緑に囲まれるとやっぱり心地よい! 仕事や買い物にリアルな効き目
昨日、阪急神戸三宮駅の駅ビル15階で「バイオフィリックデザイン」をテーマに公開討論会が開かれました。
まず、その「バイオフィリックデザイン」って、一体なにモノでしょうか?
どうやら、「建築物のなかに緑を増やすと人は居心地が良くなる」という意味らしいです。そこで職場で、建築を専攻していた職員に聞いてきました。採用からまだ4年目なので、カタカナことばにも強そうです。
「知りません…」
でも、彼はすぐにスマホでググると、
「あー、最近はこんな言い方をするのですね」
ということは、昔からあった考えた方のようです。でも、新しい言い方があるということは、何か新しいスパイスが加えられているような気がします。
そこで、今回の討論会をレポートします!
バイオフィリックデザインとは?
「緑に囲まれた屋外でおにぎりを食べるとおいしいですよね」
と、口火を切ったのは日建設計の小松良朗さんです。
そもそも、バイオフィリックは、英語だとbiophilic。「生命」を意味するギリシア語の「Bio」と「愛情」を意味する「Philia」に由来しています。
ちょっと難しい説明ですが、人工の建物にいる人が自然とのつながりを感じられるようにするための設計や手法のことをいうようです。
ただ、分かりやすくいうと、これ!
JR熊本駅ビルです。見てのとおり、このビルに入ると緑に囲まれます。何より驚くのは、ここに来た人の滞在時間は緑がないときと比べて、1.4倍になっているそうです。
このビルは商業施設。きっと、居心地よくなって、買い物やカフェをゆっくりと楽しんで、長居してしまうのだと思いました。
神戸市の公共建築に導入できる?
この討論会の進行役を務めるのは、久元喜造市長。
久元市長は、神戸市の公共建築物にこの考え方を取り入れたいのでしょうか。
登壇していた建築住宅局部長の小林賢一さんに、「公共建築に取り込めそうですか?」とド直球な質問をします。
小林さんは、新長田にある兵庫県との合同庁舎や新しい中央区役所に、緑の空間を取り込んだと説明していました。ですが、熊本の事例に較べると、緑の割合は小さいです。
「やはり、枯らしてしまったらどうしようと感じるので」
と答えました。すると、久元市長は、
「そんな責任を追及する人は、市役所にはいないでしょう」
とすかさず突っ込みます。
小林さんは自分のオフィスには、小さな鉢植えがあり、枯れないように責任感を感じて、いつも水やりをしていると釈明します。
「責任を追及されると思うのでなく、自分で責任感を感じてしまうのです」
という、小林さんの説明に、逆に会場の聴衆は同情しているようでした。
やっぱりコストは高くなる
久元市長は続けます。この数年間、神戸市では公共施設に「木材を使おう、緑を取り入れよう」という方針でやってきました。が、気になるのはコストですね。費用対効果はあるのでしょうかと、参加者に聞きました。
一級建築士でYURI DESIGN代表の前田由利さんは、自宅の屋上を緑化しています。ススキ、コスモスから雑草まで。虫や鳥が運んできた種子が発芽して、自然の野原のようになっていると説明しました。
「たしかに普通の屋根と比べると、施工時に2-3倍に費用がかかる。だが、屋根をビニルクロスで覆うのは、環境負荷が大きい。将来につけを残すだけだ」
と答えました。
日建設計の小松さんも、
「正直に言うと、植物が育つように人工の照明をつけて、自動での水やり装置をつけるのでコストは上がる。自然光が入る明るい場所に植栽を植えたり、水やりに雨水を使ったり工夫はできるが」
と言います。
緑のリアルな効果は?
であれば、費用をかけたときに、どんな効果が上がるのかが気になります。
久元市長は、落ち着いた雰囲気が生まれて、意外性と非日常を感じられるのではと指摘。
今後どのような展開の可能性があるのかを聞きました。
すると日建設計の小松さんが、緑が見える病院のほうが患者が治りやすい、オフィスでは創造性を生み、ストレスが緩和される。それを数値で評価する。見えにくかった効果を可視化していけばよい。
例えば、仕事場だと生産性が6%、創造性が15%上がるというデータがある。であれば、コストをかけるべきとわかるはずと答えました。
漫然と緑を増やしましょうではなく、こういうデータの根拠があるのが、バイオフィリックデザインの本質と思いました!
小松さんの説明を聞いた久元市長は、建築住宅局の小林さんに、
「それで、うちの財政当局を説得できますか?」
と言うと会場から、ざっと笑いがこぼれました。
久元市長が示した思いは明確です!
なので、これから神戸市がつくる公共建築物には、この「バイオフィリックデザイン」の考え方が、少なからず盛り込まれていくのだと感じました。
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