茶色の語源とのこと」
ぼく「そうなんですね! なんだかお茶のことをいろいろ調べたくなってきました」
司書「それなら2階の神戸ふるさと文庫にも行ってみてください。神戸とお茶の関係が調べられますよ」
ぼく「ほえーーーーー行ってみます」

~2階へ~

2階司書「この2万分1地形図「神戸」(明治18年測量)を見てください」   
ぼく「あっ、いまの王子動物園の西あたりに、茶畑(∴)の地図記号が広がってる!明治時代、神戸で茶を栽培していたのですね。地図記号でいろんなことが分かるんだなあ。ちなみに、地図記号について詳しく書いた本はありますか?」
司書「『地図の記号と地図読み練習帳』『地図記号のひみつ』などの本があります」
ぼく「ほえーーーーー借りてみます」

ちょうど「お茶」の企画展示もやっていたぞ

本とひとを「つなげる」しごと、本とひとが「つながる」場所

これ、すごくないですか。知りたい情報のことだけでなく、関連するほかの本や知識にまでアクセスができました。

「わたしたちのおしごとは、図書や資料と利用するひとを『つなげる』ことなんです」と、神戸市中央図書館の図書館司書である問屋(といや)さんはいいます。

こうしたおしごとのひとつが「レファレンス」です。市民のみなさんが資料や情報を探したり、調べたりするお手伝いをするサービスなんですよ。

「図書館に来なくても本は予約できるし、地下鉄海岸線三宮・花時計前駅には予約図書自動受取機もあります。だからこそ、いま図書館に来てほしい。図書館には予想外の結びつきや偶然の発見があります。そして図書館にいるわたしたちになんでも聞いてみてください。ほら、市民のみなさんからこんなことを聞かれたことがあるんですよ。」

ふふふ、と楽しげに話す問屋さんが見せてくれたのは、これまでの膨大なレファレンスの記録。そのビックリな質問をほんの少しだけご紹介しよう。

「有吉の『花火』ってありますか?」(え、有吉だっけ…?)
「キティちゃんの彼氏が知りたい」
「人間の舌の長さを知りたい」
「オウムはなぜしゃべることができるの?」
「アルファベットはなんであんなカタチなの?」
「しりとりあそびで使える言葉は名詞だけ?接続詞はダメなの?」
「明治42年神戸で開催された「マラソン大競走」のコースは?」
「『地球よさらば〜』ではじまる歌があるが、なんという曲だっけ」
「セミの鳴き声の大きさは?」

なななななな…なんだこれは!? みんな質問が自由すぎるぞ! ぜんぶに答えるんですか?

「もちろん人生相談など回答できないのもありますが、基本的にはぜんぶお調べします。特に『六甲山の名前の由来を知りたい』など神戸のことなら、地元ならではの資料を駆使してお調べします。ただ、夏休みの宿題や課題は、答えそのものをお伝えすることはしません。(笑)」よいこのみんな、課題はじぶんでやるんだぞ!

「求められている回答を出すだけじゃなくて、いくつかの資料にじぶんの力であたってもらえるよう工夫して案内しています。」
「司書の役割は、図書館資料を使って情報を提供したり、情報のあるところを案内したりすることです。こんな分野の本、あんなサイトでも調べられますよとさまざまな方向を探ります。それができるのも図書館だからこそ。ひとつのテーマからいろいろ発展していく面白さがこの場所にあるんです。」

たしかに、回答を読むだけでもっともっと知りたくなる。図書館ではたらくひとと、こんなコミュニケーションができるんだ、やってもいいんだ。なんだか図書館を使うハードルが下がった気がするぞ

神戸市の図書館のスゴさは、「レファレンス・サービス」にあった!

すかさず意地悪な質問をしてみる。でも、図書館のレファレンス・サービスって神戸市だけじゃないですよね!?

「もちろん全国で図書館員ががんばって応えています。なかでも神戸市は、昭和26年からレファレンス専用電話サービスを真っ先に導入するなど、レファレンス・サービスの長い蓄積があり、その調査スキルは今のレファレンス担当司書に引き継がれています。」

生意気言ってすみませんでした…。戦後間もないころから(昭和20年代から)志智嘉九郎(しち かくろう)図書館長のもとで、公立図書館のレファレンス・サービスの基本的な方針がつくられたそうです。神戸市の図書館、強すぎる。

電話をはじめとしたレファレンス・サービスについてはこちら

「では図書館のなかも少しご案内しましょう。調べものに使う事典にはじつにさまざまな分野のものがあるんですよ。たとえばこれ、小説のなかの登場人物事典とか、架空地名大事典とか。世界中の文学で出てくる登場人物や地名を調べることができます。」

ニーズが特殊すぎる!

「昔は1枚1枚のカード目録で図書を管理・検索していました。いまそれらの図書情報はコンピュータ目録となり、インターネットでどこからでも検索できます。」

なるほど! つまり、図書館資料そのものだけでなく、図書の情報を整備している図書館司書という存在が「知のデータベース」の構築に関わっているんだ。すごいなぁ。

と言っているそばからズンズンと書庫の奥へ進む問屋さん。迷ってここから出てこられないひと、これまで何人もいたんじゃないですか? 

書庫には天井まで積み上げられた新聞の束や、棚に詰まった本の数々。

「ここにずっと眠っている昔の資料が、だれかに求められるときがあるんですよ。それを書庫から取り出すときになんだかうれしくなります」と、古書のなんともいえないにおいに包まれながら、問屋さんは柔かにいいます。

さいごは図書館の一般フロアへ。利用者のみなさんがのびのび過ごしていましたよ。

「フロアでさりげなく表紙を向けている本は、図書館員の『これ借りて!』という想いが出ているんです。そして貴重な本や時流に合わせた本の特集展示もしています。こうした取り組みは、じつは図書館ごとに工夫を凝らしているんですよ。本と本が響き合っているような、そんな結びつきを図書館のなかで感じていただけたらうれしいです。」

 たくさんの本がじぶんの出番を待っている。図書館ではたらくひとは、その本たちと毎日のように会話しながら、つねに最高の環境を整えている。なんだか、やさしい雰囲気でウェルカムだ

ぼくが図書館司書をつうじて知りたかったのは、もしかするとこういうことだったのかもしれない。

神戸市立図書館
*1月31日から、新たなサービスが増えてリニューアルオープン!
スマホ版図書カードや貸出履歴の確認など、もっと便利になりました。
詳しくは↓

<この記事を書いた人>
中村 紀彦/広報戦略部広報コンテンツライン
2020年4月に「デザインクリエイティブ枠」という新しい採用枠で職員になった。大学院の博士課程後期課程までいき、タイの映画監督・アピチャッポン・ウィーラセタクンの研究者として業界では知られているとか。
神戸市公式Twtterの中の人の一人。「はぁ…」というため息を夜10時ごろ前触れなく投稿し、900万回の表示回数を記録したレジェンドでもある。

ねとらぼ「Twitterのため息記事」

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