見出し画像

神戸・有野町の特産品 店頭に並ばない、まぼろしのイチゴの正体は?

海と山に囲まれた神戸には、思いがけない特産品がいくつかあります。須磨でとれる海苔や酒米の山田錦がそうです。

今回はその一つである「いちご」のことを、お伝えしたいと思いました!

今日から新年度、神戸市公式noteでは新連載「たっぷりどっぷり北区の魅力」がスタートし、この記事がその第1弾です。

ご紹介するのは、神戸市北区、六甲山の北側にある有馬温泉のさらに北にある「有野町」で栽培されている「二郎(にろう)いちご」です。

スーパーなどの店頭では買えないので、まぼろしのイチゴとさえ言われているのです。

食べるならいちご狩りか直売所

栽培が始まったのは100年以上前。稲作が中心だった旧有野村の人たちが、西宮・旧鳴尾村で作られていたいちごに着目して、新しい特産品にしようとしたと伝わっています。

店頭に並ばない二郎いちごを食べるには、二つの方法しかありません。

一つは、有野に行っていちご狩りをするです。が、人気です。1か月先まで予約が埋まっているのは当たり前、2か月先もなんてことも…

もう一つは、直販所。ここも同じで、夕方ごろに行くと店には売り切れの看板が。店主が言うには「午前中にはほとんど完売する」とか…

スーパーの店頭で買えない理由

そんなに人気があるのなら、スーパーやデパートで売ったらいいのにと、誰もが思います。

でもそうしないのは、二つの理由があるからでした。

一つ目の理由は、いちご自体、収穫したときが一番おいしいからです。

フルーツでも桃、メロン、バナナなどは、冷蔵庫に入れずに、日の当たらない15−20度で置いておくと、甘く、柔らかくなり、香りも増します。

これは「追熟」と呼ばれ、エチレンガスという植物ホルモンが果物の中で発生するからということが判っています。

ところが、イチゴは追熟しません。ブドウや梨もそうです。〇〇狩りがある果物ですね。

だから、収穫してすぐ食べるのが、一番おいしいのです。スーパーで買ったものより、いちご狩りのほうがおいしいと感じるのは、気のせいでなかったようです。

もう一つの理由は品種です。じつは「二郎いちご」は品種名ではなく、有野町の二郎地区で作られたいちごという意味です。

実際には、この地区ではさまざまな品種が栽培されています。ただ、最近ほとんどを占めるのが「章姫(あきひめ)」という品種。果肉が柔らかく、果汁が多いのが特徴です。ただ、長距離・長時間の輸送をすると傷みやすいという欠点があります。

鶏が先か、卵が先か…

いちご狩りで楽しむか、直販所で買って新鮮なまま家で食べる。そんなイチゴのベストの味わい方が、この章姫でなら実現できる。そんなふうに考えた、いちご農家たちの選択の結果だと思いました。

農家たちのこだわり…

スーパーやデパートに出荷されていないのは、当たり前なのかもしれません。

イチゴ栽培に適した有野町

有野町の二郎地区には、いちご栽培に適した、水はけのいい土、ミネラルを含んだ六甲の水、冬場の朝と日中の寒暖差が揃っています。

特に重要なのが最後の寒暖差。いちごは露地栽培だと5月頃が収穫期です。それをビニールハウスの力で、12月から6月までを収穫期に。なんと、5-6回も花が咲き、そのたびに実をつけるのです。

これには寒暖差を使っています。朝方は冷たい空気なのに昼間はポカポカ。そう感じるとイチゴは実をつけます。

有野では半年以上、朝方のビニールハウス内は0度近くまで下がり、日中に20度近くになるのです。

すると、寒い時期でもいちごが「もうすぐ初夏だ」と思って実をつけます。この勘違いを利用して、年1回しか収穫できないはずのイチゴを何度も収穫するので、いちご農家は「詐欺師」と呼ばれることも…

赤と白が織りなすアート

そんな二郎いちごに魅了された私。圧倒的な水分量の多さと甘さ、そして大きさに惹かれました!

下手すると私のスマホの横幅の長さがあります。(私はこんなに大きいイチゴは食べたことがありません)。

そして、ズバッと切ってみると、外側はきれいな赤色で果心部分は白色。もはやアートです。

普通は食べないヘタの部分を取って一口。イチゴの甘い香りとやさしい味が口の中に広がりました。

北区有野町のいちごの各農園では、まさに今いちご狩りの季節。くわしくはこちらをご覧ください。

<この記事を書いた人>
aioi /北神区役所地域協働課
自称フォトグラファー。今回の記事に掲載している写真も全て自分で撮影した。プライベートでは甥っ子をモデルに写真の腕を磨いている。
結婚するまでは、ボーナスのたびに新しいレンズを買ってしまうという、カメラ好きが陥る「レンズ沼」にハマっていたようだが、最近は自制心も働いてきた模様。

<関連記事>