見出し画像

神戸市長と明石市長がともに登壇!自然の多様性を守る方策を議論

きょう垂水駅前にあるレバンテホールで「生物多様性フォーラム」が開かれ、約170人が参加しました。

メインの討論会では、久元喜造市長が進行役を務め、壇上に上がったのは、
・玉一アクアリウム 小田隆司さん
・生物多様性あかし戦略推進会議 碓井信久さん
・神戸大学大学院教授 丑丸敦史さん
の3人に加えて、なんと、明石市の丸谷聡子市長でした。

というのも、このイベントは神戸市と明石市の共催なのです。そこで、その様子をかいつまんで、お伝えします。


生物多様性って生態系と違うの?

まず、フォーラムの名前にある「生物多様性」って一体なに?

と思い、環境省のサイトを見ると、「生きものたちの豊かな個性とつながりのこと」と書いてあります。

さらに「生きもの」というと、哺乳類とか昆虫のような動物のことかと思いましたが、じつは植物や微生物も含んでいます。

であれば「生態系」と何が違うのかと調べると、じつは生態系は「六甲山地の生態系」というように、エリアを限定する考え方のようです。

ということは、ざっくりいうと、エリアごとのさまざまな「生態系」をいくつも、究極は地球レベルで合算したものを「生物多様性」と呼んでいるのだと理解しました。

いまこの「生物多様性」の保全が求められています。

神戸と明石の切っても切れない関係

口火を切ったのは明石市の丸谷市長でした。神戸市兵庫区里山町で生まれたという彼女から

「28年間お世話になった神戸市と明石市が仲良くしたい。明石市の市境のほとんどが神戸市と接していて、生きものに市と市の境目は関係ない。そこで昨年、神戸市との連携協定を結びたいと思った」

いきなりストレートな思いを聞かせてもらったように感じました。

討論会のまえに、生物多様性あかし戦略推進会議 碓井信久さんがオニバスという、直径2メートル以上の葉をつける水生植物が明石市のため池で見つかっていると講演しました。

ところが、このオニバスが原生していたのは、神戸市西区神出町の3つのため池だったそうです。明治期にこのあたりを灌漑するためにつくられた淡河・山田疎水によって、種子が下流の明石にまで運ばれました。

丸谷市長の言うように、市の境目の存在はオニバスに無関係です。

アメリカザリガニやナマズは美味?

進行役の久元市長は、玉一アクアリウムの小田隆司さんの発表に着目しました。玉一アクアリウムとは、玉津第一小学校の児童らによる明石川の水棲生物の保全活動のこと。

明石川に住んでいる魚などの図鑑をつくったり、外来種の捕獲や駆除をしています。

特に、捕獲した外来種を児童らが食べたという点は、久元市長だけでなく会場の誰もが驚きました。しかも子どもたちにその感想を聞くと、

ー アメリカナマズ、アカミミガメの腕の部分、アメリカザリガニの手を食べた。日常に食べているのに近いのはアメリカナマズ。白身でおいしかった… 

ー アメリカザリガニは普通のエビと同じだった。駆除もできておいしくてすごいと思った…

ー 水生植物のキクイモは見た目はゴボウみたいだけど、お菓子だった…

と小学生たちが順番に答えていくと、会場からスゴイと拍手が湧きました!

これを聞いた丸谷市長は、「じつはアカミミガメはもともとの生息地のミシシッピ川では絶滅の危機に瀕している。なので、廃棄するのではなく、命として頂く、私たちの身体に生まれかわるのはとても大事」と、コメントしました。

かいぼりと海の貧栄養化

丸谷市長が、「かいぼり」と呼ばれる、冬の間にため池の水を抜いて底にたまった泥を取り除いてひび割れや水漏れの有無を点検する作業をすると、ため池にたまった栄養を海に流す効果があると説明しました。

ですが、かいぼりは昔に比べて、減少しているようです。

続いて久元市長は、海の貧栄養化が問題になっている。かいぼりが無くなったり、河川をせき止めたりするので、海に養分が流れない。その結果、海苔がうまく育たない点をあげて、神戸大学大学院教授の丑丸敦史さんに、どう考えればいいのかを聞きました。

「良かれと思ってやったのが、マイナスになったということ。我々に科学的根拠がないままやってきたのがその理由。例えば、河川で砂防工事をすると海では砂浜が小さくなってしまう」

固有種のコイも食べたほうが良い?!

なかなか難しい問題です。とはいえ、明石川の氾濫を防ぐ防災工事はやらなければなりません。

久元市長は、玉一アクアリウムの小田さんに、人の手が入るのは、どのような意味があるのかを聞きました。

「小学生が川に入って活動すると、一時的に濁るが、時間がたつと川砂が現れて逆にきれいになる。そのあと、オイカワという固有の小さな魚が、集団で産卵しているのを見たときに驚いた」

小田さんはさらに続けます。

「昔は人が近づかない手つかずのほうが、生態系は守られると考えていたが、そうではない。日本では人がかかわるほど川は豊かになる。明石川はコイが多い。昔から川の守り神ともいわれていたが、それでも人は食べていた。コイを人が捕ることで、小さな魚が増えて、生きた川になるのではないか」

そこで、かいぼりのときのコイの写真をみた久元市長が、ここまで大きくなると食べられるんですか?と聞くと、小田さんは「おいしいです。特に卵が」と答えます。

さっきの玉津第一小学校の児童の一人が、食べたことがあると手をあげます。

ー コイの卵を煮つけにした。甘くて…なんて例えればいいのか、おいしかった…

生物多様性とは、「生きものたちの豊かな個性とつながりのこと」でした。どうやらこの中に、私たち人間も含まれているのです。神戸や明石のように、すでにたくさんの人が住んでいるところでは、人がいなくなると、逆におかしくなってしまう。そんなことを学べた一日でした!

<この記事を書いた人>
多名部 重則/広報戦略部長兼広報官、Forbes JAPAN Official Columnist
1997年に神戸市採用。結婚するまで27年間、神戸市西区神出町に住んでいた。なので、小学生時代にため池にはまったり、雄岡山(おっこうさん)で遭難しかけたりして、人生が積んだと思ったコトも何度か。なので、淡河・山田疎水のことはけっこう詳しい。もちろん「かいぼり」の経験もあり、そのときに飲んだコイの血はトラウマになっているとか。博士(情報学)。

多名部 重則 Forbes JAPAN 執筆記事

<関連記事>

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!