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神戸の夜って楽しい?事業者たちが抱える課題とは

ここ数年でちょくちょく聞くようになった「ナイトタイムエコノミー」という言葉。

直訳すると「夜の経済」。観光庁では「18時から翌朝6時まで」と定義していて、ほかに「日没から日の出まで」という解釈もあります。

要するに「夜の街をもっと楽しもう!そして経済を元気にしよう!」という取り組みですよね。

もともとは「日本の夜の街は外国に比べておとなしいのでは?それではもったいない!」というインバウンド(外国人観光客)戦略として注目されるようになった言葉です。

【観光庁が発行する「ナイトタイムエコノミー推進に向けたナレッジ集」】

ただ神戸のナイトタイムエコノミーは、インバウンド戦略とはちょっと起点が異なります。

12月13日、ナイトタイムエコノミーにたずさわる事業者のみなさんが一堂に会し、久元喜造市長と意見交換をするフォーラムが初めて開催されました。

どんな意見が出たんでしょう?
バー通いが好きな広報戦略部のゴウが、その様子をお届けしますね。

神戸のナイトタイムエコノミーの課題は

ナイトタイムエコノミーにおいて神戸が抱える課題は、ずばり!

夜の街に人が少ないこと。

フォーラム参加者で、一度神戸の外に出て戻ってきた人は「夜に出歩く若者が減ったと感じた」と言っていました。

ずっと神戸住まいの私さえ、コロナ以降、制限がなくなった今も「前に比べて少なくなったな」と感じます。金曜の23~24時台の電車なんて、以前はもっとギューギューでしたもんね……。

久元市長もつねづね「とくに21時以降の人出が少ない」と口にしています。

22時くらいで閉めてしまう店も前より増えましたし、店側だって「早じまいしたいわけじゃないけど、人が来ないから……」と、負のスパイラルが生まれつつあります。

もちろんコロナの影響も大きいでしょうし、大阪と近いゆえに神戸に来ても「泊まりは大阪で」という観光客が少なくないこと、スタッフの働き方改革の観点など、複数の要因が合わさっているのでしょう。

ですから神戸の場合、インバウンド戦略というよりも、まず地元のみなさんにもっと夜の街を楽しんでもらい、その次の段階として観光客(国内・外国人)が増えたら……という順序でナイトタイムエコノミーを考える必要があります。

神戸の夜って、何が魅力なん?

じゃあ、神戸の夜の街のコンテンツにはどんなものがあるでしょう?

おいしいレストラン(神戸牛はしょっちゅう食べられませんが、昔ながらの洋食や趣向を凝らした新進気鋭のお店もたくさん!)、素敵な雰囲気のバー、ライブハウス、ジャズバーも数多くありますね。夜景やイルミネーションも、立派なコンテンツ。

〈ジャズライブハウスに初訪問の記事〉

ちょっと、めっちゃあるやん!
こんな神戸の夜が、つまらないわけがありません!

お店だって、すべて早じまいしているわけではなく、24時や日付けが変わっても開いているお店もけっこうあります。

でも、それがあまり知られていないのが課題なんじゃないか。
フォーラムではそんな意見も出ました。

そのため、今年だけでもナイトタイムエコノミーやコンテンツに関するさまざまな事業に、神戸市はサポートをしてきました。

3月に開催した「こたつナイト」や、7~11月に東遊園地で開催した「ナイトピクニック」、

そして11月末~先日まで開催していた「バーホッピングキャンペーン」など……。

これらは、事業ごとに事業者と神戸市がやりとりする形でした。

ここから、もっと神戸全体で取り組んでいきたいよね!と、ナイトタイムエコノミーに関わるみなさんが初めて集まったのが、今回のフォーラムなのです。

バーテンダーから光のアーティストまで

フォーラムに登壇したのは、

・バーテンダー 宮森和哉さん
・ライブハウス店主 南出渉さん
・イベント企画 高橋裕子さん
・LEDを使ったメディアアーティスト 藤本実さん
・神戸電子専門学校校長 福岡壮治さん
・ブランドマネジメント 岩野翼さん(コーディネーターとして)

というメンバー。みなさん、ジャンルはさまざまです。ここに久元市長が加わります。

聴衆は、一般の方ではなくナイトタイムエコノミーの関係者を対象に。そして、パネラーも聴衆もビールを飲みながら。

ざっくばらんな雰囲気の中で、忌憚なく意見交換できるようにとの工夫だな……と、この回の本気度を感じました。

ビール効果もあってか(?)予想以上に盛り上がり……

久元市長
「僕が育った半世紀前の新開地は、夜まで人だらけでしたよ。僕も小学生ながら、夜10時半や11時まで遊びまわってました」

左から、藤本さん、福岡さん、久元市長

え、え、市長⁉ そんなやんちゃな過去があったのですか(笑)?
こんな市長の爆弾発言(?)に触発されたのか、本当にいろんな意見が出たのですが、私が印象に残ったものをいくつか紹介すると

バーテンダーの宮森さん
「バーテンダーはおいしいランチの店やいい感じのスポットをよく知っているので、街の案内人として頼ってもらえれば」

ライブハウスの南出さん
「神戸のライブハウスの数はあるし、バンドもけっこういる。けれど、お客さんが少なくなっている。また、バンドがライブの後に打ち上げをする店が少なくなって、遠方のバンドに敬遠されることも出てきた」

「民間の店が『うちは関係ない』じゃなく、どれだけがんばるかにかかっているんじゃないか。スタッフが長時間働きたがらないけど……」

ブランドマネジメントの岩野さん
「夜遊びの場じゃないと出会えない『人』や『こと』って、ありますよね」

イベント企画の高橋さん
「いま一緒に仕事をしているメンバーはほとんど、若い頃にクラブで出会った人たちです」

左から、南出さん、宮森さん、高橋さん、岩野さん

神戸電子の福岡さん
「ナイトタイムエコノミーを振興するには、市民自身のナイトカルチャーがベースにあることが大事。ジャズが入ってきたときも『危ない音楽』だったはずだが、それを神戸っ子は受け入れた。そんな港町の気風を維持したい」

メディアアーティストの藤本さんは、オーストラリアのシドニーで観光の閑散期に約3週間おこなわれる光・音楽・アイデア・フードのイベント「Vivid Sydney(ビビッド・シドニー)」を紹介しました。

このイベントは、会場が1カ所ではなく分散型で回遊性があること、まち全体でこのイベントを作り上げているなどの特徴があるそう。

久元市長は、このVivid Sydneyに興味津々。来年1月に生まれ変わるルミナリエを分散型にしたこととも重ね合わせていたようです。

最後に高橋さんが「何かに力を入れようとすると、反発はつきもの。でも強い信念をもって、神戸のナイトタイムエコノミーを活性化できればと思います」と言っていました。

私は“夜遊び”の頻度は低いものの、バーなど、夜ならではの雰囲気が好きなので、みなさんから出てくる意見に「うんうん、ほんまや」と共感するところが多かったです。

たしかに、働き方改革の文脈とは相容れない部分もあるかもしれません。でもやっぱり、夜も魅力的な神戸であってほしいな。

これから忘年会・新年会などで、夜に出歩く方も多いでしょう。誰かとの約束のための外出に1回ぶんプラスして、自分自身のための“夜遊び”に出かけてみませんか?

〈この記事を書いた人〉
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。
旅とバーとパンダが好き。

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