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【森山未來×神戸市長】三宮が変わるって、じっさいどぉなん?

10月1日に東遊園地で開催された、KOBE AUTUMN FESTIVAL(神戸オータムフェスティバル)。

その中で、
●神戸出身のダンサー・俳優の森山未來さん
●三宮再整備に携わるランドスケープデザイナーの長濱伸貴さん
●久元喜造市長
のトークイベントがおこなわれました。

森山さんを生で見るのは初めて!とウキウキしながら東遊園地に向かったわたくし、広報戦略部のゴウです。

どんな話が飛び出したんでしょうか……? ダイジェストですが、かなり粒度高く再現してみました。


再整備とアート、どんな関係が?

――都心・三宮再整備でめざす姿について教えてください。

久元 すでに阪急三宮ビルやサンキタ広場が完成し、これからバスターミナルなどの整備を進め、2027年ごろから大きくまちの姿が変わってきます。

でも、単にまちがきれいになって高いビルが建ち、便利になるだけではつまらない。

防災上、仕方ないものもありますが、昭和レトロな「古き良き神戸」の雰囲気をできるだけ残しながら、「新しい神戸」と融合するようなまちづくりを進めていきます。

長濱 今回の再整備は、「歩いて楽しいまち」にすることを目指しています。

なぜ歩くのがいいのかというと、まず健康になるから。もう一つは、お店が儲かります。車で移動すると何も買わずに目的地に到着しますが、歩くと途中でコーヒーを買ったりしますよね。

現在の三宮周辺は、車のための空間が43%。家でいえば約半分がガレージということです。一方で、歩道や公園など人のための空間は12%。

車のための空間を人のための空間に変え、その質も上げていこうというのが、大きなテーマです。

森山 僕は高校卒業後に上京しましたが、数年前から効率性を重視する東京とは違う場所でのクリエーションに興味をもち、改めて神戸をもう一度眺め、観察しました。

そこで感じたのは、「神戸は風の街だ」ということです。

地理的にも六甲おろしなどの陸海風が吹き、東西の人の流れがある。歴史的には明治以降、世界中からさまざまな文化が流入してきた。この流動性が、僕の活動の仕方に合うなと思ったんです。

森山未來さん

今は、北野エリアの外国人向けに建てられたアパートの2フロアを利用して「アーティスト・イン・レジデンスKOBE(AiRK)」を立ち上げ、運営に携わっています。

アーティストは、インスピレーションやアイデアを得るために世界中を移動します。外から来た人にとって、知らない場所はどこだって新鮮でインスピレーションに満ちています。それを感じられる場所を神戸で提供できればいいなと。

――都市やまちづくりとアートの関係について、どうお考えですか?

森山 アートという言葉は、人によって多様なイメージがあるかと思います。たとえば六甲ミーツ・アートだと、六甲山という場所でアーティストによって制作された作品を鑑賞するという、物理的なおもしろさがあります。

一方で「アートは問題を発見する。デザインは問題を解決する」という考え方もあって。

「こうしたらいいね」を形にするのはデザインの役割ですが、その手前の「これが問題なんじゃない?」「これはおもしろいね」を発見するのは、アートの力だと思うんです。

こう考えると、まちづくりとも大きく関係しますよね。

作品という物理的なものだけでなく、コミュニケーションやコミュニティを考えるのもアートの可能性だと踏まえて、アーティスト・イン・レジデンスをやっています。

長濱 今の話は、すごく大事ですね。神戸は港町で海外からいろんなものが入ってきた。そういう意味で「モノのまち」なんですね。それが時代を経て、人が主役のまちに変わろうとしている。

長濱伸貴さん(右)

今みなさんは、新しくなった東遊園地の芝生に座っていますが、それができるのはハード整備をしたから。ハードとソフトが両輪であることが大切なんです。

今まではこういう場所ができても「どう使ったらいいかわからない」「こんなことをしたら怒られるかな」でしたが、これからは「こんなことが好き」と思うことをやってみる。それが、次のアートのあり方だと思います。

そこで出たアイデアを、森山さんが言ったようにデザインの力で解決していく。そんな循環ができると、新しい神戸ができていくんじゃないでしょうか。だからアートって、決してみなさんに遠い話じゃないんです。

――これを聞いて、久元市長いかがですか?

久元 その意味で考えると、神戸は、アーティストから発見されるまちでありたいと思いますね。

さっき森山さんが「神戸は風の街」と言ってくれましたが、同じ風でも高層マンションが林立して、ビル風が吹くようなまちに来たいと思うでしょうか。

1回来て「ああ、わかった。もうええわ」ではなくて、何度来ても新しい発見がある、汲みつくせない魅力があると思ってもらえるように、ハードとソフトの両面を大切にしていきたい。

そのとき、大きな魅力になり得るのが自然だと思う。六甲山や摩耶山、里山や茅葺き民家、そして豊かな海など。

守るものは守り、新しく作るものは作る、というのが大事だと思います。

――最後に、再整備への期待と展望をお聞かせください。

森山 僕は、何かをするときには「人・モノ・こと・場所」という感覚が自分の中にあって。場所は、ただ場所をつくれば成立するのではなく、人が場所をつくると思うんですね。

誰と出会って、どういう経験をするか。それによって、出会いが場所になっていく。

この「場所は人である」という発想が重要で。三宮が再整備されるなかで、その中身――どんな現象や出会いの場を創出していくかを、神戸の人と、外から来た人がコミュニケーションしながら場所ができていくといいなと思っています。

長濱 神戸の人はすごく神戸愛が強い。それを信じるしかないと思っています。東遊園地のような「場所」で、神戸の人が伸び伸びと好きなことをやるのが「神戸らしさ」なんじゃないでしょうか。

世界中、どのまちも均一的になるなかで、どうローカルの魅力をつくるか。それができるかどうかが、魅力的な神戸になるかどうかの分かれ道だと思います。

久元 「神戸に来たら、おもしろい人たちが、おもしろいことをやっている」という雰囲気になれば、市民のみなさんも楽しいし、行政のわれわれも「もっとみなさんと一緒にやっていこう!」と活気づいていい循環が生まれる。

神戸が「BE KOBE(神戸は人の中にある)」という言葉を、今よりもっと体現したまちになれるのではと楽しみにしています。

===トークここまで===

いかがでしたか?

はじめは「森山未來さんを生で見たい♪」というミーハー心が強かったのですが、ランドスケープデザイナーの長濱さんが登壇したことで、話の内容も厚くなり、聞く側の理解もいっそう深まったように思います。

今までも、再整備のウェブサイトや資料で「回遊性を高める」などのフレーズは何度も目にしていたのですが、

実際に再整備に関わっている(役所関係者以外の)人の言葉を聞いたことで、「そういう意図なんだ!」と再整備に血が通ったように感じました。

学生や若者がたくさん

もちろん、フェスティバルは他にも企画がいっぱい。若い人たちが大活躍していました。

こちらは、松蔭女子学院大学によるファッションショー。青を基調とした「神戸タータン」と、大学オリジナルのサーモンピンク基調の「松蔭タータン」の生地を使った衣装を披露しました。

ヘアメイクも、神戸の美容学校の学生によるもの

以前にこのnoteで紹介した「BE KOBEミライPROJECT」のみなさんも、フード支援などのブースを出していましたよ。

神戸をつくるのは誰?

それに、このフェスティバル自体が、神戸青年会議所(JCI神戸)を中心に運営されているものなんです。青年会議所といえば、40歳未満の経営者の集まりですよね。

理事の山崎晃平さんは「ステージにプロを呼ぶこともできますが、学生さんたち若い人が参加するほうが、周りも含めて『自分が参加している』という意識を持ってもらえると思って」と話してくれました。

みなさん、自社の経営をしながらこんな大きなイベントをつくっていることを思うと、冒頭の再整備トークで聞いた内容と相まって「神戸をつくるのは〈誰か〉じゃなくて、〈私〉なんだ」という気持ちが強くなりました。

ルミナリエの「ロソーネ」が一つだけ、会場を見下ろしていました

〈この記事を書いた人〉
ゴウ/広報戦略部 クリエイティブディレクター
神戸市在住のフリーライター。ソーシャル経済メディアNewsPicksや、京阪神エルマガジン社のメディアで活動。神戸市の施策を書いた記事が「わかりやすい」とnoteプロジェクトに召喚され、週1日だけ市役所の「中の人」に。役所ならではの用語や作法に「それ何?」とつっこみながら、どうやって役所のお堅い印象を和らげるか、日々頭をひねっている。
旅とバーとパンダが好き。

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