ドローンを足で操縦 女子高生が国内初、花火の8K空撮を実現
日付は2023年10月16日~20日。コロナ後、分散開催となった「みなとHANABI-2023-神戸を彩る5日間」が行われました。毎夜10分間、音楽に合わせて打ち上げられた色とりどりの花火。
そんな花火に交じって、人知れず夜空を飛んでいたものがあります。それは、ドローン。
広報戦略部では今年、初の試みとしてドローンによる花火の空撮を行いました。終わってみたら神戸初だけでなく日本初だらけとなった撮影の舞台裏を、広報戦略部のPONがお届けします。
最年少で最難関の国家資格を取得した高校生ドローンパイロット
きっかけは、30年以上前からチャレンジド(障害のある人)の就労支援に取り組んでいる社会福祉法人プロップ・ステーション理事長の竹中ナミさん、愛称「ナミねぇ」のこんな一言でした。
「宮﨑美侑(みゆう)ちゃんに神戸の花火、撮ってもらったらどうやろう」
美侑さんは生まれつき両手が不自由なため、足でドローンを操作する高校生ドローンパイロット。以前、このnoteでも紹介しています。
美侑さんはナミねぇが事務局長を務める一般社団法人ユニバーサル・ドローン協会で技術を磨き、今年7月、最難関といわれるドローン操縦の国家資格「無人航空機操縦士」一等の試験に、史上最年少の16歳で合格しました。
<以前のnote記事>
神戸では来年5月、東アジアで初となる世界パラ陸上競技選手権大会が開催されます。大会を契機として障がいのある人の活躍の場を広げることは、開催地として大きな意義があります。
それに、花火の空撮は神戸市としてこれまで一度もやったことがなかったため、「みなとHANABI」の撮影を行うことにしました。
そもそも、花火ってどうやったら撮影できるの?
ドローンは法律に基づき「自由に飛ばせる場所」「許可が必要な場所」「禁止されている場所」が区分されており、無許可で飛ばしたり、禁止されている場所で飛ばしたりすると法律違反になります。
「みなとHANABI」のメイン会場であるメリケンパーク周辺は「空港等周辺」「人口集中地区」です。しかも、花火の撮影は「夜間飛行」「催し物やイベント上空での飛行」「人や物件との距離が30メートル未満の飛行」となるため、国土交通省への事前申請が必要な「特定飛行」の要件に5つも該当します。
安全面の措置をきっちりと行ったうえで許可・承認を得なければ、ドローンを飛ばすことはできません。
このため、美侑さんの講師であり、サポート役として撮影にも携わる国際ドローン協会代表理事の榎本幸太郎さんは、10月の撮影に向けて、大阪航空局をはじめ関係各機関への申請手続きに奔走しました。
<国土交通省HP:無人航空機の飛行許可・承認手続>
万が一、海に落ちたら潜って回収
また、ドローンは携帯電話の電波と同じ周波数を使うため、1万人を超える人出が見込まれる「みなとHANABI」では電波が混信し、最悪の場合、ドローンが制御不能になる恐れも。
そんな不安を払拭するため、榎本さんが電波干渉の影響を受けにくい最新の高性能ドローンを用意してくれました。そのお値段、なんと1台ウン百万円!しかも搭載カメラは8K。8Kカメラによる花火の空撮は日本初です。
ちなみに、万が一ドローンが海に落ちたら、ダイバーを雇い、潜って回収しなければなりません。高価な機体がもったいないからではなく、港の安全を守り、海の水を汚さないためです。
いよいよ本番
そして迎えた、「みなとHANABI」当日。今回の撮影は10分と時間がとても短いうえ、やり直しがきかないため、美侑さんのサポートには榎本さんに加え、一等資格を持つ塚田さんも入ってくれることになりました。一等資格保持者が1人も揃った花火の撮影は、これまた日本初です。
風が強く、時おり小雨も降るあいにくの空模様の中、美侑さんたち撮影スタッフは花火開始の数時間前から現場入りし、飛行ルートや手順を1つずつ確認していきます。
強い海風や気温の落差は体に堪えたはずですが、美侑さんは本番に向けて足を温め、集中力を高めていきます。
そして迎えた18時30分。ドローンが離陸し、いよいよ撮影が始まりました。榎本さんたちが見守る中、モニターをじっと見つめながらドローンを操縦する美侑さん。対岸では美しい花火が上がり、かすかに音楽も聞こえてきます。
何とか無事に終わってほしい、違法ドローンが飛んできませんようにと祈りながら、長くも短くも感じられた10分間でした。最後の花火が上がってから数分後、ドローンが戻ってきました。
*違法ドローン…許可の必要な場所で無許可で飛ばしたり、禁止されている場所で飛ばしたりするドローンのこと
スタッフ一同、緊張感から解放され、現場にはホッとした雰囲気と笑顔があふれていました。
美侑さんが撮影した「みなとHANABI」の動画は、神戸市公式YouTubeに掲載しているほか、市役所1号館1階ロビーや24階展望ロビーでも放映しています。市役所にお越しの際は、ぜひ大画面で1000万ドルの夜景と花火が織りなす、神戸ならではの光の響宴をお楽しみください。
違法ドローン対策にも期待
余談ですが、最近になって榎本さんから朗報が届きました。
今回の「みなとHANABI」でも主催者が対策に頭を悩ませた違法ドローン。榎本さんは、違法ドローンの電波を乗っ取り、自動で強制着陸させる機材を見つけ、年明け1月に実証実験を行うそうです。
ドローンの機体に表示されている登録番号もモニターに写し出されるため、持ち主は言い逃れができません。でも、本当はそんな機材を使わなくて済むのが一番。
花火の空撮は、そもそも危険を伴うので、綿密な事前調整や手続きに加え、たくさんの人たちの協力が求められる大仕事です。
ドローン愛好家の皆さん、勝手にドローンを飛ばして花火を撮影することは、言うまでもなく法律違反です。そのことを肝に銘じて、「みなとHANABI」は、ドローンを使わずに楽しんでくださいね。
<関連記事>